司法書士の過去問
令和5年度
午前の部 問24

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問題

令和5年度 司法書士試験 午前の部 問24 (訂正依頼・報告はこちら)

刑法の適用範囲に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものの組合せはどれか。

ア  貿易商を営む外国人Aは、外国人Bから日本での絵画の買付けを依頼され、その代金として日本国内の銀行に開設したAの銀行口座に振り込まれた金銭を、日本国内において、業務のため預かり保管中、これを払い出して、日本人Cに対する自己の借金の返済に費消した。この場合、Aには、我が国の刑法が適用され、業務上横領罪が成立する。
イ  外国人Aは、外国のホテルの客室内において、観光客である日本人Bに対し、けん銃を突きつけて脅した上で持っていたロープでBを緊縛し、反抗を抑圧されたBから現金等在中の財布を強奪した。この場合、Aには、我が国の刑法の適用はなく、強盗罪は成立しない。
ウ  外国人Aは、日本国内で使用する目的で、外国において、外国で発行され日本国内で流通する有価証券を偽造した。この場合、Aには、我が国の刑法が適用され、有価証券偽造罪が成立する。
エ  日本人Aは、外国において、現に外国人Bが住居として使用する木造家屋に放火して、これを全焼させた。この場合、Aには、我が国の刑法の適用はなく、現住建造物等放火罪は成立しない。
オ  外国人Aは、外国において、日本人Bに対し、外国人C名義の保証書を偽造してこれを行使し、借用名下にBから現金をだまし取った。この場合、Aには、我が国の刑法の適用はなく、私文書偽造・同行使・詐欺罪は成立しない。
  • アウ
  • アオ
  • イエ
  • イオ
  • ウエ

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この過去問の解説 (2件)

01

刑法(刑法の適用範囲)の問題です。事例問題なので、事例を正確にとらえた上で回答しないと、間違ってしまいます。

選択肢3. イエ

(ア)犯人の国籍及び犯罪の種類を問わず、日本国内において罪を犯したすべての者に、我が国の刑法が適用されます(属地主義)。外国人Aは、日本国内で業務上横領罪を犯していますので、我が国の刑法が適用されるため、本肢は正しいです。

(イ)日本国外において、日本人に対して、殺人、強盗などの生命身体に対する一定の重要な罪を犯した日本国民以外の者に、我が国の刑法が適用されます(消極的属人主義)。従って、外国人Aは、日本国外で、日本人に対して強盗罪を犯していますので、我が国の刑法が適用されます。従って、本肢は誤りです。

(ウ)日本国外で、日本国の国家的法益又は重要な社会的法益を害する一定の罪を犯した者については、我が国の刑法が適用されます(保護主義)。有価証券偽造罪は、日本国の国家的法益又は重要な社会的法益を害する一定の罪に該当し、外国人Aは、外国においてこの罪を犯しているので、我が国の刑法が適用されます。従って、本肢は正しいです。

(エ)犯人が日本人である限り、犯罪地の如何をとわず、社会的法益に関する犯罪又は重要な個人的法益に関する罪を犯した者には、我が国の刑法が適用されます(属人主義)。従って、日本人Aが、外国で現住建造物放火罪を犯した場合は、我が国の刑法が適用されるので、本肢は誤りです。

(オ)日本国外において、日本人に対して、殺人、強盗などの生命身体に対する一定の重要な罪を犯した日本国民以外の者に、我が国の刑法が適用されますが、私文書偽造、同行使、詐欺罪は、人、強盗などの生命身体に対する一定の重要な罪に該当しないため、日本国外において、日本人Bに対してそれらの罪を犯したAには、我が国の刑法は適用されません。従って、本肢は正しいです。

まとめ

この問題は、事例解読が大変で、時間がかかる問題です。ただし、司法書士試験の午前の部は比較的時間に余裕があるので、問題を解くのに時間がかかっても大丈夫です。

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02

刑法の適用範囲の問題です。刑法の適用範囲には属地主義、属人主義、保護主義、世界主義がありますが、刑法の適用範囲は原則が属地主義となります。殺人罪・傷害罪・放火罪・強姦罪・強盗罪などで、日本人が犯人である場合、外国で行った犯罪であっても適用されるのが積極的属人主義です。それに強制わいせつ罪を加えた、被害者が日本人であれば、日本の刑法が適用されるものが、消極的属人主義です。内乱罪・外患罪・通貨偽造罪など場所・当事者を問わず、日本の国や社会が害されるということで、日本の刑法が適用されるのが、保護主義です。また、世界共通の利益が害される、条約で規定された犯罪(ハイジャック犯など)であれば、世界主義として、日本の刑法が適用されます。

選択肢3. イエ

ア 犯罪が日本国内において実行されている場合、原則通り、属地主義が適用されます。本肢で、外国人Aは、日本国内で業務上横領罪を犯していますから、日本の刑法が適用されます。よって、本肢は正解となります。
 

イ 強盗罪は日本人が被害者である場合に外国で外国人が行った犯罪であっても、日本の刑法が適用される、属人主義の対象となります。本肢では、外国人Aが、日本国外で、日本人に対して強盗罪を犯しているので、日本の刑法が適用されることになります。よって、我が国の刑法は適用されないとする、本肢は不正解となります。
 

ウ 内乱罪・外患罪・通貨偽造罪など場所・当事者を問わず、日本の国や社会が害される罪を犯した場合は、日本の刑法が適用されます(保護主義)。本肢では、外国人Aは、外国において有価証券偽造罪を犯しているので、日本の刑法が適用されるため、本肢は正解となります。
 

エ 殺人罪・傷害罪・放火罪・強姦罪・強盗罪などは、日本人が犯人である場合に外国で行った犯罪であっても、日本の刑法が適用される属人主義に該当します。本肢では、日本人Aが、外国で現住建造物放火罪を犯した場合は、属人主義として、日本の刑法が適用されますから、本肢のAに”我が国の刑法の適用はなく”とする記述は不正解となります。
 

オ 本肢では、外国において犯罪が実行されているので、原則の属地主義が適用されません。さらに、外国人Aが日本人に対して犯罪を犯していますが、私文書偽造、同行使、詐欺罪は属人主義に該当する罪ではありません。よって、本肢の場合、日本の刑法の適用はありませんから、正解となります。
 

まとめ

解法のポイント

まず、原則が属地主義であることを理解して、日本以外の土地で犯罪が実行された場合にどの罪だと、日本の刑法が適用されるのか、整理して暗記しておく必要があります。属人主義に当たる罪を中心に暗記しておけば、あとは概ね、対処可能です。

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