司法書士の過去問
令和5年度
午後の部 問2
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問題
令和5年度 司法書士試験 午後の部 問2 (訂正依頼・報告はこちら)
共同訴訟に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものの組合せはどれか。
ア 通常共同訴訟において、共同被告の一人が原告の主張する請求原因事実を認める旨の陳述をしたとしても、他の共同被告に対する請求との関係では、当該事実につき自白の効果は生じない。
イ 通常共同訴訟においては、共同被告の一人が提出した証拠につき、他の共同被告がこれを援用しない限り、その者に対する請求との関係では、事実認定の資料とすることはできない。
ウ 類似必要的共同訴訟においては、共同訴訟人の一人が控訴すれば、それによって原判決の確定が妨げられ、当該訴訟は全体として控訴審に移審し、控訴審の判決の効力は控訴をしなかった共同訴訟人にも及ぶ。
エ 共同被告の一方に対する訴訟の目的である権利と共同被告の他方に対する訴訟の目的である権利とが法律上併存し得ない関係にある場合において、原告から同時審判の申出があったときは、裁判所は、弁論及び裁判を分離することができない。
オ 必要的共同訴訟に係る事件が適法に係属し、共同被告の一人がその本案について準備書面を提出した場合において、その共同被告の一人が訴えの取下げに同意をしたときは、共同被告の全員が同意をしなくても、同意をした者に対する関係で訴えの取下げの効力が生ずる。
ア 通常共同訴訟において、共同被告の一人が原告の主張する請求原因事実を認める旨の陳述をしたとしても、他の共同被告に対する請求との関係では、当該事実につき自白の効果は生じない。
イ 通常共同訴訟においては、共同被告の一人が提出した証拠につき、他の共同被告がこれを援用しない限り、その者に対する請求との関係では、事実認定の資料とすることはできない。
ウ 類似必要的共同訴訟においては、共同訴訟人の一人が控訴すれば、それによって原判決の確定が妨げられ、当該訴訟は全体として控訴審に移審し、控訴審の判決の効力は控訴をしなかった共同訴訟人にも及ぶ。
エ 共同被告の一方に対する訴訟の目的である権利と共同被告の他方に対する訴訟の目的である権利とが法律上併存し得ない関係にある場合において、原告から同時審判の申出があったときは、裁判所は、弁論及び裁判を分離することができない。
オ 必要的共同訴訟に係る事件が適法に係属し、共同被告の一人がその本案について準備書面を提出した場合において、その共同被告の一人が訴えの取下げに同意をしたときは、共同被告の全員が同意をしなくても、同意をした者に対する関係で訴えの取下げの効力が生ずる。
- アウ
- アエ
- イウ
- イオ
- エオ
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この過去問の解説 (2件)
01
民事訴訟法(共同訴訟)に関する問題です。
この問題は、過去の出題された論点に関する知識があれば、2択までに絞り込むことができます。
(ア)民事訴訟法39条は「通常共同訴訟においては、共同訴訟人の1人の訴訟行為、共同訴訟人の1人に対する相手方の訴訟行為及び共同訴訟人の1人について生じた事由は、他の共同訴訟人に影響を及ぼさない」と規定しています。従って、本肢は正しいです。
(イ)大審院大正10年9月28日判決は「通常共同訴訟においては、共同訴訟人の1人が提出した証拠は、他の共同訴訟人の援用がなくても、共通して事実認定の資料とすることができる」と判断しています。従って、本肢は誤りです。
(ウ)訴訟の目的が共同訴訟人の全員について合一にのみ確定すべき場合(必要的共同訴訟)には、その1人の訴訟行為は、全員の利益においてのみその効力をします。控訴は、共同訴訟人に有利な訴訟行為であり、共同訴訟人の1人が控訴すれば、それによって原判決の確定が妨げられ、当該訴訟は全体として控訴審に移審し、控訴審の判決は、控訴しなかった共同訴訟人にも及びます。この点は、固有必要的共同訴訟も、類似必要的共同訴訟も変わりありません。従って、本肢は正しいです。
(エ)民事訴訟法41条1項は「共同被告の一方に対する訴訟の目的である権利と、共同訴訟の他方に対する訴訟の目的である権利とが、法律上併存しえない関係にある場合において、原告の申し出があった時は、弁論及び裁判は、分離しないでしなければならない」と規定しています。本肢は、条文そのものなので、正しいです。
(オ)民事訴訟法261条2項は「訴えの取り下げは、相手方が本案について準備書面を提出し、弁論準備手続きにおいて申述をし、又は口頭弁論をした後にあっては、相手方の同意を得なければ、その効力を生じない」と規定しています。そして、必要的共同訴訟に係る事件が適法に係属し、共同被告人の1人がその本案について弁論準備書面を提出した後に、原告から訴えの取下げの申し出があった場合には、共同被告全員の同意がなければ、その効力を生じません(大審院昭和14年4月18日判決参照)。従って、本肢は誤りです。
この問題は、通常共同訴訟、固有必要的共同訴訟、類似必要的共同訴訟の、各訴訟の定義と、その異同を、きちんと理解しているかどうかを確認する問題でした。
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02
共同訴訟の論点です。通常共同訴訟、必要的共同訴訟、類似必要的共同訴訟の違いを中心に整理が出来ていれば解ける問題です。
ア 39条で”共同訴訟人の一人の訴訟行為、共同訴訟人の一人に対する相手方の訴訟行為及び共同訴訟人の一人について生じた事項は、他の共同訴訟人に影響を及ぼさない。”とあり、通常共同訴訟は主張は相対効となりますので、本肢は正解となります。
イ 民事訴訟法に明文はないですが、証拠共通の原則が判例上認められています。判例(大審院大正10.9.28)によると、”通常共同訴訟において、共同訴訟人の1人が提出した証拠は、他の共同訴訟人の援用しなくても、共通して事実認定の資料にできる”旨、判示しており、通常共同訴訟は主張は相対効ですが、証拠は共通はとなります。よって、本肢は不正解となります。
ウ 類似必要的共同訴訟とは、共同訴訟人の全員で開始する必要はないが、いざ、2人以上、同一内容の訴訟が起こった場合には、矛盾ある判決を避けるため、合一確定が要請される訴訟形態のことを言います。そのため、共同訴訟人の1人が控訴すれば、必要的共同訴訟と同様に、原判決の確定が妨げられ、当該訴訟は全体として控訴審に移審し、控訴審の判決は、控訴しなかった共同訴訟人にも及びます。そうしないと、判決の矛盾を回避出来ないからです。よって、本肢は正解となります。
エ 41条1項により、”共同被告の一方に対する訴訟の目的である権利と共同被告の他方に対する訴訟の目的である権利とが法律上併存し得ない関係にある場合において、原告の申出があったときは、弁論及び裁判は、分離しないでしなければならない。”とあるため、本肢は、正解となります。法律上併存しえない関係にある場合、当然に併合されるわけではなく、当事者の申出が必要なことに注意が必要です。
オ 261条2項、”訴えの取下げは、相手方が本案について準備書面を提出し、弁論準備手続において申述をし、又は口頭弁論をした後にあっては、相手方の同意を得なければ、その効力を生じない。”の文言、”相手方の同意”の意味が問題となり、必要的共同訴訟の場合に共同被告人の1人の同意だけで、も、本条の”相手方の同意”があったとするかどうかが問題になります。判例(大審院昭14.4.18)によれば、”必要的共同訴訟に係る事件が適法に係属し、共同被告人の1人がその本案について弁論準備書面を提出した後に、原告から訴えの取下げの申し出があった場合には、共同被告全員の同意がなければ、その効力を生じない”旨、判示しています。
262条2項は、既に訴訟開始後、手続が進んでいる場合に、相手の訴訟行為の積み重ねを一方当事者が取り下げることで、白紙になってしまうことを防ぐ趣旨です。よって、その相手方が承諾するなら、弁論準備書面を提出した後であっても、取下げ可能としています。当該条文の趣旨から、必要的共同訴訟訴訟に当てはめる場合は、訴訟を終了する場合、共同訴訟人全員の意志によってしか出来ない以上、承諾も全員分が必要と解すべきと解します。よって、本肢は不正解となります。
解法のポイント
必要的共同訴訟がなぜ、合一確定を要請されるのか、その趣旨を理解していれば、仮に判例を知らなくても、おおよそ、検討はつく問題です。まずは大雑把に制度趣旨を理解しておくと、判例なども比較的、憶えやすいと思います。
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