公認心理師の過去問
第1回 追加試験（2018年）
午後 問154

A に考えられる心理的問題は、心的外傷後ストレス障害（PTSD）にあたります。

心的外傷後ストレス障害は、衝撃的な出来事に巻き込まれ、生死にかかわる危機に直面するなどした後に発症する障害です。

虐待の被害者にも心的外傷（トラウマ）が生じ、症状が現れます。

Aには「意欲が乏しく内気に見えるが、時折、別人のようになって他児に暴力を振るう」「昼寝の時間は全く眠れず、家でも夜は何度も目を覚ます」といった様子が見られています。

事例から読み取れることは、養育者との愛着形成の阻害ではなく、継父からの身体的虐待と心理的虐待です。

Aは、継父から身体的虐待と心理的虐待を受けたことから、継父のモデルを取り入れて、他児に対して暴力を振るっていると考えられます。

保育所に入所したことによる心理的ストレスはあると考えられますが、保育所に入所する以前より生じていた、虐待による問題が重要視されます。

Aに注意欠如多動症／注意欠如多動性障害＜AD/HD＞があるかどうかは、分かりません。

「乳幼児健康診査では何の問題も指摘されていなかった」ことから、可能性としては低いです。

「昼寝の時間は全く眠れない」「夜は何度も目を覚ます」といった、過覚醒や中途覚醒がみられ、心的外傷後ストレス障害を発症している可能性が考えられます。

愛着障害は通常５歳以前から症状が明らかになるものとされています。

継父との関係は４歳からであり、母との関係において問題がある記述がないため、愛着形成が阻害されているとは言い難いです。

「別人のようになって他児に暴力を振るう」というのは継父をモデルとして取り入れている可能性があると考えられます。

保育所に入所したことなど環境の変化によるストレスもあると思われますが、それ以上に他の選択肢が適切です。

「乳幼児健康診査では何の問題も指摘されていなかった」とあるので、AD/HDである可能性は引くと考えられます。