公認心理師の過去問
第2回(2019年)
午後 問144

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問題

公認心理師試験 第2回(2019年) 午後 問144 (訂正依頼・報告はこちら)

9歳の男児A、小学2年生。Aは実母と継父との三人暮らしであったが、ネグレクトと継父からの身体的虐待のため、児童相談所に一時保護された。入所当初は、いつもきょろきょろと周囲をうかがっていて落ち着かず、夜は悪夢でうなされることが多かった。入所1週間後の就寝時、男性指導員がAを居室に連れて行こうとして手を取ったところ、急に大声で叫び、周辺にあるものを放り投げ、頭を壁に打ち付け始めた。男性指導員はAに落ち着くよう促したが、なかなか行動が鎮まらなかった。しばらくして行動は止んだが、無表情となって、立ちすくんだままであった。声をかけるとようやく頷いた。
Aの行動の解釈として、最も適切なものを1つ選べ。
  • 男性指導員への試し行動
  • フラッシュバックによる混乱
  • 慣れない生活の場での情緒の混乱
  • 抑圧されていた攻撃的感情の表出
  • 反抗挑戦性障害にみられる権威者に対する反発

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この過去問の解説 (2件)

01

正解は2です。

Aの行動をまとめると、「いつもきょろきょろと周囲をうかがっていて落ち着かず」「悪夢を見てうなされる」「急に大声で叫び、周辺にあるものを放り投げ(混乱、パニック)」「頭を壁に打ち付け始めた(自傷)」「無表情となって、立ちすくんだまま(解離現象)」となります。

1.→「試し行動」とは、子どもが親・里親・教師などの保護者に対して、自分をどの程度まで受けとめてくれるのかを探るために、わざと困らせるような行動をとる ことです。
「無表情となって、立ちすくむ」という解離現象を起こしている状態を考えると、「わざと困らせる」は当てはまりません。よって1は不適切です。

2.→「フラッシュバック」とは、強いトラウマ体験(心的外傷)を受けた場合に、後になってその記憶が、突然かつ非常に鮮明に思い出されたり、夢に見たりする現象です 。
この事例の場合は、ネグレクトと身体的虐待を受けており、その記憶が頭の中でよみがえり、「壁に頭を打ちつける」ことによって肉体的な感覚を再体験していると考えられます。フラッシュバックの混乱と考えるのが自然なので、2は適切です。

3.→悪夢や「急に大声で叫び、周辺にあるものを放り投げ、頭を壁に打ち付け始めた」という行動が、慣れない生活の場での情緒の混乱というには混乱が大きすぎます。解離症状の出現もあるため、慣れない生活の場での情緒の混乱とは考えにくいです。よって、3は不適切です。

4.→攻撃的感情があるとすれば、おそらく「男性指導員がAを居室に連れて行こうとして手を取ったところ」急に攻撃的感情が表出されたというのは不自然な感じがしますし、児童相談所で他の児童に攻撃的感情が表出されたという記述もありません。また、悪夢をみることは攻撃的感情では説明がつかない部分です。よって、4は不適切です。

5.→反抗挑戦性障害とは、権威に対する反抗と怒りをもたらす行動障害です。このAの行動は、「声をかけるとようやく頷いた」というところから、男性指導員への反抗と怒りを表しているのではないとみることができます。また、反抗挑戦性障害は、発症してから6ヶ月が経過しないと診断がつきませんが、Aは児童相談所に入所してまだ1週間です。診断するには早いところもあります。よって、5は不適切です。

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02

【正解:2】

 ネグレクトと継父からの身体的虐待による一時保護ということ、そして、男性指導員がAの手を取ったということを合わせて考えると、“指導員に手を取られ、継父からの暴力を思い出した”と考えるのが妥当です。選択肢の中では2がそれに該当します。

1:試し行動とは、自分をどの程度まで受け止めてくれるのか探るために、わざと困らせるようなことをする行動のことです。本事例では行動の後に無表情となって立ちすくんでいますので、“わざと”という、明らかな意図を持つ試し行動とはマッチしません。

3:慣れない生活が原因であるならば、日常生活全般において事例のような行動が見られるはずです。しかし、普段は“きょろきょろとして落ち着かず、悪夢にうなされる”に留まっており、暴れまわる描写はありません。よって、生活の場全般ではなく、指導員に手を取られた場面に限定した反応と捉えるべきと考えられます。

4:抑圧された攻撃的感情が仮にあったとして、選択肢3同様、普段の生活にそういった様子が見られません。

5:反抗挑戦性障害は、10歳前後の子どもに見られる反抗的で挑戦的な行動パターンのことですが、診断にはこうした特徴が6か月以上持続する必要があります。

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