公認心理師の過去問
第2回(2019年)
午前 問71
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問題
公認心理師試験 第2回(2019年) 午前 問71 (訂正依頼・報告はこちら)
79歳の男性A。3人の子どもが独立した後、Aは妻と二人暮らしだったが、1年前にその妻に先立たれた。妻の死後しばらくは、なぜ丈夫だった妻が自分よりも早く死んだのかという思いが強く、怒りのような感情を覚えることが多かったが、最近はむしろ抑うつ感情が目立つようになってきている。近くに住む娘に、20歳から30歳代だった頃の話を突然し始めたり、その一方で「自分のこれまでの人生は無駄だった、もう生きていてもしょうがない」というような発言が増えてきたりしている。また、本人は自覚していないが、既にやり終えたことを忘れてしまうことも少しずつ生じてきている。
Aの心理状態の説明として、不適切なものを1つ選べ。
Aの心理状態の説明として、不適切なものを1つ選べ。
- 絶望
- 認知機能の低下
- レミニセンスバンプ
- 補償を伴う選択的最適化
- 妻の死の受容過程の初期段階
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この過去問の解説 (3件)
01
正答は4です。
死別などによって大切な人を失うと、大きな悲しみ(悲嘆)を感じます。悲嘆は正常な反応であり、誰もがその状態変化を歩みます。このプロセスを「モーニングワーク(喪の作業)」と呼びます。一般的には、以下のような経過をたどります。
①ショック期(大きなショックであり受け止めきれない状態、茫然として無感覚の状態)
②喪失期(死を現実として受け止めようとするが受け止め切れない段階、怒りや自責感などの強い感情が生じる)
③閉じこもり期(死を受け止めることができるようになる半面、絶望感や空虚感が生じ無気力となり、引きこもりのような状態にもなる)
④再生期(死を認められるようになり、新たな生活・社会関係を築いていく)
1 「自分のこれまでの人生は無駄だった、もう生きていてもしょうがない」という発言からも絶望感が窺えます。喪の作業における閉じこもり期に見られる状態です。
2 悲嘆により、認知的反応が生じることもあります。「既にやり終えたことを忘れてしまうことも少しずつ生じてきている」との記載から、認知機能の低下が窺えます。
3 レミニセンスバンプとは、人が昔のことを思い出す場合は10代後半から30代にあった出来事をよく思い出すという現象のことを指し、「20歳から30歳代だった頃の話を突然し始めたり」という記述と合致します。
4 補償を伴う選択的最適化とは、加齢に伴い喪失した機能・能力を補うために、以前よりも狭い領域や特定の目標に絞り(選択)、それに対する機能低下を補う新たな手段や方法を獲得し(補償)、適応の機会を増やす(最適化)のことを表します。事例においては、該当するようなAの言動が記載されていないため、不適切なものとして挙げられます。
5 上述した「モーニングワーク」の段階でいえば、②喪失期から③閉じこもり期に当たるものと窺えます。ここから④再生期に至るまで回復していくには時間を要するものであると言われており、受容過程の初期段階とも言えます。
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02
1:「もう生きていてもしょうがない」といった発言から、Aが絶望していることが読み取れます。
2:既にやり終えたことを忘れるという記述から、認知機能の低下が認められます。
3:レミニセンスバンプは60代以降の人によく見られる現象で、10代~30代くらいのことをよく思い出すことを指します。20歳から30歳代だった頃の話を~とありますから、本事例においてレミニセンスバンプが生じていると考えられます。
4:補償を伴う選択的最適化はSOC理論と呼ばれ、Baltesによって提唱されました。人は加齢に伴い、今まで出来ていたことが出来なくなりますが、そこでまだ残っている能力を活用し、今の能力にふさわしい最適な生活を送る、これがSOC理論です。本事例においては、該当する記述は見られません。
5:グリーフワークに関する選択肢です。人は愛する者を失うと、ショック期→喪失期→閉じこもり期→再生期からなるグリーフワークを行うと言われています。期間は個人差がありますが、ショック期から喪失期までは1~2週間、全体としては1~2年かかると言われています。
本事例にみられる怒りや抑うつは喪失期~閉じこもり期に見られる状態です。従って、グリーフワークの初期段階に該当すると言えます。
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03
以下に解説します。
Aの発言から、絶望感は明らかです。
Aは既にやり終えたことを忘れてしまうことがあり、認知機能の低下が見られます。
老年期に過去の人生の出来事を思い出す傾向が強くなることを指し、Aの「20歳から30歳代の話を突然し始める」という行動に該当します。
不適切です。
これは、限られた能力を有効活用するために特定の目標に集中し、達成できなかった目標や機能の喪失を補償する行動をとる理論です。しかし、Aの場合、「自分の人生は無駄だった、もう生きていてもしょうがない」という発言や抑うつ感が目立ち、補償を意図した選択的行動は見られません。
妻の死後しばらくは「なぜ自分より早く死んだのか」と怒りを感じていたことから、受容過程の初期段階にいると考えられます。
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