司法書士の過去問
令和5年度
午後の部 問1
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問題
令和5年度 司法書士試験 午後の部 問1 (訂正依頼・報告はこちら)
民事訴訟における管轄に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
ア 被告が第一審裁判所において管轄違いの抗弁を提出せずに、訴訟要件が欠けることを理由として訴えの却下を求めた場合には、応訴管轄が生ずる。
イ 裁判所の管轄は、口頭弁論終結の時を標準として定める。
ウ 裁判所は、管轄に関する事項について、職権で証拠調べをすることができる。
エ 不動産の売買契約に基づく売買代金の支払を求める訴えは、不動産に関する訴えとして、不動産の所在地を管轄する裁判所に提起することができる。
オ 簡易裁判所に提起された貸金100万円の返還を求める本訴に対し、被告が適法な反訴により地方裁判所の管轄に属する請求をした場合において、本訴原告(反訴被告)の申立てがあるときは、簡易裁判所は、決定で、本訴及び反訴を地方裁判所に移送しなければならない。
ア 被告が第一審裁判所において管轄違いの抗弁を提出せずに、訴訟要件が欠けることを理由として訴えの却下を求めた場合には、応訴管轄が生ずる。
イ 裁判所の管轄は、口頭弁論終結の時を標準として定める。
ウ 裁判所は、管轄に関する事項について、職権で証拠調べをすることができる。
エ 不動産の売買契約に基づく売買代金の支払を求める訴えは、不動産に関する訴えとして、不動産の所在地を管轄する裁判所に提起することができる。
オ 簡易裁判所に提起された貸金100万円の返還を求める本訴に対し、被告が適法な反訴により地方裁判所の管轄に属する請求をした場合において、本訴原告(反訴被告)の申立てがあるときは、簡易裁判所は、決定で、本訴及び反訴を地方裁判所に移送しなければならない。
- アエ
- アオ
- イウ
- イエ
- ウオ
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この過去問の解説 (2件)
01
民事訴訟法(民事訴訟における管轄)に関する問題です。民事訴訟法は、午後の部の最初の5問が割り当てられますが、本問は、その第1問目です。
(ア)民事訴訟法12条は「被告が第1審裁判所において管轄違いの抗弁を提出しないで本案について弁論をし、又は弁論準備手続きにおいて申述をしたときは、その裁判所は管轄権を有する」と規定していますが、訴訟要件に欠けることを理由に、訴えの却下を求めた場合は、「本案について弁論をし、又は弁論準備手続きにおいて申述をしたとき」に該当せず、応訴管轄は発生しません。従って、本肢は誤りです。
(イ)民事訴訟法15条は「管轄の有無は訴えの提起の時を標準として定める」と規定しています。従って、本肢は誤りです。
(ウ)民事訴訟法第14条は「裁判所は、管轄に関する事項について、職権で証拠調べをすることができる」と規定しているため、本肢は正しいです。
(エ)民事訴訟法5条第1項第12号は「不動産に関する訴えは、不動産の所在地を管轄する裁判所に提起することができる」と規定していますが、不動産に関する訴えとは、不動産又は不動産に関する権利を目的とする訴えのことであり、不動産の売買契約に基づく売買代金の支払いを求める訴えは、これにあたらないため、本肢は誤りです。
(オ)民事訴訟法274条第1項本文は「被告が反訴で地方裁判所の管轄に属する請求をした場合において、相手方の申立てがあるときは、簡易裁判所は、決定で、本訴及び反訴を地方裁判所に移送しなくてはならない」と規定しています。従って、本肢は正しいです。
(イ)の枝は、問題文が短く端的て、いかにも正しいそうな枝ですが、管轄の有無は、「口頭弁論終結の時」ではなく、「訴え提起の時」を標準として定められますので、間違いの枝です。こういった枝に引っかからないようにしなくてはなりません。
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02
民事訴訟法の管轄の論点です。民事訴訟法は午後の民事系ではもっとも多い、5問が出題されます。幅広いので、まずは、訴訟開始から終了・再審まで、どんな手続の流れになるのか、どんな制度があるのか、大きく捉えてから、各論点を勉強するようにした方が効率が良いでしょう。
ア 12条に応訴管轄の規定があります。”被告が第一審裁判所において管轄違いの抗弁を提出しないで本案について弁論をし、又は弁論準備手続において申述をしたときは、その裁判所は、管轄権を有する。”これは、合意管轄と同様に、当事者の意思を尊重しようという趣旨です(ただし、当事者の任意で変えられない専属管轄は対象外)。一方当事者である被告が、本案について弁論をし、又は弁論準備手続きにおいて申述をしたときに該当する場合は、その管轄地で、訴訟を開始する意志を表明したと言えるので、管轄として認めようということです。本肢では、訴訟要件に欠けることを理由に、訴えの却下を求めていますが、その場合、訴訟を開始する意志を認めたとは言えず、「本案について弁論をし、又は弁論準備手続きにおいて申述をしたとき」に該当しないので、応訴管轄は発生しません。よって、本肢は不正解となります。
イ 15条より、”管轄の有無は訴えの提起の時を標準として定める。”とあるため、訴えの提起の時であり、口頭弁論終結時ではありません。よって、本肢は不正解となります。
ウ 民事訴訟法は事実・証拠の収集は当事者の権能と責任に委ねるという原則(弁論主義)です。例外として、職権で調べることが出来る事項は明文があります。14条2項で”裁判所は、管轄に関する事項について、職権で証拠調べをすることができる。”とあり、管轄に関しては職権調査事項となるので、本肢は正解となります。
エ 5条1項で”次の各号に掲げる訴えは、それぞれ当該各号に定める地を管轄する裁判所に提起することができる。”、同条同項第12号で”不動産に関する訴え 不動産の所在地”とあり、不動産に関する訴えが何を意味するかが問題となります。本条では、”所有権の確認や土地引渡等、不動産又は不動産に関する権利を目的とする訴え”のことを意味しているので、本肢でいう、不動産の売買契約に基づく売買代金の支払いを求める訴えは、これに該当しません。よって、本肢は不正解となります。
オ 274条第1項により、”被告が反訴で地方裁判所の管轄に属する請求をした場合において、相手方の申立てがあるときは、簡易裁判所は、決定で、本訴及び反訴を地方裁判所に移送しなければならない。”とあるため、本肢は正解となります。地方裁判所の方が詳細に吟味され、被告の権利保障が充実すると考えられるため、申立てがあれば、地方裁判所に移送する義務が生まれます。
解法のポイント
管轄の問題は、意外と複雑です。原則と例外があります。特に簡易裁判所が本来の管轄である場合の例外処理のパターンを整理しておきましょう。
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