司法書士の過去問
令和5年度
午前の部 問33

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問題

令和5年度 司法書士試験 午前の部 問33 (訂正依頼・報告はこちら)

社債に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものの組合せはどれか。
なお、担保付社債信託法及び社債、株式等の振替に関する法律の適用はないものとする。

ア  募集社債の総額の引受けを行う契約により募集社債の総額を引き受けた者は、その契約が成立した時に、引き受けた募集社債の社債権者となる。
イ  社債券を発行する旨の定めがある社債に質権を設定した者は、社債発行会社に対し、質権に関する所定の事項を社債原簿に記載し、又は記録することを請求することができない。
ウ  社債の償還請求権は、これを行使することができる時から10年間行使しないときは、時効によって消滅する。
エ  会社は、社債を発行する場合において、各社債の金額が1億円以上であるときは、社債管理者を定めなければならない。
オ  議決権者の議決権の総額の5分の1で、かつ、出席した議決権者の議決権の総額の3分の2の議決権を有する者の同意により、社債管理者が当該社債の全部について支払の猶予をすることを可決する旨の社債権者集会の決議は、裁判所の認可を受けなくても、その効力を生ずる。
  • アイ
  • アウ
  • イオ
  • ウエ
  • エオ

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この過去問の解説 (2件)

01

会社法(社債)に関する問題です。この分野の問題は、ほぼ毎年出題される頻出分野ですが、それほど難しい問題はでません。ただ、学習を疎かにしていると、ひっかけ問題に引っかかってしまいます。

選択肢5. エオ

(ア)募集社債を引き受けようとする者が、その総額の引き受けを行う契約(総数引受契約)により、募集社債の総額を引き受けた者は、その者が引き受けた募集社債の社債権者となります(会社法680条第2号参照)。そして、総額引受契約の引受人は、募集社債と引き換えにする金銭の払込みをした時ではなく、総数引受契約が成立したときに、募集社債の債権者になるとされています。従って、本肢は正しいです。

(イ)社債に質権を設定した者は、社債発行会社に対して、質権者の氏名又は名称及び住所並びに質権の目的である社債を社債原簿に記載し、又は記録することを請求することができます(会社法694条第1項、1号2号)。ただし、この規定は、同条第2項によって、社債券を発行する旨の定めがある場合は、適用が除外されます。従って、本肢は正しいです。

(ウ)社債の償還請求権は、これを行使することができるときから10年間行使しないときは、時効によって消滅します(会社法701条第1項)。従って、本肢は正しいです。

(エ)会社法702条は「会社は、社債を発行しようとするときは、社債管理者を定め、社債権者のために、弁済の受領、債権の保全その他の社債の管理を行うことを委託しなければならない。ただし、各社債の金額が1億円以上である場合その他、社債権者の保護にかけるおそれがないものとして法務省令で定める場合は、この限りではない」と規定します。従って、各社債の金額が1億円以上であるときは、社債管理者の選任は不要なので、本肢は誤りです。

(オ)会社法734条は「社債権者集会の決議は、裁判所の認可を受けなければ、その効力を生じない」と規定していますが、この規定に、設問のような除外規定は設けられていないため、設問の場合でも、社会権者集会の決議が有効となるためには、裁判所の認可だ必要なため、本肢は誤りです。

まとめ

(エ)は一瞬、正しい枝かと思ってしまいます。社債管理者の選任と1億円が何か関係があることをぼやっと覚えていても、正確に覚えていないと、この枝を正しいと判定して、間違ってしまいます。司法書士試験は、この手のひっかけ問題が多いので、要注意です。

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02

社債の論点です。社債は株式発行による出資と異なり、会社の借金となるので、利子を含めて返還が必要になります。株式発行と比較して憶えておくと、問題に対処しやすくなると思います。

選択肢5. エオ

ア 680条1項により、”次の各号に掲げる者は、当該各号に定める募集社債の社債権者となる。”として、同条1項2号で、”二 前条の契約により募集社債の総額を引き受けた者 その者が引き受けた募集社債”とあるので、株式募集の時の株式引受人は払込をした段階で株主となること対して、募集社債の総額引受契約の引受人は、募集社債と引き換えにする金銭の払込みをした時ではなく、総数引受契約が成立したときに、募集社債の債権者になります。よって、本肢は正解となります。

 

イ 694条1項、1号および2号により、”社債に質権を設定した者は、社債発行会社に対し、次に掲げる事項を社債原簿に記載し、又は記録することを請求することができる。”とありますが、同条第2項により、”前項の規定は、社債券を発行する旨の定めがある場合には、適用しない。”とあるので、本肢は正解となります。693条2項により、”前項の規定にかかわらず、社債券を発行する旨の定めがある社債の質権者は、継続して当該社債に係る社債券を占有しなければ、その質権をもって社債発行会社その他の第三者に対抗することができない。”とあり、社債権の占有が、質権者の会社および、第三者対抗要件になるため、社債原簿に記載される必要がないからです。

 

ウ 701条1項により、”社債の償還請求権は、これを行使することができるときから10年間行使しないときは、時効によって消滅する。”とあるので、本肢は正解となります。

 

エ 702条により、”会社は、社債を発行する場合には、社債管理者を定め、社債権者のために、弁済の受領、債権の保全その他の社債の管理を行うことを委託しなければならない。ただし、各社債の金額が一億円以上である場合その他社債権者の保護に欠けるおそれがないものとして法務省令で定める場合は、この限りでない。”とあるので、本肢の”各社債の金額が1億円以上であるときは、社債管理者を定めなければならない”とする記述は不正解となります。各社債の金額が1億円以上である場合は大口社債権者であり、一般投資家ではない(金融機関など)ので、自前で管理するのが通常だからです。

 

オ 734条1項により、”社債権者集会の決議は、裁判所の認可を受けなければ、その効力を生じない。”とあり、原則、裁判所の認可が必要とされますが、令和元年会社法改正により、735条の2の1項”社債発行会社、社債管理者、社債管理補助者又は社債権者が社債権者集会の目的である事項について(社債管理補助者にあっては、第七百十四条の七において準用する第七百十一条第一項の社債権者集会の同意をすることについて)提案をした場合において、当該提案につき議決権者の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたときは、当該提案を可決する旨の社債権者集会の決議があったものとみなす。”旨が追加されました。また、この場合には、裁判所の認可は不要とされました。本肢は、債権者全員の同意ではなく、あくまで”議決権の総額の3分の2の議決権を有する者の同意により”とあるので、不正解となります。

まとめ

解法のポイント

社債管理者が必要になる場合は、大口投資家や、社債権者が50人未満といった、小人数だけの債権者集会以外のときです。

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