司法書士の過去問
令和5年度
午前の部 問30
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問題
令和5年度 司法書士試験 午前の部 問30 (訂正依頼・報告はこちら)
株主総会に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
ア 会社法上の公開会社でない株式会社において、総株主の議決権の100分の3以上の議決権を有する株主は、取締役に対し、株主総会の目的である事項であって当該株主が議決権を行使することができるもの及び招集の理由を示して、株主総会の招集を請求することができる。
イ 会社法上の公開会社において、総株主の議決権の100分の1以上の議決権又は300個以上の議決権を6か月前から引き続き有する株主は、株主総会の日の8週間前までに、取締役に対し、当該株主が議決権を行使することができる一定の事項を株主総会の目的とすることを請求することができる。
ウ 会社法上の公開会社において、総株主の議決権の100分の1以上の議決権及び300個以上の議決権のいずれも有しない株主は、株主総会において、株主総会の目的である事項であって当該株主が議決権を行使することができるものにつき議案を提出することができない。
エ 会社法上の公開会社において、総株主の議決権の100分の1以上の議決権及び300個以上の議決権のいずれも有しない株主は、株主総会の日の8週間前までに、取締役に対し、株主総会の目的である事項であって当該株主が議決権を行使することができるものにつき当該株主が提出しようとする議案のうち10を超えないものの要領を株主に通知することを請求することができる。
オ 会社法上の公開会社でない株式会社において、総株主の議決権の100分の1以上の議決権を有する株主は、これを6か月前から引き続き有する場合に限り、株主総会に係る招集の手続及び決議の方法を調査させるため、当該株主総会に先立ち、裁判所に対し、検査役の選任の申立てをすることができる。
ア 会社法上の公開会社でない株式会社において、総株主の議決権の100分の3以上の議決権を有する株主は、取締役に対し、株主総会の目的である事項であって当該株主が議決権を行使することができるもの及び招集の理由を示して、株主総会の招集を請求することができる。
イ 会社法上の公開会社において、総株主の議決権の100分の1以上の議決権又は300個以上の議決権を6か月前から引き続き有する株主は、株主総会の日の8週間前までに、取締役に対し、当該株主が議決権を行使することができる一定の事項を株主総会の目的とすることを請求することができる。
ウ 会社法上の公開会社において、総株主の議決権の100分の1以上の議決権及び300個以上の議決権のいずれも有しない株主は、株主総会において、株主総会の目的である事項であって当該株主が議決権を行使することができるものにつき議案を提出することができない。
エ 会社法上の公開会社において、総株主の議決権の100分の1以上の議決権及び300個以上の議決権のいずれも有しない株主は、株主総会の日の8週間前までに、取締役に対し、株主総会の目的である事項であって当該株主が議決権を行使することができるものにつき当該株主が提出しようとする議案のうち10を超えないものの要領を株主に通知することを請求することができる。
オ 会社法上の公開会社でない株式会社において、総株主の議決権の100分の1以上の議決権を有する株主は、これを6か月前から引き続き有する場合に限り、株主総会に係る招集の手続及び決議の方法を調査させるため、当該株主総会に先立ち、裁判所に対し、検査役の選任の申立てをすることができる。
- アイ
- アオ
- イウ
- ウエ
- エオ
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この過去問の解説 (2件)
01
会社法(少数株主権)の問題です。会社法の学習は、テキスト中心にするか、条文中心にするか迷います。会社法の条文は、非常に複雑なので、学習に骨が折れます。割り切ってテキスト中心で行くのもよいかもしれません。
(ア)会社法297条第1項は「総株主の議決権の100分の3(これを下回る割合を定款で定めた場合には、その割合)以上の議決権を6か月(これを下回る期間を定款で定めた場合は、その期間)前から引き続き有する株主は、取締役に対して、株主総会の目的である事項(当該株主が議決権を行使することができる事項に限る)及び召集の理由を示して、株主総会の招集を請求することができる」と規定し、同条第2項は、公開会社でない株式会社における前項の規定の適用については、「6か月(これを下回る期間を定款で定めた場合は、その期間)前から引き続き有する」とあるのは、「有する」とする」と規定しています。従って、本肢は正しいです。
(イ)会社法上の公開会社は、取締役会を設置しなくてはならないため、取締役会設置会社ですが、取締役会設置会社において、株主は、総株主の議決権の100分の1(これを下回る割合を定款で定めた場合には、その割合)以上の議決権又は300個(これを下回る数を定款で定めた場合には、その数)以上を6か月(定款で、これを下回る期間を定めた場合は、その期間)前から引き続き有する株主は、取締役に対して、株主総会の8週間(これを下回る期間を定款で定めた場合は、その期間)前までに、一定の事項(当該株主が議決権を行使することができる事項に限る)を株主総会の目的とすることを請求することができます(会社法303条2項)。従って、本肢は正しいです。
(ウ)会社法304条本文は「株主は、株主総会において、株主総会の目的である事項(当該株主が議決権を行使することができる事項に限る)につき、議案を提出することができる」と規定しています。この権利は、単独株主権として、公開会社、非公開会社の区別なく、保有する株式数や保有期間に制限はありません。従って、本肢は誤りです。
(エ)会社法上の公開会社は、取締役会を設置しなくてはならないため、取締役会設置会社ですが、取締役会設置会社において、株主は、総株主の議決権の100分の1(これを下回る割合を定款で定めた場合には、その割合)以上の議決権又は300個(これを下回る数を定款で定めた場合には、その数)以上を6か月(定款で、これを下回る期間を定めた場合は、その期間)前から引き続き有する株主に限り、取締役に対して、株主総会の8週間(これを下回る期間を定款で定めた場合は、その期間)前までに、株主総会の目的である事項につき、当該株主が提案しようとする議案の要領を株主総会の招集通知書に記載し、又は記録することを請求することができます(会社法305条第1項)。そして、当該株主が提案しようとする議案の数が10を超えるときは、10を超える数に相当することになる議案の数については、当該請求をすることはできません(同305条第4項)。従って、本肢は誤りです。
(オ)会社法306条第1項は「株式会社又は総株主(株主総会において決議することができる事項の全部について、議決権を行使することができない株主を除く)の議決権の100分の1(これを下回る割合を定款で定めた場合には、その割合)以上の議決権を有する株主は、株主総会に係る召集の手続き及び決議の方法を調査させるために、当該株主総会に先立ち、裁判所に対して、検査役の選任の申立てをすることができる」と規定しています。公開会社の場合は、6カ月(これを下回る期間を定款で定めた場合は、その期間)前から引き続き引き続き有することも、この権利を行使するための条件に加わりますが(同条第2項)、公開会社でない株式会社においては、保有期間の条件はありません。従って、本肢は誤りです。
少数株主権の問題は、公開会社と非公開会社による条件の違い、権利行使に必要な議決権や株式数等、少数株主権の種類など、覚えることが多くて大変ですが、結構頻繁に出題されるので、学習を疎かにすることはできません。
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02
少数株主権の論点です。少数株主権は既存株主保護のための制度です。何の制限も無ければ、理論上、1株でもライバル会社が所有すれば、株主総会を停滞させることが出来てしまいます。また1株だけ所有している者による権限行使するためだけに株主総会自体を開くなど、経費も膨大にかかってしまうことになります。そこで、所有株式数に応じて、行使できる権限を区分けしたものが少数株主権です。
ア 297条1項により、”総株主の議決権の100分の3(これを下回る割合を定款で定めた場合には、その割合)以上の議決権を6か月(これを下回る期間を定款で定めた場合は、その期間)前から引き続き有する株主は、取締役に対して、株主総会の目的である事項(当該株主が議決権を行使することができる事項に限る)及び召集の理由を示して、株主総会の招集を請求することができる”とし、さらに同条2項で、”公開会社でない株式会社における前項の規定の適用については、「6か月(これを下回る期間を定款で定めた場合は、その期間)前から引き続き有する」とあるのは、「有する」とする”としているため、本肢の公開会社でない株式会社は総株主の議決権の100分の3 で 株主総会の招集を請求することができるとする記述は正解となります。本肢の権限に関わらず、非公開会社は行使前、6カ月以上の保有期間の要件はありません。
イ 303条2項により、”会社法上の公開会社は、取締役会を設置しなくてはならないため、取締役会設置会社ですが、取締役会設置会社において、株主は、総株主の議決権の100分の1(これを下回る割合を定款で定めた場合には、その割合)以上の議決権又は300個(これを下回る数を定款で定めた場合には、その数)以上を6か月(定款で、これを下回る期間を定めた場合は、その期間)前から引き続き有する株主は、取締役に対して、株主総会の8週間(これを下回る期間を定款で定めた場合は、その期間)前までに、一定の事項(当該株主が議決権を行使することができる事項に限る)を株主総会の目的とすることを請求することができる”とあるので、本肢は正解となります。
ウ 304条により、”株主は、株主総会において、株主総会の目的である事項(当該株主が議決権を行使することができる事項に限る)につき、議案を提出することができる”とあり、公開会社、非公開会社、保有期限など無関係に1株でも持っていれば行使可能な単独株主権とされています。よって、本肢の総株主の議決権の100分の1以上の議決権又は300個以上の議決権のいずれも有しない株主は議案を提出できないとする記述は不正解となります。
エ 公開会社は、取締役会設置が強制ですから、305条1項により、”取締役会設置会社において、株主は、総株主の議決権の100分の1(これを下回る割合を定款で定めた場合には、その割合)以上の議決権又は300個(これを下回る数を定款で定めた場合には、その数)以上を6か月(定款で、これを下回る期間を定めた場合は、その期間)前から引き続き有する株主に限り、取締役に対して、株主総会の8週間(これを下回る期間を定款で定めた場合は、その期間)前までに、株主総会の目的である事項につき、当該株主が提案しようとする議案の要領を株主総会の招集通知書に記載し、又は記録することを請求することができる”があてはまります。本肢の場合、総株主の議決権の100分の1以上の議決権又は300個以上の議決権のいずれも有しない株主とあるので、305条4項の”当該株主が提案しようとする議案の数が10を超えるときは、10を超える数に相当することになる議案の数については、当該請求をすることはできない”とする要件が満たされていても、不正解となります。
オ 306条1項により、”株式会社又は総株主(株主総会において決議することができる事項の全部について、議決権を行使することができない株主を除く)の議決権の100分の1(これを下回る割合を定款で定めた場合には、その割合)以上の議決権を有する株主は、株主総会に係る召集の手続き及び決議の方法を調査させるために、当該株主総会に先立ち、裁判所に対して、検査役の選任の申立てをすることができる”とあり、行使要件は正しいと言えますが、 同条2項により、公開会社の場合のみ、6カ月(これを下回る期間を定款で定めた場合は、その期間)前から引き続き引き続き有することが要件に加わります。よって、公開会社でない株式会社においてと記述されている、本肢は不正解となります。
解法のポイント
少数株主権はどのようか権利行使に、どの程度の株式数が要求されるかを整理して憶えることになります。原則として、会社にとって、大きな変化をもたらすものほど、所有株式数が多くなります。例外として、取締役が違法行為をした場合など、1株でも保有していれば行使出来るようにしている、単独株主権などを先に憶える方が効率が良いでしょう。これらは、株式会社のガバナンス上、単独でも行使可能にしておかないと問題があるからです。
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