公認心理師の過去問
第4回(2021年)
午前 問71

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問題

公認心理師試験 第4回(2021年) 午前 問71 (訂正依頼・報告はこちら)

39歳の男性A、会社員。Aは、中途採用で入社して10年目になるが、これまで会社内での人付き合いは良好で、安定した仕事ぶりから上司の信頼も厚い。最近になり、Aは、キャリアに希望が持てないと企業内相談室に来室した。「今この会社を辞めたら損失が大きいので、この先も勤めようと思う」と述べる一方で、「この会社を離れるとどうなるか不安である」、「今この会社を辞めたら生活上の多くのことが混乱するだろう」と述べた。
Aの発言内容から考えられるAの組織コミットメントとして、最も適切なものを1つ選べ。
  • 規範的コミットメント
  • 行動的コミットメント
  • 情緒的コミットメント
  • 存続的コミットメント
  • 態度的コミットメント

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この過去問の解説 (2件)

01

組織コミットメント研究では、労働者のコミットメントの心理的状態を「情緒的コミットメント」、「存続的コミットメント」、「規範的コミットメント」の3つに分類しています。

選択肢①規範的 normative コミットメントとは、組織にコミットする忠誠心をもっているということです。

「理屈抜きに、この会社に忠誠を誓わなければならない」という心理状態です。

選択肢③情緒的 affective コミットメントとは、組織に対する愛着や同一化を意味しており、「この会社にいたい」という感情です。

選択肢④存続的 continuance コミットメントとは、その組織を去る時の代償について思いを巡らしていたりするなど、「この会社にいたいという積極的な理由がなく、他に選択肢がないから、この会社にいなければならない。」という感情が背景にあります。

選択肢②➄の「態度的コミットメント」と「行動的コミットメント」は、個々ばらばらに存在する概念ではなく、コミットメント研究の中では、相互に自己強化する関係が取りざたされてきました。

つまり、組織にいる人々に、あのフェスティンガーの認知的不協和といった心理的機制が働いていて、言い換えれば、組織のために働いているといった自分自身の行動に整合するように態度を調節するなど、組織に態度的コミットをしていく過程が、次なる行動的コミットメントを引き起こすということを指摘する概念です。

したがって、正解は選択肢④です。

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02

組織コミットメント研究とは、労働者が組織に対して持つ心理的結びつきを測定・分析するための研究領域です。「情緒的コミットメント」「存続的コミットメント」「規範的コミットメント」の3つに分類されます。

選択肢1. 規範的コミットメント

規範的コミットメントとは労働者が組織に対して、自身の価値観や道徳的観点から支持する意向を持っている状態のことです。組織のミッションやビジョンに共感し、組織の規範に沿って行動することが特徴です。「社会人なら会社に尽くすべき」といった理屈抜きの信念のことを指します。

選択肢2. 行動的コミットメント

組織コミットメント研究は研究領域により概念が異なり特に社会心理学の視点からはその個人の過去を組織に拘束していく過程として注目し、そうした捉え方を「行動的コミットメント」と言います。

「態度的コミットメント」と「行動的コミットメント」は相互に強化しあうサイクルが想定されており、単独で存在する信念とは考えられないためこの回答は不適切です。

選択肢3. 情緒的コミットメント

情緒的コミットメントとは労働者が組織に対して感情的な結びつきを持っている状態を指します。組織の目的や価値観に共感し、組織を支持する気持ちを持っていることが特徴です。「この会社で働くことが誇らしい」「自社のサービスが大好き」といった信念のことを指します。

選択肢4. 存続的コミットメント

存続的コミットメントとは労働者が組織に対して継続的に関わり続ける意向を持っている状態を指します。長期的な雇用契約によって、組織との結びつきを強く感じていることが特徴です。「仕事をやめたらまた人間関係をやり直さなければならない」といった組織を去るときのリスクについての信念のことを指します。

選択肢5. 態度的コミットメント

組織コミットメント研究は研究領域により概念が異なり特に組織行動学の視点ではコミットメントを労働者が組織の目標や価値観を内化していく過程を記述するものとして捉え、こうした捉え方に基づくものを「態度的コミットメント」と言います。

「態度的コミットメント」と「行動的コミットメント」は相互に強化しあうサイクルが想定されており、単独で存在する信念とは考えられないためこの回答は不適切です。

まとめ

コミットメントは、労働者のモチベーションや離職意向に影響を与えることが研究で示されています。企業にとっては、労働者の組織コミットメントを高めることが、生産性向上や離職率の低減につながるとされています。

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