公認心理師 過去問
第2回(2019年)
問148 (午後 問150)
問題文
25歳の女性A。Aは夫から暴力を受け、電話連絡や金銭使用を制限されて、配偶者暴力相談支援センターに逃げ込むが、すぐに夫のもとに戻り同居するということを何回も繰り返していた。今回も夫の暴力で腕を骨折し、同センターに保護された。Aは日中ぼんやりとし、名前を呼ばれても気づかないことがある。外出すると、自分の居場所が分からなくなる。夫から殴られる夢を見て眠れない、いらいらして周囲に当たり散らすなどの様子がみられる。その一方で、「夫は今頃反省している。これまで何度も暴力の後に優しくしてくれた」と言い、「夫のもとに戻る」と言い出すこともある。
Aの状況から考えられることとして、不適切なものを1つ選べ。
Aの状況から考えられることとして、不適切なものを1つ選べ。
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問題
公認心理師試験 第2回(2019年) 問148(午後 問150) (訂正依頼・報告はこちら)
25歳の女性A。Aは夫から暴力を受け、電話連絡や金銭使用を制限されて、配偶者暴力相談支援センターに逃げ込むが、すぐに夫のもとに戻り同居するということを何回も繰り返していた。今回も夫の暴力で腕を骨折し、同センターに保護された。Aは日中ぼんやりとし、名前を呼ばれても気づかないことがある。外出すると、自分の居場所が分からなくなる。夫から殴られる夢を見て眠れない、いらいらして周囲に当たり散らすなどの様子がみられる。その一方で、「夫は今頃反省している。これまで何度も暴力の後に優しくしてくれた」と言い、「夫のもとに戻る」と言い出すこともある。
Aの状況から考えられることとして、不適切なものを1つ選べ。
Aの状況から考えられることとして、不適切なものを1つ選べ。
- 夫との共依存関係がある。
- 夫婦は常に高い緊張関係にある。
- 心的外傷後ストレス障害<PTSD>が疑われる。
- Aは、夫の暴力を愛情表現の一つと認知している。
- ドゥルース・モデルと言われる「パワーとコントロール」の構造が見受けられる。
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この過去問の解説 (3件)
01
各選択肢については、以下の通りです。
1→暴力を受けつつも、夫を弁護し、夫のもとに戻りたいとの希望も口にしていることからも、共依存関係にあるといえます。
よって選択肢は、正しいです。
2→「これまで何度も暴力の後に優しくしてくれた」との発言があることから、優しい時期も見られています。
そのため、常に緊張状態とは言えません。
よって選択肢は、誤りです。
3→「Aは日中ぼんやりとし、名前を呼ばれても気づかないことがある。外出すると、自分の居場所が分からなくなる」などの症状があり、PTSDが疑われます。
よって選択肢は、正しいです。
4→「夫は今頃反省している。これまで何度も暴力の後に優しくしてくれた」などの発言があることから、暴力を愛情表現と認知していると考えられます。
よって選択肢は、正しいです。
5→ドゥルース・モデルとは、身体的な暴力だけでなく、経済的・精神的な暴力等によって、被害者を無力にさせ、コントロールしようとする状態のことです。
Aはこれまでも夫のもとに戻っていることからも、ドゥルース・モデルの状態にあるといえます。
よって選択肢は、正しいです。
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02
正答は2です。
1 共依存関係とは、特定の相手との関係に過剰に依存している(依存し合っている)状態を表しています。
これまで暴力などDVを受け続けているにもかかわらず、「夫は今頃反省している。これまで何度も暴力の後に優しくしてくれた」「夫のもとに戻る」など夫を見捨てることができず、優しいところがあると弁明しているような発言が見られます。こうした点から、暴力でAを支配する夫と、その夫に尽くすことで自分の存在意義を確認しようとしているAの関係性が窺え、共依存関係にあると考えることができます。
2 DVでは「緊張期」「爆発期」「ハネムーン期」のサイクルが繰り返されていると考えられています。加害者が怒りっぽくなる緊張期や、暴力を振るったりする爆発期においては緊張状態が続きますが、ハネムーン期として加害者が反省し、優しくなるといったタイミングが訪れるため、DVのサイクルから抜け出しにくくなります。ハネムーン期がやってくるように、常に緊張状態とは言えないため、誤りとなります。
3 「夫から殴られる夢を見て眠れない」といった再体験には、PTSDの特徴的な症状が表れています。さらに、「日中ぼんやりとし、名前を呼ばれても気づかないことがある。外出すると、自分の居場所が分からなくなる。」といった解離(つらい体験を収めておくことができず、体験の記憶やその感情などを切り離すことで自身へのダメージを避けるための防衛反応)もPTSDにおいて見られることがあります。
4 「これまで何度も暴力の後に優しくしてくれた」との発言からも、Aは夫の暴力に対して、好意があるからこそ暴力を振るうといった、愛情表現のひとつであると捉えていることが窺えます。
5 「パワーとコントロール」の構造とは、男性が身体的暴力だけでなく、社会的・経済的・体力的な優位性(パワー)により、立場の弱い女性をコントロールしようとする構造のことを言います。
これまでDVを受けても、夫の元に戻ることが繰り返されている様子からも、支配と被支配の関係が形成されていることが窺えます。
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03
本事例は、夫からの暴力を受けている25歳の女性Aが、配偶者暴力相談支援センターに保護されたケースです。Aは夫のもとに戻ることを何度も繰り返しており、これはDV(ドメスティック・バイオレンス)の特徴的なパターンの一つです。また、夫による身体的・心理的な暴力が続き、AにはPTSDの症状が疑われます(例:眠れない、いらいらする、夢に出てくるなど)。加えて、夫婦間には「パワーとコントロール」の支配構造が見られる一方で、Aの認知には歪みがあり、夫の暴力を愛情表現と捉えていることが伺えます。
共依存関係とは、被虐者が加害者に過剰に依存し、加害者も支配的な態度を通じて被虐者を手放さない関係を指します。本事例では、Aが夫のもとに何度も戻り、夫の暴力を受けながらも「夫は反省している」「優しくしてくれる」と認識していることから、共依存関係があると考えられます。この選択肢は適切です。
Aが夫の暴力後に「夫は優しくなる」と認識していることから、夫婦関係が常に高い緊張状態にあるわけではなく、一時的に緊張が緩和される「ハネムーン期」が存在していると考えられます。この「緊張—暴力—ハネムーン」のサイクルはDVの特徴的なパターンであり、「常に高い緊張関係にある」とする表現は不適切です。(不適切な選択肢)
Aは夫の暴力の記憶が夢に出てきて眠れない、自分の居場所が分からなくなる、名前を呼ばれても気づかないなどの症状を示しています。これらはPTSDの典型的な症状に該当するため、この選択肢は適切です。
Aは夫の暴力を受けながらも「夫は反省している」「暴力の後は優しくしてくれる」と認識しています。これは、Aが夫の暴力を愛情表現の一つと捉えている可能性を示唆しており、この選択肢は適切です。
ドゥルース・モデルでは、加害者が「権力と支配」を用いて被害者をコントロールする構造が特徴とされています。本事例でも、夫が暴力や金銭的制限を通じてAを支配していることが見られるため、この選択肢は適切です。
DVには、緊張が高まる「緊張期」、暴力が振るわれる「爆発期」、一時的に関係が改善する「ハネムーン期」というサイクルが見られるため、夫婦が常に高い緊張関係にあるとは言えません。このため、この選択肢は不適切です。
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