問題
Aに認められている症状として、正しいものを2つ選べ。
正解は2、5です。
各選択肢については、以下の通りです。
1→強迫行為とは、不安や苦痛を予防、中和するために反復的に行われる行為のことです。
何度も手を洗ったり、施錠できているか何度も確認したりする行為などがあります。
事例には、そのような行為の記載はありません。
よって選択肢は、誤りです。
2→常同行動とは、いつも同じ行動をするという症状のことです。
「天気が悪くても日課の散歩は毎日欠かさず、いつも同じコースを歩くようになった。」の部分が当てはまります。
よって選択肢は、正しいです。
3→離人症状とは、現実感や生活実感の喪失などの症状のことです。
事例には、そのような行為の記載はありません。
よって選択肢は、誤りです。
4→見当識障害とは、自分の置かれている場所や時間などが分からなくなることです。
事例には、そのような行為の記載はありません。
よって選択肢は、誤りです。
5→抑制の欠如とは、理性的、抑制的な行動ができなくなることです。
「2年位前から非常に短気になり、気に入らないことがあると怒鳴り散らすようになった。」の部分が当てはまります。
よって選択肢は、正しいです。
正解は2と5です。
認知症には、大きく分けて以下の4種類があります。
「アルツハイマー型認知症」:物の名称や自分のしたことを忘れてしまう“物忘れ”が代表的な症状です。症状は緩やかに進行し、新しいことを覚えられない記憶障害や、今自分がいる場所や時間感覚が分からなくなる見当識障害などがみられます。認知症の60~70%はこの型の認知症と言われています。
「レビー小体型認知症」:他の型の認知症と違い、幻視の症状がみられるのが特徴です。初期には気分の落ち込みが生じやすく、パーキンソン症状が生じやすいことも特徴的です。
「脳血管性認知症」:脳出血や脳腫瘍等で脳の血管が詰まって生じることで発症すると言われています。症状の進行は段階的で、1日や時間によって波があり、認知機能がまだらに低下することから「まだら認知症」とも呼ばれます。認知症の20%はこの型の認知症です。
「前頭側頭型認知症」:前頭側頭型認知症は認知症の1%程度であり、唯一、難病指定された症状です。初期症状としては、人格の変化や行動の常同行動(同じ行動や言動を繰り返す)が特徴的に現れ、今までとは180度違う態度や、堂々とした万引き行為、興味関心の著しい低下などがみられます。人格や感情、計画、実行力などを司る前頭葉と側頭葉が委縮することが原因です。症状の進行はゆっくりめです。
1.→強迫行為は高齢者がなりやすい症状ですが、これは認知症ではなくても起こりうることです。ですので、1は誤りです。
2.→常同行動は、この事例の「天気が悪くても日課の散歩は毎日欠かさず、いつも同じコースを歩くようになった」というところにみられるため、Aに認められている症状として当てはまります。よって、2は正しいです。
3.→離人症状とは、「現実感が薄く、身体感覚が麻痺し、今を感じられなくなっている」症状です。解離性障害 の一症状として見られるほか、うつ病、不安障害、パニック障害、強迫性障害、境界性人格障害、統合失調症でもみられます。この事例では離人症状はみられませんので、3は誤りです。
4.→見当識障害は認知症の中核症状の1つで、「時間や季節、今いる場所、人がわからなくなる」といった障害です。この事例は認知症でも前頭側頭型認知症と思われるため、見当識障害はそれほど顕著には出てきません。よって、4は誤りです。
5.→抑制の欠如は、「2年くらい前から非常に短気になり、気に入らないことがあると怒鳴り散らすようになった」「散歩中に信号を無視することも多くなり、危険であるため制止すると興奮するようになった」というように、この事例では顕著にみられるようになってきています。よって、5は正しいです。