司法書士の過去問
令和5年度
午後の部 問4

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問題

令和5年度 司法書士試験 午後の部 問4 (訂正依頼・報告はこちら)

民事訴訟における証人尋問及び当事者尋問に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものの組合せはどれか。

ア  当事者尋問の申出は、証明すべき事実を特定しなくても、することができる。
イ  当事者本人を尋問する場合において、その当事者は、裁判長の許可を受けなくとも、書類に基づいて陳述することができる。
ウ  簡易裁判所の訴訟手続において、裁判所は、相当と認めるときは、当事者本人の尋問に代え、書面の提出をさせることができる。
エ  16歳未満の者を証人として尋問する場合であっても、法定代理人の同意があれば、宣誓をさせることができる。
オ  裁判所は、正当な理由なく出頭しない証人の勾引を命ずることができる。
  • アウ
  • アエ
  • イエ
  • イオ
  • ウオ

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この過去問の解説 (2件)

01

民事訴訟法(証人尋問及び当事者尋問)に関する問題です。司法書士は、特別の研修を受ければ、簡易裁判所において、裁判手続きを代理できます。その時には、証人尋問や当事者尋問は実際に担当することなります。

選択肢5. ウオ

(ア)民事訴訟法180条1項は「証拠の申出は、証明すべき事実を特定してしなければならない」と規定しているため、本肢は誤りです。

 

(イ)民事訴訟法203条は「証人は、書類に基づいて陳述することはできない。ただし、裁判所の許可を得た場合には、この限りではない」と規定しています。従って、本肢は誤りです。なお、証人が書類に基づいて陳述することが禁止されている理由は、偽証が容易になるためです。

 

(ウ)民事訴訟法278条は「(簡易裁判所において)裁判所は、相当と認めるときは、証人若しくは当事者本人の陳述又は鑑定人の意見の陳述に代えて、書面を提出することができる」と規定しています。従って、本肢は正しいです。なお、通常裁判所においては、当事者本人の陳述に代えて書面を提出させることはできません(証人尋問であれば、できます)。

 

(エ)民事訴訟法201条第2項は「16歳未満の者及び宣誓の趣旨を理解することができない者を承証人として尋問する場合には、宣誓させることができない」と規定しています。本肢のような特則は設けられていないので、誤りです。

 

(オ)民事訴訟法194条第1項は「裁判所は、正当な理由なく出頭しない証人の拘引を命じることができる」と規定しているため、本肢は正しいです。

まとめ

この問題の論点は、どれも、実際に簡易裁判所で法廷に立つときに、重要なものです。しっかり習得しておきましょう。

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02

証人尋問及び当事者尋問の論点です。両者の違いを意識して、条文整理をしておくと良いです。

選択肢5. ウオ

ア 180条1項で、”証拠の申出は、証明すべき事実を特定してしなければならない。”とあるため、本肢の、”特定しなくてもすることができる”という記述は不正解となります。民事訴訟は、私人同士の争いですから、あくまで当事者の主導が原則です。訴訟を選択するかどうか、和解に切り替えるかどうかの処分権主義、そして、証拠収集は当事者が主体である弁論主義が原則です。この場合、当事者が証明すべき事実を特定するというのも、裁判所の職権を排除した、当事者主義の表れと考えられます。よって、本肢は不正解となります。


イ 203条により、”証人は、書類に基づいて陳述することはできない。ただし、裁判所の許可を得た場合には、この限りではない。”とあり、本肢は不正解となります。自身の記憶による、証言の方が信憑性が高く、書類に基づいて陳述する方が、偽証が容易になるからです。

 

ウ 地方裁判所と違って、簡易裁判所では、278条により、”(簡易)裁判所は、相当と認めるときは、証人若しくは当事者本人の陳述又は鑑定人の意見の陳述に代えて、書面を提出することができる”とあり、本肢は正解となります。

 

エ 201条2項で”16歳未満の者及び宣誓の趣旨を理解することができない者を承証人として尋問する場合には、宣誓させることができない。”とあり、例外規定がありません。法定代理人の同意は法律行為を未成年者取消権がつかない完全な状態にするための実体法上(民法上)の要件であり、訴訟上の行為には準用されません。よって、本肢にある、”法定代理人の同意があれば、宣誓をさせることができる”とする記述は不正解となります。

 

オ 民194条1項に”裁判所は、正当な理由なく出頭しない証人の拘引を命じることができる。”とあるため、本肢は正解となります。当事者には当てはまらないことに注意です。

まとめ

解法のポイント

訴訟の進行を妨げる何らかの行為や不作為があった場合、当事者に対しては、証明の緩和や主張の容認と言う形で、証人に対しては、罰金や拘引などの形で、ペナルティがあります。両者に違いがあるのは、当事者に対しては、訴訟の結果が左右されることが最も、抑制効果がある一方、証人であれば、裁判の結果には関係がないため、何らかの強制力を働かせない限り、出頭拒絶などを抑制出来ないからです。

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