公認心理師の過去問
第4回(2021年)
午後 問145

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問題

公認心理師試験 第4回(2021年) 午後 問145 (訂正依頼・報告はこちら)

14歳の男子A、中学2年生。Aは、生後間もない頃から乳児院で育ち、3歳で児童養護施設に入所した。保護者は所在不明でAとの交流はない。Aはおとなしい性格で、これまで施設や学校でも特に問題はみられなかったが、中学2年生の冬休み明けからふさぎ込むことが増えた。ある日、児童指導員Bに対して、「どうせ仕事なんだろう」、「なぜこんなところにいなくてはいけないんだ」と言いながら暴れた。また、「生きている意味がない」とメモを書き残して外出し、Aが育った乳児院の近くで発見された。Aの態度の変わりように困ったBは、施設内の公認心理師CにAへの対応を相談した。
CのBへの助言・提案として、最も適切なものを1つ選べ。
  • Aの自立支援計画の策定を始めるよう助言する。
  • 児童相談所に里親委託の検討を依頼するよう提案する。
  • Aが自分を理解してもらえないと感じるような、Bの対応を改善するよう助言する。
  • Aには注意欠如多動症/注意欠如多動性障害<AD/HD>の疑いがあるため、医療機関の受診を提案する。
  • 信頼できる大人との日常生活の中で、Aが自分の人生を自然に振り返ることができるような機会が大切になると助言する。

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この過去問の解説 (2件)

01

児童養護施設に入所している生徒への対応に関する事例問題です。

厚生労働省が令和2年に出している、「児童養護施設入所児童等調査の概要」を参考にすると、施設入所児童生徒へ特に指導上留意している点で、最も多いのが精神的・情緒的な安定です。

これは施設内だけではなく、学校教育の中でもその点を留意する必要があります。

入所している生徒は、本来家庭生活の中で表現される甘えや反抗的態度なども、他の生徒程満足に表現できていません。

言葉通りの言動に左右されることなく、対象生徒の背景も踏まえて総合的に対応に検討が必要です。

選択肢1. Aの自立支援計画の策定を始めるよう助言する。

平成17年より、児童福祉施設最低基準の改定で、児童養護施設等の各施設長は、入所者に対して計画的な自立支援を行うため、個々の入所者に対する支援計画を策定しなければならない、とされているため、今回のAの言動で作成することは誤りです。

選択肢2. 児童相談所に里親委託の検討を依頼するよう提案する。

Aの指導員Bに対する言動から、Aが施設を出たいようなニュアンスが読み取れますが、Aに言葉・行動通りの意図はないことが推察されます。発達的な反抗期、もしくは高校入学が意識されだし、不安を抱えた態度の可能性が高いです。

ここで安易にAの行動から、里親委託の検討を行い、それをAに伝えることは、より一層の見捨てられ不安を助長する可能性が高いため、誤りです。

追記:厚生労働省の里親委託ガイドラインにあるように、児童相談所に里親委託を推進する担当者が配置されており、依頼することは可能です。

選択肢3. Aが自分を理解してもらえないと感じるような、Bの対応を改善するよう助言する。

Aの見捨てられ不安からくるBへの行動である可能性が高く感じられる事例です。

Bに対して見捨てられないという安心感や自身の理解を得るために、Bの対応を変えることはAの成長の妨げになります。

Bの一貫した対応の中で、AがBからの愛情と自分の在り方・受け止め方を模索していく必要があるため、誤りです。

選択肢4. Aには注意欠如多動症/注意欠如多動性障害<AD/HD>の疑いがあるため、医療機関の受診を提案する。

中学2年生まで目立った問題が見られなかった点から、今回の飛び出し行為を発達障害と結び付けることは難しく、誤りです。

選択肢5. 信頼できる大人との日常生活の中で、Aが自分の人生を自然に振り返ることができるような機会が大切になると助言する。

Aの生育歴から、基本的信頼感が十分に育つ機会に恵まれなかったことが想像できます。

母性がはく奪され、施設で過ごしているAにとって施設症(ホスピタリズム)が生じていることが予測できます。

そのためにも信頼できる大人とA自身が一つ一つ信頼感を感じられるようになることが大切です。

よって、適切です。

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02

施設入所児童生徒の言動に対する理解と対応について問われています。

選択肢1. Aの自立支援計画の策定を始めるよう助言する。

児童養護施設に入所している児童生徒には、すでに自立支援計画が策定されています。よって、本選択肢は不適切です。

選択肢2. 児童相談所に里親委託の検討を依頼するよう提案する。

男子Aが、児童指導員Bに対して反抗的な言動をしたり、プチ家出をしてみたりできるのは、児童指導員に対する信頼感があるからこそのことです。安定を確かめる言動をしている時に、養育者を変更するのは、Aの安定感が失われる可能性が大です。よって、本選択肢は不適切です。

選択肢3. Aが自分を理解してもらえないと感じるような、Bの対応を改善するよう助言する。

男子Aがどんな態度を取ったとしても、児童指導員Bが見放さないことで安定的な関係性を確認しているときに、児童指導員Bが対応を変えると男子Aがかえって混乱する可能性が大です。よって、本選択肢は不適切です。

選択肢4. Aには注意欠如多動症/注意欠如多動性障害<AD/HD>の疑いがあるため、医療機関の受診を提案する。

男子Aは「おとなしい性格で、これまで施設や学校でも特に問題はみられなかった」ということから、幼少期から特徴が垣間見られる注意欠如多動症/注意欠如多動性障害の可能性は考えにくいです。よって、本選択肢は不適切です。

選択肢5. 信頼できる大人との日常生活の中で、Aが自分の人生を自然に振り返ることができるような機会が大切になると助言する。

男子Aの生育歴から、出自について不明な点が多く、基本的信頼が育つ機会が十分にはなかったことが想像されます。この時期の発達課題にもう一度取り組めるよう「Aが自分の人生を自然に振り返ることができるような機会」を持てることが、理想的と言えます。よって、本選択肢は適切です。

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