司法書士の過去問
令和5年度
午前の部 問28
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問題
令和5年度 司法書士試験 午前の部 問28 (訂正依頼・報告はこちら)
株式会社の定款に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものの組合せはどれか。
ア 株式会社が、その発行する全部の株式ではなく、一部の株式についてのみ、その内容として譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要する旨の定款の定めを設けていない場合であっても、当該株式会社は、会社法上の公開会社である。
イ 会社法上の公開会社でない取締役会設置会社においては、取締役会の決議によるほか株主総会の決議によっても代表取締役を選定することができる旨の定款の定めは、有効である。
ウ 株式会社は、定款の変更を目的とする株主総会の決議について、総株主の議決権の3分の1以上を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数をもって行うことができる旨を定款で定めることができる。
エ 株式会社の資本金の額は、定款で定める必要はない。
オ 株式会社の債権者は、当該株式会社の定款の閲覧の請求をする場合には、当該請求の理由を明らかにしてしなければならない。
ア 株式会社が、その発行する全部の株式ではなく、一部の株式についてのみ、その内容として譲渡による当該株式の取得について当該株式会社の承認を要する旨の定款の定めを設けていない場合であっても、当該株式会社は、会社法上の公開会社である。
イ 会社法上の公開会社でない取締役会設置会社においては、取締役会の決議によるほか株主総会の決議によっても代表取締役を選定することができる旨の定款の定めは、有効である。
ウ 株式会社は、定款の変更を目的とする株主総会の決議について、総株主の議決権の3分の1以上を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の過半数をもって行うことができる旨を定款で定めることができる。
エ 株式会社の資本金の額は、定款で定める必要はない。
オ 株式会社の債権者は、当該株式会社の定款の閲覧の請求をする場合には、当該請求の理由を明らかにしてしなければならない。
- アウ
- アエ
- イエ
- イオ
- ウオ
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この過去問の解説 (2件)
01
会社法(株式会社の定款)に関する問題です。全体としては、平易な組み合わせ問題ということができます。
(ア)会社法2条第5号は「公開会社は、その発行する全部又は一部の株式の内容として、譲渡による当該株式会社の取得について、株式会社の承認を要する旨の定款の定めを設けていない株式会社をいう」と規定しています。従って、本肢は正しいです。
(イ)会社法295条第2項は「取締役会設置会社においては、株主総会は、この法律に規定する事項及び定款で定めた事項に限り、決議することができる」と規定していますが、取締役会設置会社でない株式会社では、株主総会の決議事項について、上記のような制限が設けられていないため、取締役会の決議のほか、株主総会の決議によっても代表取締役を定めることができる旨の定款の定めを有効に設けることができます(最高裁平成29年2月21日判決参照)。従って、本肢は正しいです。
(ウ)株式会社は、その成立後、株主総会の決議によって、定款を変更することができます(会社法466条)。この決議は、当該株主総会で議決権を行使することができる株主の議決権の過半数(3分の1以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を有する株主が出席し、出席した当該株主の議決権の3分の2(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の多数をもって行わなければなりません(会社法309条第2項第11号、特別決議)。本肢のような方法では、定款を変更することができないので、本肢は誤りです。
(エ)会社法27条は、株式会社の定款の記載事項として、①目的②商号③本店所在地④設立に際して出視される財産の価額又はその最低額、をあげています。その中に、資本金の金額は含まれていないので、本肢は正しいです。
(オ)会社法31条第2項本文は「発起人(株式会社の成立後にあっては、その株主及び債権者)は、発起人が定めた時間内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる」と規定し、条文上の「次に掲げる」を規定する各号(第2号)は「定款が書面をもって作成されているときは、その閲覧の請求」と規定しています。その際に、条文上、理由を明らかにすることが必要な旨を定まる規定は設けられていません。従って、本肢は誤りです。
(ア)(ウ)(エ)などは、過去問で繰り返し問われている論点なので、簡単に正誤が判定できたと思います。組み合わせ問題の場合、3枝が正確に判定できれば、正答を導くことができる問題が少なくないです。
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02
定款に関する論点です。定款は、法律の範囲内で、各会社で任意に設定出来る、会社内部のルールのことです。ただし、法律で明文がない場合に、法律の範囲内に該当するかどうか、問題になってくる場合があります。また、定款の絶対的記載事項は、登記事項と混同しがちです。登記事項は商業登記法の分野ですが、一緒に整理して憶えておく方が良いでしょう。
ア 2条第5号により、”公開会社は、その発行する全部又は一部の株式の内容として、譲渡による当該株式会社の取得について、株式会社の承認を要する旨の定款の定めを設けていない株式会社をいう”とあるため、一部でも公開していれば、公開会社になりますから、本肢は正解となります。
イ 判例(最平29.2.21)によれば、295条2項につき、株主総会の決議事項として定款で定めることができる事項について明文の規定を置かれていないことや、取締役設置会社である非公開会社において、定款で株主総会の決議によっても代表取締役を定めることができるとにしたとしても、取締役会の代表取締役の選定及び解職の権限(362条2項3号)が否定されるわけではないから、当該定款規定は有効と判示しています。
判例では述べられていませんが、取締役会の構成員である、取締役は株主総会でのみ、選任されるため、究極は代表取締役も、株主総会によって、間接的に選任されると、言えなくはありません。しかし、その場合であっても、明文にある、取締役会において代表取締役を選定するという権限を奪うことはできないため、取締役会でも引続き代表取締役を選定することができると解されています。よって、本肢は正解となります。
ウ 定款を変更するには、特別決議が必要です(309条2項11号)。特別決議は定足数は総議決権の3分の1以上であれば、定款で変更可能ですが、決議要件を出席した株主の議決権の3分の2未満にすることは出来ません(3分の2を超える変更は出来る)。厳格にする変更は出来ますが、緩めることは出来ないということです。よって、本肢は不正解となります。
エ 株式会社の定款の絶対的記載事項は、27条より、目的、商号、本店所在地、設立に際して出資される財産の価額又はその最低額となっているので、資本金は含まれていません。よって、資本金の金額は定める必要がないので、本肢は正解となります。
オ 31条2項本文および、2号により”株主及び債権者は、発起人が定めた時間内は、いつでも、定款が書面をもって作成されているときは、その閲覧の請求をすることができる”とあるだけで、閲覧の条件として、理由を明らかにすることが必要である旨は明文にありません。よって、本肢は不正解となります。
解法のポイント
イは公開会社である場合、判例は言及していません。あくまで、非公開会社の場合の見解であることに注意が必要です。
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