司法書士の過去問
令和5年度
午前の部 問32

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問題

令和5年度 司法書士試験 午前の部 問32 (訂正依頼・報告はこちら)

持分会社に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものの組合せはどれか。

ア  持分会社は、定款によっても、社員が事業年度の終了時に当該持分会社の計算書類の閲覧の請求をすることを制限する旨を定めることはできない。
イ  持分会社において、利益又は損失の一方についてのみ分配の割合についての定めを定款で定めたときは、その割合は、利益及び損失の分配に共通であるものと推定される。
ウ  持分会社は、会計帳簿の閉鎖の時から10年間、その会計帳簿及びその事業に関する重要な資料を保存しなければならない。
エ  合名会社の債権者は、当該合名会社の営業時間内は、いつでも、その計算書類の閲覧の請求をすることができる。
オ  合資会社が資本金の額を減少する場合には、当該合資会社の債権者は、当該合資会社に対し、資本金の額の減少について異議を述べることができる。
  • アウ
  • アオ
  • イウ
  • イエ
  • エオ

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この過去問の解説 (2件)

01

会社法(持分会社)に関する問題です。持分会社のに関する問題は、毎年必ず1問出題されます。あまり難しい問題は出ませんので、持分会社の要点のみを押さえておけばよいでしょう。

選択肢5. エオ

(ア)持分会社の社員は、当該持分会社の営業時間はいつでも、計算書類等の閲覧等の請求ができます(会社法618条第1項、第1号)。この規定に関しては、定款で別段の定めをすることができますが、定款によっても、社員が事業年度の終了時に当該請求をすることを制限する旨を定めることはできません。従って、本肢は正しいです。

(イ)会社法622条第2項は「(持分会社において)利益または損失の一方についてのみ分配の割合についての定めを定款で定めたときは、その割合は、利益及び損失の分配に共通であるものと推定する」と規定します。本肢は、条文そのものなので、正しいです。

(ウ)会社法615条第1項は「持分会社は、法務省令で定めるところにより、適時に、正確な会計帳簿を作成しなければならない」と規定し、同条第2項では「持分会社は、会計帳簿の閉鎖の時から10年間、その会計帳簿及びその事業に関する重要な資料を保存しなければならない」と規定しています。従って、本肢は正しいです。

(エ)合同会社の債権者は、当該合同会社の営業時間内はいつでも、その計算書類(作成した日から5年以内のものに限る)について、計算書類の閲覧等を請求することができます(会社法625条)。しかし、合名会社の債権者は、計算書類等の閲覧をすることはできません(会社法618条第1項、1号)。従って、本肢は誤りです。

(オ)会社法627条第1項では「合同会社が資本金の額を減少する場合には、当該合同会社の債権者は、当該合同会社に対して、資本金の額の減少について、異議を述べることができる」と規定していますが、合名会社・合資会社にはこのような規定は設けられていません。従って、本肢は誤りです。

まとめ

司法書士試験の会社法に関する問題のうち、持分会社に関するものは、例年、株式会社に関する問題と比較すると、簡単な問題が多いので、確実に得点しておきたいです。

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02

持分会社の論点です。持分会社は幅広いのですが、出題されるのは1問程度になっています。基本的な論点が多いので、確実に暗記しておくと、得点源になります。

選択肢5. エオ

ア 618条1項1号により、”持分会社の社員は、当該持分会社の営業時間はいつでも、次に掲げる請求をすることができる”として、計算書類の閲覧請求が可能となっています。そして、同条2項で、”前項の規定は、定款で別段の定めをすることを妨げない。ただし、定款によっても、社員が事業年度の終了時に同項各号に掲げる請求をすることを制限する旨を定めることができない。”とあり、定款で、社員が事業年度の終了時に当該請求をすることを制限する旨を定めることはできません。よって、本肢は正解となります。事業年度の終了時は会社の資産状況を把握する大切な時期になるため、定款による閲覧制限が禁じられていると考えられます。
 

イ 原則は622条1項の”損益分配の割合について定款の定めがないときは、その割合は、各社員の出資の価額に応じて定める。”であり、同条2項により、”(持分会社において)利益または損失の一方についてのみ分配の割合についての定めを定款で定めたときは、その割合は、利益及び損失の分配に共通であるものと推定する”としています。よって、本肢は正解となります。
 

ウ 615条2項により、”持分会社は、会計帳簿の閉鎖の時から10年間、その会計帳簿及びその事業に関する重要な資料を保存しなければならない”とあるため、本肢は正解となります。
 

エ 625条により、”合同会社の債権者は、当該合同会社の営業時間内はいつでも、その計算書類(作成した日から5年以内のものに限る。)について、計算書類の閲覧等を請求することができる。”とあり、明文で、合同会社と限定されているため、合名会社の債権者は618条1項1号の計算書類等の閲覧をすることはできません。この違いは、無限責任社員がいるかどうかによって、債権者が会社の資産状況を把握する必要性が変わるためです。合名会社には無限責任社員という、一種の会社の保証人となる立場の社員がいるため、計算書類を把握する必要がないからです。よって、本肢は不正解となります。
 

オ 627条1項の”合同会社が資本金の額を減少する場合には、当該合同会社の債権者は、当該合同会社に対して、資本金の額の減少について、異議を述べることができる”は、合同会社に限定して規定されており、合名会社・合資会社にはあてはまりません。その理由は合名・合資会社には無限責任社員がいるからです。よって、本肢は不正解となります。

まとめ

解法のポイント

持分会社のうち、合同会社は株式会社に比較的近い組織となっています。特に合名・合資会社と大きく異なるのは、無限責任社員がいないことです。合名・合資会社の債権者はいざとなれば、会社の保証人的立場である、無限責任者に請求すれば済むため、合同会社ほど債権者保護を厳しくする必要がないからです。

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