問題
Aの行動の説明として、適切なものを2つ選べ。
正答は2と5です。
1 素行障害(行為障害)とは、社会で決められたルールを守らなかったり、他者の人権を侵害するようなことをしたり、反社会的な行動を繰り返し起こすことを表します。この事例からは、Aの言動が反社会的とは言えないため、誤りとなります。
2 解離とは、(本来統合されている)意識や記憶などの統合が失われている状態を指します。メカニズムとしては、ストレスや心的外傷などのつらい体験を収めておくことができず、体験の記憶やその感情などを切り離すといった、自身へのダメージを避けるための防衛反応であると考えられます。解離の程度や頻度が大きく、日常の生活に支障をきたすような状態を解離性障害といいます。
Aのぼんやりとしたり、急に苛立ちかんしゃくを起こしたりといったまとまりが失われている状態は、交通事故という大きな心的外傷を伴う体験によるダメージから、自身を守るための防衛反応であると考えることができるため、適切と言えます。
3 反応性アタッチメント障害(反応性愛着障害)とは、通常見られない不安定で複雑な言動を示す愛着障害のひとつです。警戒心や恐怖心が強く人に近づかない、周囲からの働きかけに反応しない、自分を制御できずに攻撃的になるなどが挙げられます。これらは不安定で不適切な養育によって生じるものとされており、事例においてはそうした記載は見当たらないため、適切であるとは言えません。
4 トラウマティック・ボンディングとは、DVの場面で見られることが多い状態であり、トラウマが起きている関係の中で、相手に恐怖を感じる半面、相手と離れたくない・離れられないと感じてしまう特殊な心理です。暴力を振るわれた後に優しくされると相手の優しさを強く感じ、そうした恐怖と緩和が交互に繰り返されることで、ここから離れられないと感じることがあります。事例において、そういった関係性が窺える記述は見られないため、誤りとなります。
5 トラウマ体験を受けた子どもが、体験したことが遊びの中に再現することがあり、ポストトラウマティック・プレイと呼びます。「ぬいぐるみを叩いたり、壁に打ち付けたりする」という行為もポストトラウマティック・プレイと考えられることができるため、正答です。
なお、子どもは体験したことを言葉にすることが難しいため、こうした遊びの中で表現することが多いとされており、プレイセラピーにより、トラウマ体験によるつらい感情を、遊びを通して開放していくアプローチもあります。