司法書士 過去問
令和6年度
問26 (午前の部 問26)
問題文
毀棄及び隠匿の罪に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
ア Aは、Bの住居の玄関ドアを金属バットで叩いて凹損(おうそん)させた。同玄関ドアは、住居の玄関ドアとして外壁と接続し、外界との遮断、防犯、防風、防音等の重要な役割を果たしていたが、工具を使用すれば損壊せずに取り外すことが可能であった。この場合、Aには、建造物損壊罪が成立する。
イ Aは、抵当権の実行による競売を延期させようと考え、裁判所から競売事件の記録を持ち出してこれを隠匿したため、裁判所が一時的に競売を実施することができなくなった。この場合、Aには、公用文書等毀棄罪は成立しない。
ウ Aは、公衆便所の外壁にラッカースプレーで落書きをし、その結果、公衆便所の美観は著しく汚損され、原状回復に相当な困難が生じた。この場合、Aには、建造物損壊罪は成立しない。
エ Aは、現行犯人として逮捕され、警察署において、司法警察員から弁解録取書を読み聞かせられた際、同弁解録取書に署名する前に、これをひったくり、両手で破った。この場合、Aには、公用文書等毀棄罪が成立する。
オ Aは、A所有の甲土地とB所有の乙土地との境界に境界標として設置された有刺鉄線張りのB所有の丸太をのこぎりで切り倒し、境界標を壊したが、その境界は認識することが可能であった。この場合、Aには、境界損壊罪が成立する。
ア Aは、Bの住居の玄関ドアを金属バットで叩いて凹損(おうそん)させた。同玄関ドアは、住居の玄関ドアとして外壁と接続し、外界との遮断、防犯、防風、防音等の重要な役割を果たしていたが、工具を使用すれば損壊せずに取り外すことが可能であった。この場合、Aには、建造物損壊罪が成立する。
イ Aは、抵当権の実行による競売を延期させようと考え、裁判所から競売事件の記録を持ち出してこれを隠匿したため、裁判所が一時的に競売を実施することができなくなった。この場合、Aには、公用文書等毀棄罪は成立しない。
ウ Aは、公衆便所の外壁にラッカースプレーで落書きをし、その結果、公衆便所の美観は著しく汚損され、原状回復に相当な困難が生じた。この場合、Aには、建造物損壊罪は成立しない。
エ Aは、現行犯人として逮捕され、警察署において、司法警察員から弁解録取書を読み聞かせられた際、同弁解録取書に署名する前に、これをひったくり、両手で破った。この場合、Aには、公用文書等毀棄罪が成立する。
オ Aは、A所有の甲土地とB所有の乙土地との境界に境界標として設置された有刺鉄線張りのB所有の丸太をのこぎりで切り倒し、境界標を壊したが、その境界は認識することが可能であった。この場合、Aには、境界損壊罪が成立する。
このページは閲覧用ページです。
履歴を残すには、 「新しく出題する(ここをクリック)」 をご利用ください。
問題
司法書士試験 令和6年度 問26(午前の部 問26) (訂正依頼・報告はこちら)
毀棄及び隠匿の罪に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
ア Aは、Bの住居の玄関ドアを金属バットで叩いて凹損(おうそん)させた。同玄関ドアは、住居の玄関ドアとして外壁と接続し、外界との遮断、防犯、防風、防音等の重要な役割を果たしていたが、工具を使用すれば損壊せずに取り外すことが可能であった。この場合、Aには、建造物損壊罪が成立する。
イ Aは、抵当権の実行による競売を延期させようと考え、裁判所から競売事件の記録を持ち出してこれを隠匿したため、裁判所が一時的に競売を実施することができなくなった。この場合、Aには、公用文書等毀棄罪は成立しない。
ウ Aは、公衆便所の外壁にラッカースプレーで落書きをし、その結果、公衆便所の美観は著しく汚損され、原状回復に相当な困難が生じた。この場合、Aには、建造物損壊罪は成立しない。
エ Aは、現行犯人として逮捕され、警察署において、司法警察員から弁解録取書を読み聞かせられた際、同弁解録取書に署名する前に、これをひったくり、両手で破った。この場合、Aには、公用文書等毀棄罪が成立する。
オ Aは、A所有の甲土地とB所有の乙土地との境界に境界標として設置された有刺鉄線張りのB所有の丸太をのこぎりで切り倒し、境界標を壊したが、その境界は認識することが可能であった。この場合、Aには、境界損壊罪が成立する。
ア Aは、Bの住居の玄関ドアを金属バットで叩いて凹損(おうそん)させた。同玄関ドアは、住居の玄関ドアとして外壁と接続し、外界との遮断、防犯、防風、防音等の重要な役割を果たしていたが、工具を使用すれば損壊せずに取り外すことが可能であった。この場合、Aには、建造物損壊罪が成立する。
イ Aは、抵当権の実行による競売を延期させようと考え、裁判所から競売事件の記録を持ち出してこれを隠匿したため、裁判所が一時的に競売を実施することができなくなった。この場合、Aには、公用文書等毀棄罪は成立しない。
ウ Aは、公衆便所の外壁にラッカースプレーで落書きをし、その結果、公衆便所の美観は著しく汚損され、原状回復に相当な困難が生じた。この場合、Aには、建造物損壊罪は成立しない。
エ Aは、現行犯人として逮捕され、警察署において、司法警察員から弁解録取書を読み聞かせられた際、同弁解録取書に署名する前に、これをひったくり、両手で破った。この場合、Aには、公用文書等毀棄罪が成立する。
オ Aは、A所有の甲土地とB所有の乙土地との境界に境界標として設置された有刺鉄線張りのB所有の丸太をのこぎりで切り倒し、境界標を壊したが、その境界は認識することが可能であった。この場合、Aには、境界損壊罪が成立する。
- アエ
- アオ
- イウ
- イエ
- ウオ
正解!素晴らしいです
残念...
この過去問の解説 (2件)
01
毀棄及び隠匿の罪に関する問題は数年に一度出題されており、合格を見据える上では避けて通ることが出来ません。
解説をしっかり理解しましょう。
各選択肢については以下の通りです。
ア: 建造物損壊罪における要件として「建造物性」があります。建造物性とは、家屋その他これに類する建築物のほか建造物に取り付けられ壊さなければ取り外しができないものを言います。
本選択肢では、「工具を使用すれば損壊せずに取り外すことが可能」とありますので、建造物性は否定され器物損壊罪が成立します。
エ: 公用文書等毀棄罪は公務の用に供する文書を毀棄させることで成立します。そして文書には偽造文書や未完成文書を含みます。
本選択肢では、署名する前とありますので未完成文書に該当し、弁解録取書は公務のように供されますので、公用文書等毀棄罪の成立します。
オ: 境界損壊罪は、土地の境界を示すために設けられた標識や工作物等を損壊又は移動させることで、土地の境界を認識し得なくすることで成立します。
本選択肢では、「その境界は認識することが可能」であるため、境界損壊罪は成立せず器物損壊罪が成立するにとどまります。
イ: 公用文書等毀棄罪における「毀棄」には本来の効用を失わせる一切の行為をいい、文書を持ち出して隠匿し一時その利用を不能にすることを含みます。
本選択肢では、競売事件の記録を持ち出すことで一時的に競売の実施を困難にさせていますので、「毀棄」の要件を充足し公用文書等毀棄罪が成立します。
ウ: 建造物損壊罪における「損壊」とは、実質を毀損する場合のほかその使用価値を減少させることを言います。
本選択肢では、落書きにより公衆便所の原状回復を相当困難にさせておりますので「損壊」の要件を充足し、建造物損壊罪は成立します。
解説は他選択肢に記載しておりますので、そちらを参照してください。
解説は他選択肢に記載しておりますので、そちらを参照してください。
毀棄及び隠匿の罪に関する問題では、建造物損壊罪と器物損壊罪の区別などが主に出題されます。建造物性や損壊・毀棄の意味するところをしっかり理解してください。
参考になった数4
この解説の修正を提案する
02
毀棄及び隠匿の罪に関する判断では、対象となる物の性質や社会的機能、そして行為の態様が重視されます。建造物や公用文書、境界標など、それぞれの保護法益を理解したうえで、行為がその効用や機能を侵害しているかどうかを基準に正誤を見極めることが求められます。
ア
玄関ドアは建造物の一部として、その防犯や防音などの役割から、取り外し可能であっても建造物の構成部分と評価されるとされています。
判例(最決昭61・6・30)では、容易に取り外せるものであっても、その機能や接合状況によって建造物の一部とみなされると判示しています。この場合、ドアは外壁と接続し住居の機能に密接に関わっており、損壊行為により建造物損壊罪が成立します。
本記述は正しいです。
イ
裁判所が保管する競売記録は「公用文書」にあたり、それを持ち出して隠した行為は「隠匿」と評価されます。
判例(大判明治45・4・8)は、公用文書の毀棄だけでなく、一時的にその機能を奪う「隠匿」も処罰対象に含まれると解しています。
本記述では「成立しない」としており、誤りです。
ウ
建造物損壊罪における「損壊」は、単に物理的な破壊に限らず、建造物としての効用を害すれば足りるとされています。
落書きによって美観を著しく損ね、原状回復が困難な場合は、その効用が侵害されたといえます(最決平8・7・12)。
このような行為も建造物損壊罪に該当しうるため、本記述は誤りです。
エ
捜査機関によって作成された弁解録取書は公務員が職務上作成する文書であり、公用文書に該当します。
記録媒体として成立している段階で、公用文書としての法的保護が及ぶため、署名前であっても、公用文書等毀棄罪が成立するとされた判例(最決昭45・11・10)があります。
本記述は正しいです。
オ
境界損壊罪が成立するには、境界標が実際に境界を示す役割を果たしていることが必要です。
判例では、境界が明確に分かる状況では、境界標の損壊はこの罪にあたらないとされています。
記述では、境界が認識可能であったにもかかわらず成立するとしており、判例の考え方とずれがあります。
本記述は誤りです。
判例は、物理的に壊しているかだけではなく、その対象物が果たしている役割や社会的価値をもとに、罪の成立を判断しています。建造物や文書に加え、境界標についても、見た目の破壊だけでなく、実質的に保護に値するかどうかが問われるため、それぞれの趣旨に沿った理解が必要となります。
参考になった数2
この解説の修正を提案する
前の問題(問25)へ
令和6年度 問題一覧
次の問題(問27)へ