司法書士の過去問
令和5年度
午前の部 問22
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問題
令和5年度 司法書士試験 午前の部 問22 (訂正依頼・報告はこちら)
相続の限定承認に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものの組合せはどれか。
ア 限定承認者は、受遺者に弁済をした後でなければ、相続債権者に弁済をすることができない。
イ 民法第927条第1項の期間内に同項の申出をしなかった相続債権者及び受遺者で限定承認者に知れなかったものは、相続財産について特別担保を有する場合を除き、残余財産についてのみその権利を行使することができる。
ウ 限定承認をした相続人が数人ある場合には、家庭裁判所は、相続人の中から、相続財産の清算人を選任しなければならない。
エ 民法第927条第1項の期間が満了した後は、限定承認者は、弁済期に至らない債権であっても、相続財産をもって、その期間内に同項の申出をした相続債権者その他知れている相続債権者に、それぞれその債権額の割合に応じて弁済をしなければならない。
オ 限定承認をした共同相続人の一人が相続財産を処分したときは、相続債権者は、相続財産をもって弁済を受けることができなかった債権額について、共同相続人の全員に対し、その相続分に応じて権利を行使することができる。
(参考)
民法
第927条 限定承認者は、限定承認をした後5日以内に、すべての相続債権者(相続財産に属する債務の債権者をいう。以下同じ。)及び受遺者に対し、限定承認をしたこと及び一定の期間内にその請求の申出をすべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、2箇月を下ることができない。
2~4 (略)
ア 限定承認者は、受遺者に弁済をした後でなければ、相続債権者に弁済をすることができない。
イ 民法第927条第1項の期間内に同項の申出をしなかった相続債権者及び受遺者で限定承認者に知れなかったものは、相続財産について特別担保を有する場合を除き、残余財産についてのみその権利を行使することができる。
ウ 限定承認をした相続人が数人ある場合には、家庭裁判所は、相続人の中から、相続財産の清算人を選任しなければならない。
エ 民法第927条第1項の期間が満了した後は、限定承認者は、弁済期に至らない債権であっても、相続財産をもって、その期間内に同項の申出をした相続債権者その他知れている相続債権者に、それぞれその債権額の割合に応じて弁済をしなければならない。
オ 限定承認をした共同相続人の一人が相続財産を処分したときは、相続債権者は、相続財産をもって弁済を受けることができなかった債権額について、共同相続人の全員に対し、その相続分に応じて権利を行使することができる。
(参考)
民法
第927条 限定承認者は、限定承認をした後5日以内に、すべての相続債権者(相続財産に属する債務の債権者をいう。以下同じ。)及び受遺者に対し、限定承認をしたこと及び一定の期間内にその請求の申出をすべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、2箇月を下ることができない。
2~4 (略)
- アウ
- アオ
- イエ
- イオ
- ウエ
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この過去問の解説 (2件)
01
民法(相続の限定承認)の問題です。条文の正確な知識が問われています。
(ア)民法931条は「限定承認者は、前2条の規定に従って、各相続債権者に弁済した後でなければ、受遺者に弁済することができない」と規定しています。従って、本肢は誤りです。なお、なぜ、相続債権者が受遺者に優先するかというと、相続債権者は、生前に被相続人に対して債権を取得した者で、他方、受遺者は、被相続人の行為で財産を取得したものなので、相続債権者の方が優先度が高くなります。
(イ)民法935条は「民法927条第1項の期間内に同項の申出をしなかった相続債権者及び受遺者で、限定承認者に知れなかった者については、残余財産についてのみ、その権利を行使することができる。ただし、特別の担保を提供した場合は、この限りではない」と規定しています。本肢は、この条文ほぼそのものですので、正しいです。
(ウ)民法936条第1項は「相続人が数人ある場合は、家庭裁判所は、相続人の中から、相続財産の管理人を選任しなければならない」と規定しています。本肢は、条文そのものなので、正しいです。
(エ)民法929条本文は「第927条第1項の期間が満了した場合には、限定承認者は、相続財産をもって、その期間内に同項の申し出をした相続債権者その他知れている相続債権者に、それぞれの債権額の割合に応じた弁済をしなければならない。」と規定し、同930条は「限定承認者は、弁済期に至らない場合であっても、前条(第929条)の規定に従って弁済をしなければならない」と規定しています。従って、本肢は正しいです。
(オ)民法937条は「限定承認をした相続人の1人又は数人について、第921条第1号又は第3号のに掲げる事由(相続財産を処分することは第1号に該当します)があるときは、相続債権者は、相続財産をもって弁済を受けることができなかった債権額について、当該共同相続人に対して、その相続分に応じて、権利を行使することができる」と規定しています。本肢は、共同相続人全員に対して、権利を行使することができるとしているため、誤りです。
本問題は、限定承認に関する問題としては、やや細かいことろからの出題なので、難しかったと思います。判例からの出題はなかっけれども、出題される条文が判例並みに細かいと、難問になります。
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02
相続の限定承認の論点です。限定承認は債権者の権利を一定レベル抑えて、相続人を保護する規定です。そのため、相続人にはどのような要件が要求されるのか、債権者にはどの程度の権利が制限されるのか、そのバランス感覚を条文から読み取って、整理しておく必要があります。
ア 931条により、”限定承認者は、前2条の規定に従って、各相続債権者に弁済した後でなければ、受遺者に弁済することができない”とあるので、本肢は不正解となります。遺贈はあくまで、受贈者が死亡して、初めて権利が発生するのに対して、債務は生前に既に発生しており、それを相続人が承継することになるため、遺贈よりも優先されるべきものだからです。よって、プラスの財産としては、債権者、受遺者の後、残ったものを相続人が承継する順番となります。
イ 935条により”民法927条第1項の期間内に同項の申出をしなかった相続債権者及び受遺者で、限定承認者に知れなかった者については、残余財産についてのみ、その権利を行使することができる。ただし、特別の担保を提供した場合は、この限りではない”とあるので、本肢は正解となります。
ウ 936条1項により、”相続人が数人ある場合は、家庭裁判所は、相続人の中から、相続財産の管理人を選任しなければならない”とあるので、本肢は、正解となります。
エ 930条により、”限定承認者は、弁済期に至らない場合であっても、前条(広告期間満了後の弁済について規定した929条)の規定に従って弁済をしなければならない”とあるため、本肢は正解となります。限定承認は過大な債務の負担から相続人を保護するための制度であるため、その分、債権者には、一定の配慮を持たせることと、手続の煩雑さを避けるため、広告期間満了時には、弁済期に至らない債権であっても、清算の対象とし、全ての清算を完了させることにしたと考えられます。
オ 937条により、”限定承認をした相続人の1人又は数人について、第921条第1号又は第3号のに掲げる事由があるときは、相続債権者は、相続財産をもって弁済を受けることができなかった債権額について、当該共同相続人に対して、その相続分に応じて、権利を行使することができる”とあるため、本肢の、”共同相続人全員に対して”とするのは、不正解となります。
回答 2
解法のポイント
限定承認をした相続人と債権者、受遺者との関係は、肢アの通りです。相続人はプラスの財産を承継する存在というイメージが強いのですが、法律上は、あくまで、被相続人の延長と考えます。被相続人が生前、負った債務は期限が来れば返すのが当然ですし、受遺者も、被相続人が遺贈するとしたことなので、債権者と同様の扱い(ただし権利発生が相続開始した時なのが債権者との違い)です。先に全ての約束を果たしてから、初めて相続人に財産は移転します。
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