司法書士の過去問
令和5年度
午後の部 問10

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問題

令和5年度 司法書士試験 午後の部 問10 (訂正依頼・報告はこちら)

供託の通知に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せはどれか。

ア  供託者が被供託者に供託の通知をしなければならない場合において、これを欠くときは、供託は無効となる。
イ  金銭債権の一部が差し押さえられた場合において、第三債務者が当該金銭債権の全額に相当する金銭を供託したときは、第三債務者は、執行債務者に供託の通知をしなければならない。
ウ  供託官から供託通知書の送付を受けた被供託者が供託物の還付請求をするときは、供託物払渡請求書に当該供託通知書を添付しなければならない。
エ  供託官に対し、被供託者に供託通知書を発送することを請求するときは、供託者は、被供託者の数に応じて、供託書に供託通知書を添付しなければならない。
オ  供託者が被供託者に供託の通知をしなければならない場合において、供託者からの請求を受けて供託官が行う供託通知書の発送は、行政訴訟の対象となる処分ではない。
  • アウ
  • アエ
  • イエ
  • イオ
  • ウオ

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この過去問の解説 (2件)

01

供託法(供託通知)に関する問題です。供託手続きは、民事執行や民事保全の手続きより身近な手続きなので、よりイメージがわきやすいです。イメージがわくと、学習の理解度が大きく向上します。

選択肢4. イオ

(ア)大審院昭和13年4月21日判決では「供託通知が必要とされる場合に、通知がなされなかったとしても、供託の通知は供託の有効要件ではないので、供託自体は無効にならない」と判断しています。従って、本肢は誤りです。

(イ)金銭債権の一部が差し押さえられて第三債務者が当該金銭債権の全額に相当する金銭を供託した場合には、供託書の「被供託者の住所・氏名欄」には執行債務者の住所・氏名を記載し、供託の通知をしなければなりません。これは、当該差押さえに係る金額を超える部分については、弁済供託の性質を有するからです。従って、本肢は正しいです。

(ウ)供託規則24条は「供託物の還付を受けようとする者は、供託物払渡請求書に次の各号に掲げる書類を添付しなければならない。」と規定し、その第1号は「還付を受ける権利を有することを証する書面。ただし、副本ファイルの記録により、還付を受ける権利を有することが明らかである場合を除く。」、第2号は「反対給付をしなければならないときは、供託法第10条の規定による証明書類」と規定しています。従って、供託物払渡請求書に、供託通知書の添付は不要なので、本肢は誤りです。

(エ)供託者が被供託者に対して、供託の通知をしなければならない場合に、供託者は、供託官に対して、被供託者に対して供託通知書を発送することを請求することができます(供託規則16条第1項)。しかし、この場合の供託通知書は、供託官が作成するので、供託書は、供託書に供託通知書を添付する必要はありません。従って、本肢は誤りです。

(オ)供託書の発送の有無は供託の効力に影響を与えず、また、供託通知書は供託物払渡請求書の添付書面でもありません。しかも、供託通知書の発送は、供託者本人がすべきものを、供託官がこれを代わりに行っているにすぎないため、公権力の行使に当たりません。従って、供託官の行う供託通知書の発送は、行政処分に該当せず、行政訴訟の対象とはなりません。従って、本肢は正しいです。

まとめ

供託法は全部で10条あまり、供託規則は全部で50条あまりです。従って、供託法の範囲は狭く、それでいて試験では3問出題されますから、学習の費用対効果の高い分野です。

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02

供託通知の論点です。弁済供託にしか、必要のない手続です。供託通知書の論点はよく問われますので、整理をしておきましょう。

選択肢4. イオ

ア 供託の通知は供託の成立要件ではありません。判例(大審院昭13.4.21)でも、”供託通知が必要とされる場合に、通知がなされなかったとしても、供託の通知は供託の有効要件ではないので、供託自体は無効にならない”とあります。よって、本肢は不正解となります。
 

イ 供託通知は弁済供託にしか、必要のない手続です。本肢では、金銭債権の一部が差し押さえられて第三債務者が当該金銭債権の全額に相当する金銭を供託していますので、当該差し押さえに係る金額を超える部分については、弁済供託の性質を有する供託ということになります。よって、供託の通知が必要ですから、本肢は正解となります。
 

ウ 供託規則24条は”供託物の還付を受けようとする者は、供託物払渡請求書に次の各号に掲げる書類を添付しなければならない。”としていますが、第1号で、”還付を受ける権利を有することを証する書面。ただし、副本ファイルの記録により、還付を受ける権利を有することが明らかである場合を除く。”、第2号で”反対給付をしなければならないときは、供託法第10条の規定による証明書類”とあり、供託通知書の添付する規定は存在しません。よって、本肢の供託通知書の添付を添付しなければならいとする記述は不正解となります。
 

エ 供託規則16条により、”供託者が被供託者に供託の通知をしなければならない場合には、供託者は、供託官に対し、被供託者に供託通知書を発送することを請求することができる。この場合においては、その旨を供託書に記載しなければならない。”とあり、本肢は供託官に対して、被供託者に対して供託通知書を発送することを請求するときとあるので、供託通知書は、供託官が作成しますから、供託者が供託書に供託通知書を添付する必要はありません。よって、本肢は不正解となります。

 

オ 供託通知書の発送は、本来、供託者本人がすべき事を、供託官がサービスとして、代わりに行っているにすぎないため、そもそも、公権力の行使に当たりません。よって、供託官の行う供託通知書の発送は、行政処分に該当せず、行政訴訟の対象とはならないため、本肢は正解となります。

まとめ

解法のポイント

供託法は執行供託以外は、ほとんど条文と規則の知識問題です。まずは、知識問題をクリアしてから、執行供託の整理に進むのが効率の良い学習方法になると思います。

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