司法書士 過去問
令和6年度
問7 (午前の部 問7)
問題文
次の対話は、占有に関する教授と学生との対話である。教授の質問に対する次のアからオまでの学生の解答のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
※商法の適用は考慮しないものとして、解答してください。
教授: 今日は、占有者の善意・悪意について考えてみましょう。占有者については、占有の態様等に関して、どのような推定がされますか。
学生:ア 占有者は、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と占有をするものと推定されますが、占有者が善意であることは推定されません。
教授: 占有物から生ずる果実の収取について考えてみましょう。悪意の占有者は、果実の収取を怠った場合には、その果実の代価を償還する義務を負いますか。
学生:イ 収取を怠った果実の代価を償還する義務を負いません。
教授: 占有物が占有者の責めに帰すべき事由によって滅失し、又は損傷したときにおける占有者の損害賠償の範囲について考えてみましょう。所有の意思のない善意の占有者は、どの範囲で賠償する義務を負いますか。
学生:ウ 損害の全部の賠償をする義務を負います。
教授: 善意の占有者が本権の訴えにおいて敗訴したときは、いつから悪意の占有者とみなされますか。
学生:エ 占有を始めた時にさかのぼって悪意の占有者とみなされます。
教授: 相続が発生した場合の取得時効についても考えてみましょう。相続人である占有者は、その選択に従い、被相続人の占有に自己の占有を併せて主張することもできます。では、占有を始めた時に悪意であった相続人が占有を始めた時に善意であった被相続人を相続した場合において、その相続人が被相続人の占有を併せて主張するときは、取得時効の要件としての占有者の善意・悪意は、どのように判定されますか。
学生:オ 被相続人の占有を併せて主張する場合には、相続人が占有を始めた時に悪意であっても、善意と判定されます。
※商法の適用は考慮しないものとして、解答してください。
教授: 今日は、占有者の善意・悪意について考えてみましょう。占有者については、占有の態様等に関して、どのような推定がされますか。
学生:ア 占有者は、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と占有をするものと推定されますが、占有者が善意であることは推定されません。
教授: 占有物から生ずる果実の収取について考えてみましょう。悪意の占有者は、果実の収取を怠った場合には、その果実の代価を償還する義務を負いますか。
学生:イ 収取を怠った果実の代価を償還する義務を負いません。
教授: 占有物が占有者の責めに帰すべき事由によって滅失し、又は損傷したときにおける占有者の損害賠償の範囲について考えてみましょう。所有の意思のない善意の占有者は、どの範囲で賠償する義務を負いますか。
学生:ウ 損害の全部の賠償をする義務を負います。
教授: 善意の占有者が本権の訴えにおいて敗訴したときは、いつから悪意の占有者とみなされますか。
学生:エ 占有を始めた時にさかのぼって悪意の占有者とみなされます。
教授: 相続が発生した場合の取得時効についても考えてみましょう。相続人である占有者は、その選択に従い、被相続人の占有に自己の占有を併せて主張することもできます。では、占有を始めた時に悪意であった相続人が占有を始めた時に善意であった被相続人を相続した場合において、その相続人が被相続人の占有を併せて主張するときは、取得時効の要件としての占有者の善意・悪意は、どのように判定されますか。
学生:オ 被相続人の占有を併せて主張する場合には、相続人が占有を始めた時に悪意であっても、善意と判定されます。
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問題
司法書士試験 令和6年度 問7(午前の部 問7) (訂正依頼・報告はこちら)
次の対話は、占有に関する教授と学生との対話である。教授の質問に対する次のアからオまでの学生の解答のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
※商法の適用は考慮しないものとして、解答してください。
教授: 今日は、占有者の善意・悪意について考えてみましょう。占有者については、占有の態様等に関して、どのような推定がされますか。
学生:ア 占有者は、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と占有をするものと推定されますが、占有者が善意であることは推定されません。
教授: 占有物から生ずる果実の収取について考えてみましょう。悪意の占有者は、果実の収取を怠った場合には、その果実の代価を償還する義務を負いますか。
学生:イ 収取を怠った果実の代価を償還する義務を負いません。
教授: 占有物が占有者の責めに帰すべき事由によって滅失し、又は損傷したときにおける占有者の損害賠償の範囲について考えてみましょう。所有の意思のない善意の占有者は、どの範囲で賠償する義務を負いますか。
学生:ウ 損害の全部の賠償をする義務を負います。
教授: 善意の占有者が本権の訴えにおいて敗訴したときは、いつから悪意の占有者とみなされますか。
学生:エ 占有を始めた時にさかのぼって悪意の占有者とみなされます。
教授: 相続が発生した場合の取得時効についても考えてみましょう。相続人である占有者は、その選択に従い、被相続人の占有に自己の占有を併せて主張することもできます。では、占有を始めた時に悪意であった相続人が占有を始めた時に善意であった被相続人を相続した場合において、その相続人が被相続人の占有を併せて主張するときは、取得時効の要件としての占有者の善意・悪意は、どのように判定されますか。
学生:オ 被相続人の占有を併せて主張する場合には、相続人が占有を始めた時に悪意であっても、善意と判定されます。
※商法の適用は考慮しないものとして、解答してください。
教授: 今日は、占有者の善意・悪意について考えてみましょう。占有者については、占有の態様等に関して、どのような推定がされますか。
学生:ア 占有者は、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と占有をするものと推定されますが、占有者が善意であることは推定されません。
教授: 占有物から生ずる果実の収取について考えてみましょう。悪意の占有者は、果実の収取を怠った場合には、その果実の代価を償還する義務を負いますか。
学生:イ 収取を怠った果実の代価を償還する義務を負いません。
教授: 占有物が占有者の責めに帰すべき事由によって滅失し、又は損傷したときにおける占有者の損害賠償の範囲について考えてみましょう。所有の意思のない善意の占有者は、どの範囲で賠償する義務を負いますか。
学生:ウ 損害の全部の賠償をする義務を負います。
教授: 善意の占有者が本権の訴えにおいて敗訴したときは、いつから悪意の占有者とみなされますか。
学生:エ 占有を始めた時にさかのぼって悪意の占有者とみなされます。
教授: 相続が発生した場合の取得時効についても考えてみましょう。相続人である占有者は、その選択に従い、被相続人の占有に自己の占有を併せて主張することもできます。では、占有を始めた時に悪意であった相続人が占有を始めた時に善意であった被相続人を相続した場合において、その相続人が被相続人の占有を併せて主張するときは、取得時効の要件としての占有者の善意・悪意は、どのように判定されますか。
学生:オ 被相続人の占有を併せて主張する場合には、相続人が占有を始めた時に悪意であっても、善意と判定されます。
- アイ
- アエ
- イウ
- ウオ
- エオ
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この過去問の解説 (1件)
01
この問題では、占有に関する学生の解答のうち、判例の趣旨に照らして正しい記述の組合せを選びます。
ア.「占有者は、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と占有をするものと推定されるが、善意であることは推定されない」とあります。
しかし民法第186条1項では、「占有者は所有の意思をもって、平穏かつ公然と占有するものと推定する」とあるだけで、「善意の推定はされない」とは明示されていません。判例では、占有者の善意が推定される場合もあるとされており、この記述は不正確です。
したがって、この記述は誤りです。
イ.「悪意の占有者は、収取を怠った果実の代価を償還する義務を負わない」とあります。
しかし、民法第189条2項によれば、悪意の占有者は、果実の収取を怠った場合でも、その代価を償還する義務を負います。
この記述は誤りです。
ウ.「所有の意思のない善意の占有者は、損害の全部の賠償をする義務を負う」とあります。
民法第190条では、所有の意思のない善意の占有者は、通常、自己の過失による損害のみ賠償義務を負うとされるが、判例では所有の意思のない善意の占有者でも、滅失や損傷については損害の全部を賠償する義務を負うことが認められている。
この記述は正しいです。
エ.「善意の占有者が本権の訴えで敗訴した場合、占有開始時にさかのぼって悪意の占有者とみなされる」とあります。
民法第188条では、敗訴した時点から悪意の占有者とみなされるとされており、占有開始時にさかのぼることはありません。
この記述は誤りです。
オ.「占有を始めた時に悪意であった相続人が、善意であった被相続人を相続した場合、占有を併せて主張すれば善意と判定される」とあります。判例(最判昭和42年5月19日)では、相続による占有の承継では、相続人が被相続人の占有を併せて主張する場合、被相続人が善意であれば、相続人も善意とみなされるとされています。
この記述は正しいです。
以下のポイントを押さえておきましょう。
・占有者の推定に関する記述は慎重に確認する必要があります。
・所有の意思のない善意の占有者でも、損害の全部を賠償する義務を負います。
・相続による占有の承継では、被相続人の善意・悪意が影響します。
・悪意の占有者は、収取を怠った果実の代価を支払う義務があります。
・本権訴訟で敗訴した場合、悪意の占有者とみなされるのは敗訴時点からです。
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