司法書士の過去問
令和5年度
午前の部 問31

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問題

令和5年度 司法書士試験 午前の部 問31 (訂正依頼・報告はこちら)

監査役会設置会社において株主総会、取締役会及び監査役会の議事録が書面で作成されている場合に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものの組合せはどれか。

ア  監査役会設置会社の債権者が当該監査役会設置会社の株主総会の議事録の閲覧又は謄写の請求をするには、裁判所の許可を得ることを要しない。
イ  監査役会設置会社の親会社社員が当該監査役会設置会社の株主総会の議事録の閲覧又は謄写の請求をするには、裁判所の許可を得ることを要する。
ウ  監査役会設置会社の債権者が当該監査役会設置会社の取締役会の議事録の閲覧又は謄写の請求をするには、裁判所の許可を得ることを要しない。
エ  監査役会設置会社の親会社社員が当該監査役会設置会社の取締役会の議事録の閲覧又は謄写の請求をするには、裁判所の許可を得ることを要する。
オ  監査役会設置会社の株主が当該監査役会設置会社の監査役会の議事録の閲覧又は謄写の請求をするには、裁判所の許可を得ることを要しない。
  • アウ
  • アエ
  • イエ
  • イオ
  • ウオ

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この過去問の解説 (2件)

01

会社法(監査役会設置会社の議事録の閲覧等)に関する問題です。どのようなケースで、議事録の閲覧等請求をする際に、裁判所の許可が必要になるかを覚えておかなくてはなりません。

選択肢5. ウオ

(ア)会社法318条第1項は「株主総会の議事については、法務省令で定めるところにより、議事録を作成しなければならない」と規定し、同条第4項は「株主及び債権者は、株式会社の営業時間内はいつでも、次に掲げる請求をすることができる」と規定し、条文上の「次に掲げる」を規定する同4項1号は「第1項の議事録が書面をもって作成されているときは、当該書面又は当該書面の写しの閲覧又は謄写の請求」と規定しています。株主や債権者が株主総会議事録の閲覧等を請求するのに、特に制限はないため、本肢は正しいです。

(イ)会社法318条第5項は「株式会社の親会社社員は、その権利を行使するために必要があるときは、裁判所の許可を得て、第1項の議事録(株主総会議事録)について、前項各号(株主総会の議事録の閲覧又は謄写を含む)の請求をすることができる」と規定しています。従って、本肢は正しいです。

(ウ)会社法394条第2項は「監査役会設置会社の株主は、その権利を行使するために必要があるときは、裁判所の許可を得て、次に掲げる請求をすることができる」と規定し、条文上の「次に掲げる」を規定する同条第2項第1号は「監査役会のの議事録が書面をもって作成されているときは、当該書面又は当該書面の写しの閲覧又は謄写の請求」と規定しています。そしてこの規定は、同条第3項によって、監査役会設置会社の債権者が、役員の責任を追及するために必要があるときに準用されています。本肢は、この請求をするには裁判所の許可は不要としていますので、誤りです。

(エ)会社法371条第4項は「取締役会設置の債権者は、役員又は執行役の責任を追及するために必要があるときは、裁判所の許可を得て、当該取締役会の議事録等について、第2項各号(取締役会の議事録の閲覧又は謄写を含む)に掲げる請求をすることができる」と規定し、この規定は、同条第5号によって、取締役会設置会社の親会社の社員がその権利を行使するために必要があるときに準用されています。従って、本肢は正しいです。

(オ)会社法393条第2項は「監査役会の議事については、議事録を作成しなければならない」と規定し、同394条第2項は「監査役設置会社の株主は、その権利を行使するために必要があるときは、裁判所の許可を得て、当該監査役会設置会社の監査役会の議事録の閲覧又は謄写を請求することができる」と規定しています。本肢は、当該請求をするのに裁判所の許可は不要としていますので、誤りです。

まとめ

議事録の閲覧等請求権の主体は、株主、債権者、親会社社員の3種類です。客体が、株主総会、取締役会議事録、監査役会議事録です。主体と客体ごとに、請求の条件を整理しておくとよいでしょう。

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02

各議事録の閲覧等の主体の論点です。各議事録別に覧等請求をする際、裁判所の許可が必要になるかどうか、主体(株主、債権者、親会社の株主)で分かれます。それぞれ、どういう理由で裁判所の許可の要否が分かれるか、その理由ごと、憶える方が効率的です。

選択肢5. ウオ

ア 318条4項で、”株主及び債権者は、株式会社の営業時間内はいつでも、次に掲げる請求をすることができる”とし、同条同1号で、”第1項の議事録が書面をもって作成されているときは、当該書面又は当該書面の写しの閲覧又は謄写の請求”とあり、株主や債権者が株主総会議事録の閲覧等を請求するのに、特に制限はありません。よって、本肢は正解となります。監査役会設置会社ですが、監査役会議事録ではなく、株主総会議事録についての閲覧の問題です。問題文を良く見ないとケアレスミスが発生する可能性があります。

 

イ 318条5項で、”株式会社の親会社社員は、その権利を行使するために必要があるときは、裁判所の許可を得て、第1項の議事録(株主総会議事録)について、前項各号(株主総会の議事録の閲覧又は謄写など)の請求をすることができる”とあるため、本肢は正解となります。親会社そのものではなく、親会社の社員であることに注意が必要です。親会社そのものは株主なので、特に制限はありません。


ウ 371条2項に、”株主は、その権利を行使するため必要があるときは、株式会社の営業時間内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。”同条同項1号に、”一 前項の議事録等が書面をもって作成されているときは、当該書面の閲覧又は謄写の請求”とあり、さらに、同条4項に”取締役会設置会社の債権者は、役員又は執行役の責任を追及するため必要があるときは、裁判所の許可を得て、当該取締役会設置会社の議事録等について第二項各号に掲げる請求をすることができる。”とあるため、

本肢の、”裁判所の許可は不要”としている記述は不正解となります。

取締役会議事録の場合は株主総会議事録と違って、債権者が閲覧するには、裁判所の許可が必要です。これは、取締役会が実質の経営を賄う取締役で構成される合議体であるため、営業秘密を取り扱う可能性があるためです。
 

エ 371条4項は”取締役会設置の債権者は、役員又は執行役の責任を追及するために必要があるときは、裁判所の許可を得て、当該取締役会の議事録等について、第2項各号(取締役会の議事録の閲覧又は謄写など)に掲げる請求をすることができる”とあり、同条第5号により、”前項の規定は、取締役会設置会社の親会社社員がその権利を行使するため必要があるときについて準用する。”として、債権者の規定を親会社社員に準用しています。よって、本肢は正解となります。親会社の社員は裁判所の許可が不要なケースはないと思ってください(親会社自体は株主なので、区別が必要です)。

 

オ 394条2項本文で、”監査役会設置会社の株主は、その権利を行使するため必要があるときは、裁判所の許可を得て、次に掲げる請求をすることができる。”とし、同条同項1号で、”一 前項の議事録が書面をもって作成されているときは、当該書面の閲覧又は謄写の請求”とあるので、本肢の、”裁判所の許可は不要”とする記述は、不正解となります。

まとめ

解法のポイント

議事録の閲覧等請求権を考える場合、株主は会社の所有者なので、多くの場合、閲覧が認められます。

債権者はその権利を行使に関して必要な範囲で認められ、親会社社員に関しては、裁判所の許可が不用なものは、誰にでも公開されているもの以外はありません。

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