司法書士の過去問
令和5年度
午前の部 問25

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問題

令和5年度 司法書士試験 午前の部 問25 (訂正依頼・報告はこちら)

刑法の共犯に関する次の記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものは、どれか。
  • 教唆犯を教唆した者には、教唆犯は成立しない。
  • 他人を唆して特定の犯罪を実行する決意を生じさせた場合には、唆された者が実際に当該犯罪の実行に着手しなくても、教唆犯が成立する。
  • 拘留又は科料のみに処すべき罪を教唆した者は、特別の規定がなくても、教唆犯として処罰される。
  • 不作為により正犯の実行行為を容易にさせた場合には、幇助犯は成立しない。
  • 幇助者と正犯との間に意思の連絡がなく、正犯が幇助者の行為を認識していない場合であっても、正犯の実行行為を容易にさせる行為をしたときは、幇助犯が成立する。

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この過去問の解説 (2件)

01

刑法(共犯)に関する問題です。問題文が短く、基本的な事項のみを問うていますので、比較的平易な問題です。司法書士試験では少数派の正誤問題となっています。

選択肢1. 教唆犯を教唆した者には、教唆犯は成立しない。

刑法60条は「人を教唆して犯罪を実行させた者は、すべて正犯とする」と規定し、同61条は「教唆者を教唆した者も、同様とする」と規定しています。よって、教唆者を教唆した者にも、教唆犯が成立するので、本肢は誤りです。

選択肢2. 他人を唆して特定の犯罪を実行する決意を生じさせた場合には、唆された者が実際に当該犯罪の実行に着手しなくても、教唆犯が成立する。

刑法60条は「人を教唆して犯罪を実行させた者は、すべて正犯とする」と規定しているので、教唆犯が成立するためには、教唆されたものが犯罪を実行する必要があります。よって、教唆された者が犯罪の実行に着手する前は、教唆犯は成立しないので、本肢は誤りです。

選択肢3. 拘留又は科料のみに処すべき罪を教唆した者は、特別の規定がなくても、教唆犯として処罰される。

刑法64条は「拘留又は科刑のみに処すべき罪の教唆者及び従犯は、特別の規定がなければ、罰しない」と規定しています。従って、特別の規定がなくても処罰されるとする本肢は誤りです。

選択肢4. 不作為により正犯の実行行為を容易にさせた場合には、幇助犯は成立しない。

大審院昭和3年3月9日判決では「法令又は習慣により法的作為義務がある者が、犯罪行為を防止することが可能であるのに、その義務を怠り、これを防止せずに見逃した(不作為)によって犯罪行為を容易にしたといえる場合、作為による幇助犯と同視できることから、不作為による幇助犯が成立する」と判断しています。従って、不作為による幇助犯は成立しないとする本肢は誤りです。

選択肢5. 幇助者と正犯との間に意思の連絡がなく、正犯が幇助者の行為を認識していない場合であっても、正犯の実行行為を容易にさせる行為をしたときは、幇助犯が成立する。

大審院大正14年1月22日判決では「幇助犯が成立するためには、正犯が幇助することが必要であるところ、幇助犯が罰せらるのは、幇助者が正犯の実行行為を通して間接的に他人の法益を侵害する点にあることから、幇助の故意は、正犯の実行行為を認識してこれを幇助する意思があれば足り、幇助者と正犯者との間に犯罪についての相互的な意思の連絡は必ずしも必要でない」と判断しています。従って、本肢は正しいです。

まとめ

正誤問題は、組み合わせ問題よりも、全部の枝の正誤を正確に判断できないと正解できないので、その点で難しくなりますが、その分、各枝の内容が平易になる傾向があります。

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02

刑法総論から、共犯に関する論点です。出題頻度も比較的高く、論点の多い分野です。

選択肢1. 教唆犯を教唆した者には、教唆犯は成立しない。

61条で”教唆者を教唆した者も、同様とする”とあるため、教唆者を教唆した者にも、教唆犯が成立します。よって、本肢は不正解となります。

選択肢2. 他人を唆して特定の犯罪を実行する決意を生じさせた場合には、唆された者が実際に当該犯罪の実行に着手しなくても、教唆犯が成立する。

60条により、”人を教唆して犯罪を実行させた者は、すべて正犯とする”と、明文で”実行させた者”と規定されていることから、教唆犯の既遂が成立するためには、あくまで、教唆された者が実際に犯罪を実行するまでが必要になります。よって、”教唆された者が実際に犯罪の実行に着手しなくても”とする、本肢は不正解となります。

選択肢3. 拘留又は科料のみに処すべき罪を教唆した者は、特別の規定がなくても、教唆犯として処罰される。

64条によれば”拘留又は科刑のみに処すべき罪の教唆者及び従犯は、特別の規定がなければ、罰しない”とあるため、”特別の規定がなくても処罰される”とする本肢は不正解となります。
 

選択肢4. 不作為により正犯の実行行為を容易にさせた場合には、幇助犯は成立しない。

不作為による幇助犯が成立するかどうかが論点の問題です。判例(大審院昭3.3.9)の見解では”不作為ニ因ル幇助犯ハ他人ノ犯罪行為ヲ認識シナカラ法律上ノ義務ニ違背シ自己ノ不作爲ニ因リテ其実行ヲ容易ナラシムルニヨリ成立する”とあり、不作為による幇助犯が成立するとしています。よって、本肢の不作為による幇助犯は成立しないとする記述は不正解となります。

選択肢5. 幇助者と正犯との間に意思の連絡がなく、正犯が幇助者の行為を認識していない場合であっても、正犯の実行行為を容易にさせる行為をしたときは、幇助犯が成立する。

片面的幇助犯の論点です。判例(大判大14.1.22)で、”Aの賭博開帳を幇助する意思で,Aの知らないところで,Bが賭博する人を誘引していた場合も,Bについて賭博開帳罪の(片面的)幇助犯が成立する”として、片面的幇助犯が成立することを認めています。そもそも、幇助犯の処罰根拠が、正犯の実行行為を容易にすることである以上、相互的な意思の連絡がなくとも、正犯の実行行為を容易にする意志と実行行為があれば、成立するからです。よって、本肢は正解となります。

まとめ

解法のポイント

刑法は3問しか、出題されない割に範囲が広いため、ピンポイントで学習していく必要があります。特に総論の共犯や錯誤、各論の頻出の罪に関する論点を重点的にしておくと良いでしょう。

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