司法書士の過去問
令和5年度
午前の部 問35

このページは閲覧用ページです。
履歴を残すには、 「新しく出題する(ここをクリック)」 をご利用ください。

問題

令和5年度 司法書士試験 午前の部 問35 (訂正依頼・報告はこちら)

商人(小商人、会社及び外国会社を除く。)の商号に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものの組合せはどれか。

ア  商人は、同一の営業について、同一の営業所で複数の商号を有することができる。
イ  自己の商号を使用して営業を行うことを他人に許諾した商人が当該他人と取引した者に対して当該取引によって生じた債務を弁済する責任を負うには、特段の事情がない限り、当該他人の営業が当該商人の営業と同種の営業であることを要する。
ウ  商人は、その商号を登記しなければ、不正の目的をもって自己と誤認されるおそれのある商号を使用する者に対し、営業上の利益の侵害の停止を請求することができない。
エ  営業の譲渡とともにされた商号の譲渡は、登記をしなければ、第三者に対抗することができない。
オ  営業を譲り受けた商人は、譲渡人の商号を引き続き使用する場合において、営業の譲渡がされた後、遅滞なく、譲渡人の債務を弁済する責任を負わない旨の登記をしたときは、譲渡人の営業によって生じた債務を弁済する責任を負わない。
  • アイ
  • アウ
  • イエ
  • ウオ
  • エオ

次の問題へ

正解!素晴らしいです

残念...

この過去問の解説 (2件)

01

会社法(商法)に関する問題です。毎年、商法に関する問題は、1題出題されます。例年、それほど難易度の高い問題は出題されませんので、得点するために、それほど深い学習は不要です。

選択肢2. アウ

(ア)商人は、1個の営業につき、複数の商号を使用することはできません(商号単一の原則)。従って、本肢は誤りです。なお、商人が、異なる数種の営業を行う場合には、その営業ごとに、異なる商号を使用することができます。

 

(イ)商法14条は「自己の商号を使用して営業又は事業を行うことを他人に許諾した商人は、当該商人が当該営業を行う者と誤認して当該他人と取引をした者して、当該他人と連帯して、当該取引によって生じた債務を弁済する責任を負う」と規定していますが、最高裁昭和36年12月5日判決は、自己の商号を使用して営業を行うことについて許諾した者は、特段の事情がない限り、その者の営業の範囲内の行為についてのみ、商法14条の責任を負うと判断しています。従って、本肢は正しいです。

 

(ウ)商法12条第1項は「何人も、不正の目的をもって、他の商人であると誤認されるおそれのある名称又は商号を使用してはならない」と規定し、同条第2項は「前項の規定に違反する名称又は商号の使用によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれのある商人は、その営業上の利益を侵害するもの又は侵害するおそれのある者に対し、その侵害の停止または予防を請求することができる」と規定しています。この請求は、登記をしていない商人でもすることができるため、本肢は誤りです。

 

(エ)商法15条第1項は「商人の商号は、営業とともにする場合又は営業を廃止する場合に限り、譲渡することができる」と規定し、同条第2項は「前項の規定による商号の譲渡は、登記しなければ、第三者に対抗することができない」と規定しています。従って、本肢は正しいです。

 

(オ)商法17条第1項は「営業を譲り受けた商人が譲渡人の商号を引き続き使用する場合は、譲受人も、譲渡人の営業によって生じた債務を弁済する責任を負う」と規定し、同条第2項前段は「前項の規定は、営業を譲渡した後、遅滞なく、譲受人が、譲渡人の債務を弁済する責任を負わない旨の登記を適用した場合には、適用しない」と規定しています。従って、本肢は正しいです。

まとめ

商法第1編第4章(商号)からの出題でした。出題対象となる条文が短く端的でしたので、条文を正確に記憶されている方は、正解できたと思います。

参考になった数11

02

商法の論点です。商法は判例などはほとんど出ません。条文中心に基本論点の整理が出来ていれば、ほとんど正解出来ます。

選択肢2. アウ

ア 商法12条(他の商人と誤認させる名称等の使用の禁止)、14条(自己の商号の使用を他人に許諾した商人の責任)、15条(商号の譲渡)などの規定や、判例(大決大13.6.13)から、1個の営業につき、商号は1個に限られる、商号単一の原則が導かれると考えれます。営業が同じで商号も同じであれば、一般消費者に誤認のおそれが出るからです。よって、本肢は不正解となります。

 

イ 商法14条によると、”自己の商号を使用して営業又は事業を行うことを他人に許諾した商人は、当該商人が当該営業を行うものと誤認して当該他人と取引をした者に対し、当該他人と連帯して、当該取引によって生じた債務を弁済する責任を負う。”とありますが、許諾を受けた他人は許諾をした商人と同種の営業に限って、同規定があてはまるのかが問題になります。この点、判例(最判昭36.12.5)では、”自己の商号を使用して営業を行うことについて許諾した者は、特段の事情がない限り、その者の営業の範囲内の行為についてのみ、商法14条の責任を負う”旨、判示しているため、本肢は正解となります。

 

ウ 商法12条2項により、”前項の規定に違反する名称又は商号の使用によって営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある商人は、その営業上の利益を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。”とあり、この請求に登記は要求されていません。よって、本肢は不正解となります。

 

エ 商法15条1項で、”商人の商号は、営業とともにする場合又は営業を廃止する場合に限り、譲渡することができる。”、同条第2項で”前項の規定による商号の譲渡は、登記をしなければ、第三者に対抗することができない。”とあり、登記を明文で要求しているので、本肢は正解となります。

 

オ 商法17条1項で、”営業を譲り受けた商人(以下この章において「譲受人」という。)が譲渡人の商号を引き続き使用する場合には、その譲受人も、譲渡人の営業によって生じた債務を弁済する責任を負う。”、同条2項前段で、”前項の規定は、営業を譲渡した後、遅滞なく、譲受人が譲渡人の債務を弁済する責任を負わない旨を登記した場合には、適用しない。”とあるので、本肢は正解となります。

まとめ

解法のポイント

すべて条文知識で対応出来ます。商法は出題される問題数の割には学習範囲が広いのですが、概ね、出題される傾向は決まっていますので、過去問を中心に基本論点を漏れなく、暗記しておくようにしましょう。

参考になった数0