司法書士の過去問
令和5年度
午前の部 問34
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問題
令和5年度 司法書士試験 午前の部 問34 (訂正依頼・報告はこちら)
会社の合併に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
ア 株式会社を吸収合併存続会社とし、合名会社を吸収合併消滅会社とする吸収合併は、することができない。
イ 公告方法として官報に掲載する方法を定款で定めている吸収合併消滅株式会社は、吸収合併について異議を述べることができる債権者がいる場合において、官報及び時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙にそれぞれ合併に関する公告を行ったときは、知れている債権者に対して各別に催告することを要しない。
ウ 吸収合併存続株式会社は、吸収合併消滅株式会社の株主に対し、吸収合併の対価として、当該吸収合併存続株式会社の子会社の株式を交付することはできない。
エ 株式会社を設立する新設合併は、新設合併設立株式会社の設立の登記をすることによって、その効力を生ずる。
オ 吸収合併の効力が生じた後に吸収合併存続株式会社の株主になった者は、当該吸収合併の効力が生じた日から6か月以内に、訴えをもって当該吸収合併の無効を主張することができる。
ア 株式会社を吸収合併存続会社とし、合名会社を吸収合併消滅会社とする吸収合併は、することができない。
イ 公告方法として官報に掲載する方法を定款で定めている吸収合併消滅株式会社は、吸収合併について異議を述べることができる債権者がいる場合において、官報及び時事に関する事項を掲載する日刊新聞紙にそれぞれ合併に関する公告を行ったときは、知れている債権者に対して各別に催告することを要しない。
ウ 吸収合併存続株式会社は、吸収合併消滅株式会社の株主に対し、吸収合併の対価として、当該吸収合併存続株式会社の子会社の株式を交付することはできない。
エ 株式会社を設立する新設合併は、新設合併設立株式会社の設立の登記をすることによって、その効力を生ずる。
オ 吸収合併の効力が生じた後に吸収合併存続株式会社の株主になった者は、当該吸収合併の効力が生じた日から6か月以内に、訴えをもって当該吸収合併の無効を主張することができる。
- アウ
- アオ
- イウ
- イエ
- エオ
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この過去問の解説 (2件)
01
会社法(組織再編・合併)に関する問題です。組織変更や組織再編の問題は、最近は毎年1題必ず出題されますが、会社法随一の難関分野です。
(ア)株式会社と持分会社は、いずれも、吸収分割消滅会社となることも、吸収合併存続会社になることもできます。吸収合併に関しては、合併の当時会社の種類について制限を設ける規定はありません。従って、本肢は誤りです。
(イ)株式会社が吸収合併をする場合、吸収合併消滅会社は、当該吸収合併消滅株式会社の債権者に対して、債権者が吸収合併に意義があれば、1カ月を下回らない一定の期間内に異議を述べることができる旨等の一定の事項を官報に公告し、かつ、知れている債権者に、格別にこれを催告しなければなりません。(会社法789条第2項・債権者保護手続)しかし、この場合において、吸収合併消滅会社が、官報のほか、定款の公告方法に従い、時事に関する事項を掲載する日刊新聞誌に掲載する方法又は電子公告によりするときは、知れている債権者に対する格別の催告は、することを要しません(会社法789第3項、会社法939条第1項、同項2号3号)。従って、債権者保護手続きにおいて、催告に代わる公告をすることができるのは、定款で公告方法を、時事に関する事項を掲載する日刊新聞誌に掲載する方法又は電子公告としている株式会社であり、設問の株式会社はそうはなっていないため、本肢は誤りです。
(ウ)吸収合併存続会社は、吸収合併消滅会社の株主に対して、合併対価として、自社の株式のほかに、金銭等を交付することができます(会社法749条第1項第2号)。金銭等には、吸収合併存続会社の子会社の株式も含めれるため、設問は誤りです。
(エ)新設合併の場合は、新設合併設立会社が、その本店所在地において、設立の登記をしたときに、その効力を生じます。従って、本肢は正しいです。
(オ)吸収合併無効の訴えの提訴期間は、合併の効力発生日から6か月以内です(会社法828条1項7号参照)。また、大審院昭和7年5月20日判決では、吸収合併の効力が生じた後に、吸収合併存続会社の株主となった者も、吸収合併無効の訴えの提訴権者に含まれると判断しています。よって、本肢は正しいです。
この問題でいえば、(エ)が、野球に例えると、ど真ん中の緩いストレートで、必ず、ヒット(正しく判断すること)にしないといけません。これが〇であると判断できれば、(イ)(エ)か(エ)(オ)に絞れます。(イ)は典型的なひっかけですが、(オ)をなんとか〇と判定できれば、正解が出ます。
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02
組織再編の論点です。組織再編は合併、株式交換・株式移転・株式交付、会社分割があり、合併を基本にその違いを整理しておく必要があります。基本は合併なので、特に合併はしっかり、内容を把握しておく必要があります。
ア 合併は、すべての形態の会社を対象として、吸収合併存続会社となることも、吸収合消滅会社になることもできます。よって、本肢は不正解となります。
イ 789条3項により、”前項(格別の催告と広告が必要)の規定にかかわらず、消滅株式会社等が同項の規定による公告を、官報のほか、第939条第1項の規定による定款の定めに従い、同項第2号又は第3号に掲げる公告方法によりするときは、前項の規定による各別の催告(吸収分割をする場合における不法行為によって生じた吸収分割株式会社の債務の債権者に対するものを除く。)は、することを要しない。”とあり、会社の公告方法として、定款で日刊新聞誌や電子公告を採用していない場合は、会社の広告方法も官報となるため、官報との二重公告によって、通知を省略する規定は使えません。よって、本肢は不正解となります。
ウ 株式会社の吸収合併の対価として認められているものは、749条、751条により、”存続会社の株式や持分、金銭、社債、新株予約権、新株予約権付社債、その他の財産的価値のあるもの”となります。会社法以前の旧法では、吸収合併において、消滅会社の株主に交付される対価は原則、存続会社の株式に限定されていました。しかし、会社法の施行により、合併対価の柔軟化があり、合併の対価としては、現金や株式およびその他の資産(社債、新株予約権など)財産的価値のあるものであれば認められることになりました。また、子会社が親会社の株を保有すること自体が禁じられていましたたが、被合併会社の株主に対して発行する合併会社の親会社株式の総数を上限として、合併会社である子会社に親会社株式の取得も併せて認められることとなりました。よって、本肢の吸収合併存続会社の子会社の株式も合法となり、本肢は不正解となります。
エ 新設合併の場合は、会社を新しく設立することになるので、49条により、”株式会社は、その本店の所在地において設立の登記をすることによって成立する。”が適用されます。また、754条により、”新設合併設立株式会社は、その成立の日に、新設合併消滅会社の権利義務を承継する。”と,
あるため、新設合併設立会社の本店としている所在地で設立の登記をしたときに、その効力が生じることになります。よって、本肢は正解となります。
オ 828条1項7号により、吸収合併無効の訴えの提訴期間は、”会社の吸収合併 吸収合併の効力が生じた日から6箇月以内”となります。また、同条2項で、提訴権者は” 前項第七号に掲げる行為(吸収合併) 当該行為の効力が生じた日において吸収合併をする会社の株主等若しくは社員等であった者又は吸収合併後存続する会社の株主等、社員等、破産管財人若しくは吸収合併について承認をしなかった債権者”とあり、会社の株主等に 吸収合併の効力が生じた後に、吸収合併存続会社の株主となった者も含まれるかが問題となりますが、判例(大審院昭和7.5.20)によると、”吸収合併の効力が生じた後に、吸収合併存続会社の株主となった者も、吸収合併無効の訴えの提訴権者に含まれる”と判示しているので、本肢は正解となります。
解法のポイント
イは記述式問題などでも出てくる頻出論点です。定款に何も記述がない場合、自動的に官報が公告方法になるので、その場合は二重公告による、債権者への格別の催告の省略は出来ないと、直ぐに連想出来ようにしておきましょう。
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