問題
「最近、Bが私の年金を勝手に持ち出して使ってしまうようになった。そのため生活費にも事欠いている。財布からお金が何度もなくなっているし、Bの帰りが遅くなった。Bは覚醒剤を使用しているのではないか。Bに恨まれるのが怖くて保護司に言えないでいる。Bを何とかしてくれないか」との相談であった。
公認心理師の対応として、最も適切なものを1つ選べ。
注:「高齢者虐待防止法」とは、「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」である。
正答は1です。
高齢者虐待防止法とは、家庭や介護施設における高齢者(65歳以上)への虐待の防止、虐待を受けた高齢者の保護、養護者への指導や助言などの支援を定めた法律であり、2006年に施行されています。
高齢者虐待には、
①身体的虐待
②介護・世話の放棄・放任(ネグレクト)
③心理的虐待
④性的虐待
⑤経済的虐待(金銭を無断で使用・処分すること、本人の希望する金銭の使用を理由なく制限すること等)
が含まれます。
発生する要因は様々ですが、高齢者の認知症による言動の混乱や身体的自立度の低さ、介護者の負担やストレス、介護疲れなどが挙げられます。
なお、この事例においては、BがAの年金を勝手に(同意なく)持ち出し、生活費にも事欠いている等の訴えがあることから、経済的虐待が疑われます。
1 高齢者虐待防止法第7条において、高齢者虐待を発見した場合は速やかに市町村に通報するように努める(努力義務)、高齢者の身体・生命に重大な危険が生じている場合には速やかに通報しなければならない(義務)と定められています。
経済的虐待のおそれがある場合、通報は少なくとも努力義務となっており、望ましい対応と考えられます。
2 事実確認や情報収集を行うことが大事ですが、高齢者虐待への対応における基本的な考え方としては、高齢者虐待による問題が深刻化する前に発見し、早期に支援・援助を行っていくことが重要とされています。そのため、高齢者虐待が疑われるとして通報する方が優先されると考えると、継続来所を促すことよりも(1)の方が適していると言えます。
3 高齢者虐待の相談・通報は、警察ではなく、各市町村の担当窓口となっているため、誤りとなります。
4・5 Bが覚醒剤使用により保護観察付執行猶予中の身分であることを鑑みると、金銭の持ち出しや帰宅が遅いことから、覚醒剤使用を疑うことは不自然ではありませんが、この2点のみでは可能性が高いとまでは言えないと考えられます(興奮状態に陥って異常行動が見られたり、幻覚・妄想などの病的症状が見られたりといった特徴的なエピソードが見られない)。そのため、まずは経済的虐待が疑われることへの対処を取る方が適していると考えられます。