公認心理師の過去問
第4回(2021年)
午後 問136

このページは閲覧用ページです。
履歴を残すには、 「新しく出題する(ここをクリック)」 をご利用ください。

問題

公認心理師試験 第4回(2021年) 午後 問136 (訂正依頼・報告はこちら)

20歳の女性A。Aは、無謀な運転による交通事故や自傷行為及び自殺未遂でたびたび救急外来に搬送されている。また、Aは交際相手の男性と連絡が取れないと携帯電話を壁に叩きつけたり、不特定多数の異性と性的関係を持ったりすることもある。現在、救急外来の精神科医の勧めで、公認心理師Bによる心理面接を受けている。初回面接時には、「Bさんに会えてよかった」と褒めていたが、最近では、「最低な心理師」と罵ることもある。Aは、礼節を保ち、にこやかに来院する日もあれば、乱れた着衣で泣きながら来院することもある。心理的に不安定なときは、「みんな死んじゃえ」と叫ぶことがあるが、後日になるとそのときの記憶がないこともある。
DSM-5の診断基準に該当するAの病態として、最も適切なものを1つ選べ。
  • 双極Ⅰ型障害
  • 素行症/素行障害
  • 境界性パーソナリティ障害
  • 反抗挑発症/反抗挑戦性障害
  • 解離性同一症/解離性同一性障害

次の問題へ

正解!素晴らしいです

残念...

この過去問の解説 (2件)

01

問題文の中の事例から疾患名を読み解く問題です。

事例の女性Aに関する記述を整理すると、以下の通りになります。

無謀な運転による交通事故や自傷行為及び自殺未遂でたびたび救急外来に搬送されている。

また、Aは交際相手の男性と連絡が取れないと携帯電話を壁に叩きつけたり、不特定多数の異性と性的関係を持ったりすることもある。

➡【自殺企図、繰り返しの自傷行為】【衝動性(特に自己破壊的)】

「初回面接時には、『Bさんに会えてよかった』と褒めていたが、最近では、『最低な心理師』と罵ることもある」

➡【理想化と価値下げ】

「『みんな死んじゃえ』と叫ぶことがあるが、後日になるとその時の記憶がないこともある」

➡【ストレスによる解離症状】

また、全体的に躁鬱症状も見られていますが、例文の女性の病態像は患者自身の二面性に自分自身が苦しめられているエピソードです。

選択肢1. 双極Ⅰ型障害

双極性障害のうち、双極Ⅰ型は、うつ病と躁病の両方のエピソードを経験するタイプです。

うつ病エピソードでは、深刻な抑うつ状態を経験し、躁病エピソードでは、高揚感、興奮、無謀な行動、睡眠不足などの症状を示します。

波形は緩やかで、各エピソードにある程度の期間が生じます。

例文の内容は急激な態度の変容であることから、本肢は誤りです。

選択肢2. 素行症/素行障害

素行障害(conduct disorder)は、通常の行動規範を破る行動が持続的または反復して現れる病気で、主に青年期に発症することが多い精神障害の一つです。

一般的に、他人の権利を侵害する行動、嘘をつく、窃盗する、火をつける、動物を虐待するなどの行動が挙げられます。

しかし、二面性がある疾患ではないため、誤りです。

選択肢3. 境界性パーソナリティ障害

境界性パーソナリティ障害(Borderline Personality Disorder、BPD)は、自己のアイデンティティに対する不安定さ、対人関係における不安定さ、衝動的な行動、自傷行為などが特徴的な精神疾患です。

BPDの人は、しばしば自分自身や他人に対して極端な観点を持ち、一時的な感情の強さにとらわれることがあります。

病態像の中の防衛機制に理想化と価値下げの繰り返しがある、代表的な疾患です。

よって正解です。

選択肢4. 反抗挑発症/反抗挑戦性障害

反抗挑戦性障害(Oppositional Defiant Disorder; ODD)とは、子どもや若者に見られる、常に反抗的で挑戦的な態度や行動がみられる障害です。

具体的には、親や教師の指示に対して反発する、わがままな態度を示す、人に対して攻撃的な言動をとる、故意に人をいじめたりするなどが挙げられます。

また、このような行動が周囲の人たちの日常生活に支障をきたすことがあります。

ODDは、注意欠陥・多動性障害(ADHD)や不安障害、抑うつ症状などと併存することが多く、問題として出すならば、幼少期のエピソードが書かれていないと、判断がしにくいです。

二面性が書かれていない点も含め、誤り。

選択肢5. 解離性同一症/解離性同一性障害

解離性同一性障害とは、2人以上の別個の人格(アイデンティティ)が、同一の人間の中に存在するという精神疾患です。

例えば、一つの人格では極度の恐怖心を抱き、次の瞬間には全く無関心になるなど、異なる人格の特徴が表出することがあります。

この症状は、過去にトラウマなどの深刻な心理的ストレスを経験した人々によく見られますので、例文に過去の体験が描かれるはずです。

よって誤り。

参考になった数3

02

選択肢のうち最も合致する病態を選ぶ問題です。

事例の女性Aに関する記述を整理すると、以下の通りになります。

・自己破壊的な衝動性・・・「無謀な運転による交通事故」「不特定多数の異性と性的関係」

・自殺の行為、自傷行為の繰り返し・・・「自傷行為及び自殺未遂でたびたび救急外来に搬送されている」

・不適切で激しい怒り、怒りの制御困難・・・「交際相手の男性と連絡が取れないと携帯電話を壁に叩きつけ」

・理想化とこき下ろしが特徴的な不安定で激しい対人関係・・・「初回面接時には、『Bさんに会えてよかった』と褒めていたが、最近では、『最低な心理師』と罵ることもある」

・同一性の混乱・・・「礼節を保ち、にこやかに来院する日もあれば、乱れた着衣で泣きながら来院することもある」

・気分反応性による情緒不安定・・・「『みんな死んじゃえ』と叫ぶことがある」

・解離性症状・・・「『みんな死んじゃえ』と叫ぶことがあるが、後日になるとその時の記憶がないこともある」

選択肢1. 双極Ⅰ型障害

記述の行動を双極Ⅰ型障害の気分変化に由来するものと捉えるかもしれませんが、双極性障害の気分変化はもっと長期的なサイクルである場合が多く、また対人関係をきっかけに変化するという特徴は有していません。よって、本選択肢は不適切です。

選択肢2. 素行症/素行障害

素行障害は「他者の基本的人権または年齢相応の主要な社会的規範または規則を侵害することが反復し持続する行動様式」ですが、事例の女性Aの行動は他者の人権や規則の侵害とまでは言えませんので、本選択肢は不適切です。

選択肢3. 境界性パーソナリティ障害

冒頭で整理した女性Aの病態は、境界性パーソナリティ障害の特徴に最も合致します。よって、本選択肢は適切です。

選択肢4. 反抗挑発症/反抗挑戦性障害

反抗挑戦症/反抗挑戦性障害は、怒りっぽく/易怒的な気分、口論好き/挑発的な行動、または執念深さなどの情緒・行動上の様式が特徴ですが、事例の女性Aに口論好きや執念深さが見られません。よって、本選択肢は不適切です。

選択肢5. 解離性同一症/解離性同一性障害

記憶がないという記述を解離性健忘と捉え、解離性同一症/解離性同一性障害を疑うかもしれませんが、それ以外の記述が合致しませんので、本選択肢は不適切です。

参考になった数2