司法書士の過去問
令和5年度
午後の部 問6

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問題

令和5年度 司法書士試験 午後の部 問6 (訂正依頼・報告はこちら)

民事保全に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものの組合せはどれか。

ア  仮差押命令は、金銭の支払を目的とする債権について、強制執行をすることができなくなるおそれがあるとき、又は強制執行をするのに著しい困難を生ずるおそれがあるときに発することができる。
イ  裁判所は、保全すべき権利が金銭の支払を受けることをもってその行使の目的を達することができるものであるときは、仮処分命令において仮処分解放金の額を定めなければならない。
ウ  保全命令に関する手続については、債権者であっても、保全命令の申立てに関し口頭弁論若しくは債務者を呼び出す審尋の期日の指定があり、又は債務者に対する保全命令の送達があるまでの間は、裁判所書記官に対し、事件の記録の閲覧を請求することができない。
エ  保全命令の申立てについて、口頭弁論を経ないで決定をする場合には、理由の要旨を示せば足りる。
オ  保全命令は、債権者にも送達しなければならない。
  • アエ
  • アオ
  • イウ
  • イオ
  • ウエ

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この過去問の解説 (2件)

01

民事保全法(保全命令)に関する問題です。司法書士試験において、民事保全法は、午後の部で毎年1問出題されます。問題自体は、簡単そうに見える問題が多いのですが、民事保全法は、イメージがつかみづらく、簡単な条文でも覚えるのに一苦労します。

選択肢3. イウ

(ア)民事保全法20条は「仮差押命令は、金銭を支払いとする債権について、強制執行をすることができなくなるおそれがあるとき、又は強制執行をするのに著しい困難が生じるおそれがあるときに発することができる」と規定しています。本肢は、条文そのままですので、正しいです。

 

(イ)民事保全法25条1項は「裁判所は、保全すべき権利が金銭の支払いを受けることをもってその行使の目的を達成することができるものであるときに限り、債権者の意見を聞いて、仮処分の執行の停止を得るために、又は既にした仮処分の執行の取消しを得るために、債務者が供託すべき金銭(仮処分解放金)を定めることができる」と規定しています。仮処分解放金は、定めなければならないものではないので、本肢は誤りです。

 

(ウ)民事保全法5条は「保全命令に関する手続き又は保全執行に関し裁判所が行う手続きについては、利害関係を有する者は、裁判所書記官に対して、事件の記録の閲覧若しくは謄写、その正本、謄本若しくは抄本の交付又は事件に関する事項の証明書の交付を請求することができる。ただし、債権者以外の者にあっては、保全命令の申立てに関し口頭弁論もしくは債権者を呼び出す尋問の期日の指定があり、又は債務者に対する保全命令の送達があるまでの間は、この限りではない」と規定しています。本肢は、債権者にも閲覧等について、上記の条文の但書以下の制限が適用されるとしているため、誤りです。

 

(エ)民事訴訟法16条は「保全命令の申立てについては、理由を付さなければならない。ただし、口頭弁論を経ないで決定をする場合には、この限りではない」と規定しています。従って、本肢は正しいです。

 

(オ)民事保全法17条は「保全命令は、当事者に送達しなければならない」と規定しています。条文上の「当事者」とは、債権者及び債務者のことですから、本肢は正しいです。

まとめ

民事保全法の条文は、イメージがわきづらく、覚えるのに苦労しますが、しっかり覚えてしまえば、民事保全法の問題は簡単なものが出題されますから、よい得点源になります。

参考になった数14

02

民事保全法の保全命令の論点です。民事保全法と民事執行法は幅広い内容の割に1問ずつしか出題されません。多くの手続を学ぶことになりますが、どのような手続なのかイメージ出来ると、忘れにくいので、復習時間も短くて済みます。民事保全法は訴訟前に保全しておかないと、勝訴しても差押える財産が無くなると困るから、最初に行われるものです。そういった、イメージを大切にしてください。

選択肢3. イウ

ア 20条により、”仮差押命令は、金銭を支払いとする債権について、強制執行をすることができなくなるおそれがあるとき、又は強制執行をするのに著しい困難が生じるおそれがあるときに発することができる”とあるので、本肢は、正解となります。
 

イ 25条1項で”裁判所は、保全すべき権利が金銭の支払いを受けることをもってその行使の目的を達成することができるものであるときに限り、債権者の意見を聞いて、仮処分の執行の停止を得るために、又は既にした仮処分の執行の取消しを得るために、債務者が供託すべき金銭(仮処分解放金)を定めることができる”とあり、あくまで、 仮処分解放金は任意であると規定しています。本肢では、”仮処分解放金は、定めなければならない。”と記述されているので、不正解となります。
 

ウ 5条は”保全命令に関する手続き又は保全執行に関し裁判所が行う手続きについては、利害関係を有する者は、裁判所書記官に対して、事件の記録の閲覧若しくは謄写、その正本、謄本若しくは抄本の交付又は事件に関する事項の証明書の交付を請求することができる。ただし、債権者以外の者にあっては、保全命令の申立てに関し口頭弁論もしくは債権者を呼び出す尋問の期日の指定があり、又は債務者に対する保全命令の送達があるまでの間は、この限りではない”とあり、制限があるのは債権者以外の者だけです。本肢では、”債権者にも閲覧等について、上記の条文の但書以下の制限が適用される”とあるので、不正解となります。
 

エ 16条に、”保全命令の申立てについての決定には、理由を付さなければならない。ただし、口頭弁論を経ないで決定をする場合には、理由の要旨を示せば足りる。”とあるので、本肢は正解となります。口頭弁論が必要でない軽微な事件では、理由の要旨で良いという趣旨です。
 

オ 17条で”保全命令は、当事者に送達しなければならない”とあり、債務者に限定していませんので、本肢は正解となります。

まとめ

解法のポイント

民事保全の手続は具体的にどんな場面で行われるものなのか、それぞれの手続で、具体的にイメージ出来ることが大切です。

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