公認心理師 過去問
第4回(2021年)
問72 (午前 問72)
問題文
53歳の女性A。もともと軽度の弱視がある。大学卒業後、管理栄養士として働いていたが、結婚後、出産を機に退職し、その後、職には就いていない。2年前に一人娘が就職し一人暮らしを始めた頃から、抑うつ的になることが増え、身体のほてりを感じることがしばしばあり、頭痛や倦怠感がひどくなった。また、これから何をしてよいのか展望が持てなくなり、不安な状態が続いていた。しかし、最近、かつて仕事でも趣味でもあった料理を、ボランティアで20歳から30歳代の女性らに教える機会を得て、彼女らとの会話を楽しみにするようになっている。
Aのここ数年来の心身の状態として、該当しないものを1つ選べ。
Aのここ数年来の心身の状態として、該当しないものを1つ選べ。
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問題
公認心理師試験 第4回(2021年) 問72(午前 問72) (訂正依頼・報告はこちら)
53歳の女性A。もともと軽度の弱視がある。大学卒業後、管理栄養士として働いていたが、結婚後、出産を機に退職し、その後、職には就いていない。2年前に一人娘が就職し一人暮らしを始めた頃から、抑うつ的になることが増え、身体のほてりを感じることがしばしばあり、頭痛や倦怠感がひどくなった。また、これから何をしてよいのか展望が持てなくなり、不安な状態が続いていた。しかし、最近、かつて仕事でも趣味でもあった料理を、ボランティアで20歳から30歳代の女性らに教える機会を得て、彼女らとの会話を楽しみにするようになっている。
Aのここ数年来の心身の状態として、該当しないものを1つ選べ。
Aのここ数年来の心身の状態として、該当しないものを1つ選べ。
- 更年期障害
- 空の巣症候群
- アイデンティティ危機
- 生成継承性<generativity>
- セルフ・ハンディキャッピング
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この過去問の解説 (3件)
01
問題は、53歳女性Aさんの「数年来の心身の状態」が問われています。
まず文中で「2年前に一人娘が就職し一人暮らしを始めた頃から、抑うつ的になることが増え、身体のほてりを感じることがしばしばあり、頭痛や倦怠感がひどくなった。」とあります。
「抑うつ的」「身体のほてり」「頭痛や倦怠感」といった選択肢①更年期障害様の症状が見られます。
また、Aさんの心の状態が「これから何をしてよいのか展望が持てなくなり、不安な状態が続いていた。」とあります。
「これから」というのは、「一人娘が就職し一人暮らしを始めた頃から」ということですから、子どもが巣立ち、心にぽっかり穴が開いたような抑うつ感に苛まれていることがわかります。
これは、いわゆる選択肢②空の巣症候群のことを指しています。
一方、「最近になり、かつて仕事でも趣味でもあった料理を、ボランティアで20歳から30歳代の女性らに教える機会を得て、彼女らとの会話を楽しみにするようになっている」ことから、他者との出会いにより心の状態が改善されている様子もうかがい知ることができます。
他者とは20歳から30歳の女性ですね。
このことから、次世代に料理を教えることに喜びを感じているわけですから、エリクソンがいうところの成人期(35歳~60歳)の危機と課題である選択肢③のアイデンティティ危機を止揚することで獲得される選択肢④生成継承性を認めることができます。
したがって誤りは選択肢➄です。
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02
この問題は、53歳女性Aさんの「数年来の心身の状態」が問われています。
最初に、文中で「2年前に一人娘が就職し一人暮らしを始めた頃から、抑うつ的になることが増え、身体のほてりを感じることがしばしばあり、頭痛や倦怠感がひどくなった。」と述べられています。
このような「抑うつ的」「身体のほてり」「頭痛や倦怠感」といった症状は、更年期障害に似ています。
Aさんは「これから何をしてよいのか展望が持てなくなり、不安な状態が続いていた。」と述べられています。
「これから」というのは、「一人娘が就職し一人暮らしを始めた頃から」ということですから、子どもが巣立ち、心にぽっかり穴が開いたような抑うつ感に苛まれていることがわかります。
これは、空の巣症候群を指しています。
「最近、かつて仕事でも趣味でもあった料理を、ボランティアで20歳から30歳代の女性らに教える機会を得て、彼女らとの会話を楽しみにするようになっている。」と述べられています。
彼女が他者との出会いによって心の状態が改善されていることがうかがえます。
彼女が出会った相手は20歳から30歳の女性です。
このことから、彼女が次世代に料理を教えることに喜びを感じていることがわかります。
したがって、エリクソンが言う成人期(35歳~60歳)の危機と課題であるアイデンティティ危機を乗り越えたことがわかります。
「最近、かつて仕事でも趣味でもあった料理を、ボランティアで20歳から30歳代の女性らに教える機会を得て、彼女らとの会話を楽しみにするようになっている。」と述べられています。
彼女が他者との出会いによって心の状態が改善されていることがうかがえます。
彼女が出会った相手は20歳から30歳の女性です。
このことから、彼女が次世代に料理を教えることに喜びを感じていることがわかります。
したがって、エリクソンが言う成人期(35歳~60歳)の危機と課題であるアイデンティティ危機を乗り越え、生成継承性を獲得していることがわかります。
セルフ・ハンディキャッピングとは、自分自身に制限を課してしまう心理状態のことで、自己評価を下げることで自分自身を守ろうとする傾向があります。
しかし、Aの状態は、セルフ・ハンディキャッピングとは異なります。
Aは、自分が得意とする料理を教えることで、役割や生きがいを見つけることができたという、ポジティブな変化を経験しています。
本事例においては、セルフ・ハンディキャッピングを窺わせる言動は見られません。
事例のどの選択肢に該当するか検討をつけながら回答するのがポイントです。
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03
該当しないものを1つ選ぶ問題ですので注意が必要です。
以下に解説します。
「身体のほてりを感じることがしばしばある」や「頭痛や倦怠感がひどくなった」という症状は年期障害の身体症状でよく現れるものです。
53歳というAさんの年齢を考慮しても、更年期障害は該当すると考えて差し支えないと思われます。
空の巣症候群は、子供が親の手を離れ自立する際に親に生じる心理的な不適応のことです。
「抑うつ的になることが増えた」や「不安な状態が続いていた」といった症状が現れた時期が「2年前に一人娘が家を出て一人暮らしを始めた頃から」という記述から、空の巣症候群に該当すると思われます。
Erikson,E.H.によるとアイデンティティ危機とは、自分の役割や人生の意味について混乱し心理的課題を抱える過程を指します。
Aさんは一人娘の育児に専念してきたが、その一人娘が家を出た後、これから何をしてよいのか展望が持てなくなり不安な状態が続いていると記載があります。
ここから、Aさんは母親役割からの引退によって自己同一性に混乱を抱えていると推察できるため、アイデンティティ危機に該当します。
Erikson,E.H.は成人期後期(壮年期)に起こる発達課題として、自身の生み出したものを下の世代にどう伝え残していくかといった生成継承性(generativity)を挙げています。
「かつて仕事でも趣味でもあった料理を、ボランティアで20歳から30歳代の女性らに教える機会を得て、彼女らとの会話を楽しみにするようになっている」という記述からは、Aさんがアイデンティティ危機を乗り越えて生成継承性(generativity)を発達させようとしているプロセスにいることが読み取れます。
ここから、生成継承性<generativity>も本事例に該当します。
セルフ・ハンディキャッピングとは、課題に取り組む際に自らに敢えてハンディキャップを課すことで、失敗の原因を己の能力に帰属できないようにする行動を指します。
問題文中にこのような行動を示唆する記述は見当たらないことから、本選択肢は誤りです。
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