問題
Aの心理状態の説明として、不適切なものを1つ選べ。
正答は4です。
死別などによって大切な人を失うと、大きな悲しみ(悲嘆)を感じます。悲嘆は正常な反応であり、誰もがその状態変化を歩みます。このプロセスを「モーニングワーク(喪の作業)」と呼びます。一般的には、以下のような経過をたどります。
①ショック期(大きなショックであり受け止めきれない状態、茫然として無感覚の状態)
②喪失期(死を現実として受け止めようとするが受け止め切れない段階、怒りや自責感などの強い感情が生じる)
③閉じこもり期(死を受け止めることができるようになる半面、絶望感や空虚感が生じ無気力となり、引きこもりのような状態にもなる)
④再生期(死を認められるようになり、新たな生活・社会関係を築いていく)
1 「自分のこれまでの人生は無駄だった、もう生きていてもしょうがない」という発言からも絶望感が窺えます。喪の作業における閉じこもり期に見られる状態です。
2 悲嘆により、認知的反応が生じることもあります。「既にやり終えたことを忘れてしまうことも少しずつ生じてきている」との記載から、認知機能の低下が窺えます。
3 レミニセンスバンプとは、人が昔のことを思い出す場合は10代後半から30代にあった出来事をよく思い出すという現象のことを指し、「20歳から30歳代だった頃の話を突然し始めたり」という記述と合致します。
4 補償を伴う選択的最適化とは、加齢に伴い喪失した機能・能力を補うために、以前よりも狭い領域や特定の目標に絞り(選択)、それに対する機能低下を補う新たな手段や方法を獲得し(補償)、適応の機会を増やす(最適化)のことを表します。事例においては、該当するようなAの言動が記載されていないため、不適切なものとして挙げられます。
5 上述した「モーニングワーク」の段階でいえば、②喪失期から③閉じこもり期に当たるものと窺えます。ここから④再生期に至るまで回復していくには時間を要するものであると言われており、受容過程の初期段階とも言えます。