公認心理師 過去問
第4回(2021年)
問144 (午後 問144)
問題文
12歳の女児A、小学6年生。Aに既往歴はなく、対人関係、学業成績、生活態度などに問題はみられなかった。しかし、ある日授業中に救急車のサイレンが聞こえてきたときに、突然頭を抱え震えだした。その後、Aはかかりつけの病院を受診したが、身体的異常はみられなかった。Aはそれ以降、登校しぶりが目立っている。保護者によると、1年前に、家族旅行先で交通死亡事故を目撃したとのことであった。AやAの家族は事故に巻き込まれてはいない。スクールカウンセラーであるBは、教師の校内研修会でAへの対応に役立つような話をすることになった。
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問題
公認心理師試験 第4回(2021年) 問144(午後 問144) (訂正依頼・報告はこちら)
12歳の女児A、小学6年生。Aに既往歴はなく、対人関係、学業成績、生活態度などに問題はみられなかった。しかし、ある日授業中に救急車のサイレンが聞こえてきたときに、突然頭を抱え震えだした。その後、Aはかかりつけの病院を受診したが、身体的異常はみられなかった。Aはそれ以降、登校しぶりが目立っている。保護者によると、1年前に、家族旅行先で交通死亡事故を目撃したとのことであった。AやAの家族は事故に巻き込まれてはいない。スクールカウンセラーであるBは、教師の校内研修会でAへの対応に役立つような話をすることになった。
Bが提示する内容として、最も適切なものを1つ選べ。
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- 発達障害への対応
- 曖昧な喪失へのケア
- 心理的リアクタンスの理解
- トラウマ・インフォームド・ケア
- 反応性アタッチメント障害の理解
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この過去問の解説 (3件)
01
Aの過去の辛い体験がPTSDになっており、フラッシュバックによる不適応と考えることが出来ます。
現在の問題は登校渋りであるが、問題の発生要因はPTSDによるフラッシュバックの可能性が高いため、登校渋りは維持要因でしかない可能性がある。
その上で、SCとして必要な支援や教職員へのコンサルテーションが必要なケースに関する問題です。
Aに既往歴はなく、対人関係、学業成績、生活態度などに問題はみられなかった点から、今回の問題と発達障害を結びつけることは難しいです。
よって本肢は誤りです。
曖昧な喪失とは、自身にとっての重要な他者が、死亡や離別などのはっきりとした喪失体験とは異なり、何らかの変化や損失があったものの、その影響が明確に認識されていない状態を指します。
今回はAやその家族にそれにあたる記載がないため、誤りです。
心理的リアクタンスは、人が自由に行動する機会が制限されたときに、反発や抵抗を示す心理現象のことを指します。
これは、自分自身がコントロールできると思っていることが、外部の要因によって制限されることで、感じるストレスや不快感に対する自己防衛の反応とも言えます。
今回はAに小学6年まで問題がなく過ごしており、PTSD反応についての設問であるため、誤りです。
トラウマインフォームドケアは、個人が心的外傷を経験した場合に、その人を支援するためのアプローチの一つです。
トラウマインフォームドケアは、心理学、神経学、社会学、医学などの分野にまたがっており、心的外傷の影響を理解し、適切なケアを提供するための実践的な知識とスキルを組み合わせています。
よって正解です。
反応性アタッチメント障害とは、子供が乳幼児期に介護者との信頼的なアタッチメントを築けなかったことが原因で、社会的・感情的な関係を築く能力に障害がある状態のことを指します。
この状態にある子供は、一般的に過度の不安、不信感、拒否、接近と回避の不安定な反応などを示すことがあります。
小学6年生まで、問題の無かった記述から、本肢は誤りです。
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02
事例の女児Aの最も可能性の高い症候から適切な対応を導き出し、校内研修会で話す内容を考える問題です。
女児Aは「救急車のサイレン」の音に強い反応を見せ、それに関係がありそうなこととして、1年前に交通死亡事故を目撃したという経験があるということ。それまでのAに既往歴なく、学校生活に問題がなかったことから、遅延顕症型PTSDである可能性が高いと考えられます。
小学6年生まで「対人関係、学業成績、生活態度に問題はみられなかった」ことから、小さな頃から特徴が現れやすい発達障害の可能性は低いと考えます。「救急車のサイレンが聞こえてきたときに、突然頭を抱え震えだした」という記述から、発達障害の特徴の一つである、聴覚過敏を疑うかもしれませんが、それ以外に聴覚過敏の情報がありませんし、発達障害の他の特徴に関する記述もありません。よって、本選択肢は不適切です。
「曖昧な喪失」とは、かけがえのない人の死去後、最後のお別れをして埋葬するといった「明確な喪失」に対して、喪失が不確実な状態を表した概念です。行方不明者や養子縁組など「さよならのない別れ」と、認知症や脳疾患による「別れのないさようなら」の2つがあります。「AやAの家族は巻き込まれていない」との記述があり、死亡した人は家族ではありませんので、本選択肢は不適切です。
心理的リアクタンスとは、人が自身の自由が脅かされた時に生じる、自由を回復しようとする反発作用のことです。事例の文から、心理的リアクタンスの状態にあると見なせる部分はありませんので、本選択肢は不適切です。
トラウマの影響による行動に対する理解を促し、その行動への対応を適切にするためにトラウマ・インフォームド・ケア(TIC)は有効であるとされています。よって、本選択肢は適切です。
反応性アタッチメント障害は、特定の対象との愛着形成の機会を制限されことにより、他者との最小限の交流や感情調節困難を特徴とします。5歳以前に明らかになるものですので、本選択肢は不適切です。
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03
Aは、交通死亡事故を目撃したことにより、PTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症している可能性が考えられます。
Aは、交通事故が発生した際の状況、この設問の場合、救急車のサイレンの音が引き金となり、PTSDの症状を発現しています。
校内研修会では、PTSDやトラウマに関する知識を提供する必要があります。
小学校6年生に至る現在まで既往歴もなく、対人関係や成績にも問題ないと記述されています。 発達障害と関連付けるのには、対人コミュニケーションの課題や、衝動性、不注意などの記述もなく、根拠が薄いため、誤答です。
曖昧な喪失とは、例えば家族が遭難し行方不明になったままで、生死不明のまま時が過ぎていく「明確な別れ」がないことを指します。設問では、曖昧な喪失に関する情報は読み取れないため、誤答です。
心理的リアクタンスとは、自身の自由とその自由が侵害される状況が発生したときに発動する心の動きです。例えば、今やろうと思っていたことについて、「やりなさい」と言われると、腹がたったりすることもこの現象のひとつです。
設問には、この現象が読み取れないため、誤答です。
正答です。トラウマを引き起こす行動について、理解し、治療者(支援者)と被治療者(被支援者)とともに考え、トラウマを喚起させる反応を低減させることを考えるなど、その反応に適切に対応するための方法です。
反応性アタッチメント障害は、愛着形成をしていく人物(主に養育者)との形成がなされなかったために、不適切なコミュニケーションを行ったり、情動調律がうまくいかないことを言います。
設問からは読み取れないこと、診断は5歳以前にされる(DSMによる)ため誤答です。
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