公認心理師の過去問
第2回(2019年)
午前 問77
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問題
公認心理師試験 第2回(2019年) 午前 問77 (訂正依頼・報告はこちら)
12歳の女児A。祖父Bと散歩中に自動車にはねられた。Bは全身を打撲し、救命救急センターの集中治療室で治療を受けているが、意識障害が持続している。Aは下肢骨折により整形外科病棟に入院した。入院後、Aは夜間あまり眠れず、夜驚がある。日中は、ぼんやりとした状態がみられたり、急に苛立ち、理由もなくかんしゃくを起こしたりする。両親が自宅から持ってきたAの好きなぬいぐるみを叩いたり、壁に打ち付けたりする。
Aの行動の説明として、適切なものを2つ選べ。
Aの行動の説明として、適切なものを2つ選べ。
- 素行障害
- 解離性障害
- 反応性アタッチメント障害
- トラウマティック・ボンディング
- ポストトラウマティック・プレイ
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この過去問の解説 (3件)
01
正答は2と5です。
1 素行障害(行為障害)とは、社会で決められたルールを守らなかったり、他者の人権を侵害するようなことをしたり、反社会的な行動を繰り返し起こすことを表します。この事例からは、Aの言動が反社会的とは言えないため、誤りとなります。
2 解離とは、(本来統合されている)意識や記憶などの統合が失われている状態を指します。メカニズムとしては、ストレスや心的外傷などのつらい体験を収めておくことができず、体験の記憶やその感情などを切り離すといった、自身へのダメージを避けるための防衛反応であると考えられます。解離の程度や頻度が大きく、日常の生活に支障をきたすような状態を解離性障害といいます。
Aのぼんやりとしたり、急に苛立ちかんしゃくを起こしたりといったまとまりが失われている状態は、交通事故という大きな心的外傷を伴う体験によるダメージから、自身を守るための防衛反応であると考えることができるため、適切と言えます。
3 反応性アタッチメント障害(反応性愛着障害)とは、通常見られない不安定で複雑な言動を示す愛着障害のひとつです。警戒心や恐怖心が強く人に近づかない、周囲からの働きかけに反応しない、自分を制御できずに攻撃的になるなどが挙げられます。これらは不安定で不適切な養育によって生じるものとされており、事例においてはそうした記載は見当たらないため、適切であるとは言えません。
4 トラウマティック・ボンディングとは、DVの場面で見られることが多い状態であり、トラウマが起きている関係の中で、相手に恐怖を感じる半面、相手と離れたくない・離れられないと感じてしまう特殊な心理です。暴力を振るわれた後に優しくされると相手の優しさを強く感じ、そうした恐怖と緩和が交互に繰り返されることで、ここから離れられないと感じることがあります。事例において、そういった関係性が窺える記述は見られないため、誤りとなります。
5 トラウマ体験を受けた子どもが、体験したことが遊びの中に再現することがあり、ポストトラウマティック・プレイと呼びます。「ぬいぐるみを叩いたり、壁に打ち付けたりする」という行為もポストトラウマティック・プレイと考えられることができるため、正答です。
なお、子どもは体験したことを言葉にすることが難しいため、こうした遊びの中で表現することが多いとされており、プレイセラピーにより、トラウマ体験によるつらい感情を、遊びを通して開放していくアプローチもあります。
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02
1:素行障害は、社会で決められたルールを守らず、反社会的な行動を起こし続けてしまう疾患で、ADHDや反抗挑戦性障害と合併しやすいとされています。
Aの行動に反社会的な要素は認められませんので、不適切と言えます。
2:解離とは、意識や記憶、自我同一性など、通常は統合されている機能が破綻し、個人の連続性が失われる状態を指し、この解離を主症状とする病態を解離性障害と言います。下位カテゴリーとして、解離性健忘や離人症、解離性同一性障害、解離性遁走があります。
背景にあるものは、事例のようなトラウマ的な出来事で、子どもはその経験から自分を守るために、その時の知覚や記憶を自分から切り離すわけです。その結果として、ぼんやりしたり、気分や性格が急に変化したり、重要な出来事を覚えていなかったりといった状態を呈することがあります。よって2は適切と言えます。
3:反応性アタッチメント障害とは、人に対する過度な恐れや警戒を特徴とするもので、しばしば虐待と関連付けて論じられる障害です。
本事例からは、人に対する警戒などはうかがえません。また、反応性アタッチメント障害は5歳までに発症するとされており、本事例とはやはり馴染みません。
4:トラウマティック・ボンディングは、トラウマが起こっている関係性の中で発生する特殊な結びつきのことを言います。DVとの関連で論じられることが多く、例えば夫から暴力を振るわれている妻がなかなか別れないのは、暴力の後に向けられる優しさに愛情を感じているから、という場合があります。これが特殊な結びつきです。
関係性という点に着目すれば、本事例がそれに該当しないと判断できます。よって4は不適切です。
5:ポストトラウマティック・プレイは、トラウマを再現するような遊びのことで、PTSDとの関連で論じられることが一般的です。具体的には地震ごっこや津波ごっこ、お葬式ごっこなどが挙げられます。
本事例におけるぬいぐるみを叩く、壁に打ち付けるといった行動も、事故の後と考えるとこれに該当すると考えられますので、5は適切と言えます。
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03
以下に解説します。
Aの行動は衝動的で苛立ちを見せるものの、素行障害は主に反社会的行動や規則の違反が中心であり、Aのトラウマ体験に基づく反応とは異なります。
適切です。
Aの状態において、夜間の不眠やぼんやりとした状態は、解離反応の一部として現れることがあります。特にトラウマ体験後に、感情的な痛みやストレスから距離を置くための解離が生じることがあります。
これは主に養育環境の不全や愛着の欠如に起因するもので、Aの状況は祖父との関係やトラウマ体験に起因するものであるため、該当しません。
これはトラウマを共有することによって生じる特異な愛着関係を指すもので、Aの行動や症状とは直接関係しません。
適切です。
これは、子どもがトラウマ体験を処理しようとする過程で、自らの経験を遊びや行動に反映させることを指します。Aが夜驚や苛立ちを示し、ぬいぐるみを叩く行動は、彼女がトラウマを抱えていることを示している可能性があります。
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