公認心理師の過去問
第5回 (2022年)
午後 問60

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問題

公認心理師試験 第5回 (2022年) 午後 問60 (訂正依頼・報告はこちら)

20歳の女性 A、大学2年生。1か月前から男性 Bと交際している。Aは Bが誰か別の人物と一緒に食事をしたり、自分が知らないうちに出かけた話を聞いたりすると不安が高まり、Bの行動に疑念を抱くという。Aは Bの行動を常に確認しないと安心できず、Bがソーシャル・ネットワーキング・サービス〈SNS〉に投稿する内容を常に確認し、Bの携帯端末の画面に表示される通知を頻繁にのぞき込んでしまう。そのことで Aと Bは言い争いをし、関係が悪化する状態が繰り返されている。
Aの状態として、最も適切なものを1つ選べ。
  • 感情の誤帰属
  • 恋愛の色彩理論におけるアガペ型
  • 愛の三角理論におけるコミットメント
  • とらわれ型のアタッチメント・スタイル
  • 同一性地位〈アイデンティティ・ステータス〉理論における早期完了

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この過去問の解説 (2件)

01

この問題の正解は、とらわれ型のアタッチメント・スタイル です。

各選択肢については以下の通りです。

選択肢1. 感情の誤帰属

誤りです。感情の誤帰属とは類似した感情の錯誤のことで、本問の状況とは合致しません。

選択肢2. 恋愛の色彩理論におけるアガペ型

誤りです。恋愛の色彩理論におけるアガペ型とは自己犠牲的な恋愛様式のことで、本問の状況とは合致しません。

選択肢3. 愛の三角理論におけるコミットメント

誤りです。愛の三角理論においてコミットメントとは2人がどれほど離れられないかを示すものです。

選択肢4. とらわれ型のアタッチメント・スタイル

正しいです。アタッチメント・スタイルにおいてとらわれ型とは、親密さの過剰な要求、拒絶や見捨てられることへの強い不安が特徴とされます。

選択肢5. 同一性地位〈アイデンティティ・ステータス〉理論における早期完了

誤りです。早期完了とは、心理的な危機を経験せずに無批判で、あたかもアイデンティティを確立したような状態の集団のことです。

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02

この問題では、まず女性Aがどのような状態であるか整理しましょう。

女性Aは、男性Bが自分以外の誰かと親しくすることに強い不安を持ってしまう状態と言えます。自分自身や男性Bとの関係性に自信を持てないようにも感じられますね。

このような見立てをした上で、どのような理論で説明ができるか検討する事が必要です。

選択肢1. 感情の誤帰属

誤りです。

「感情の誤帰属」とは、自分の感情の理由を、誤って認識してしまうことです。

有名なものでは、吊り橋効果があげられます。異性と一緒に吊り橋を渡る際に緊張やドキドキを感じると、本当は吊り橋に対する怖さにより生じている感情であるのに、異性の魅力に対して生じているように誤って認識してしまうというものです。

よって、この事例の説明には適していません。

選択肢2. 恋愛の色彩理論におけるアガペ型

誤りです。

「恋愛の色彩理論」とは、恋愛には色のようにさまざまな種類があるとする理論です。

基本的な種類として、「エロス(美への愛)」「ストルゲ(友愛的な愛)」「ルダス(遊びの愛)」の3つがあげられます。さらに、混合型として「マニア(熱狂的な愛)」「アガペ(献身的な愛)」「プラグマ(実利的な愛)」の3つが考えられています。

「アガペ」とは、恋愛において相手を中心に考え、自分が犠牲となってもいいという態度の場合を言います。相手に対して親切で、見返りを求めないような関わり方をします。

よって、この事例の説明には適していません。

選択肢3. 愛の三角理論におけるコミットメント

誤りです。

「愛の三角理論」とは、愛は「親密さ」「情欲」「コミットメント(責任)」の3要素で成り立つと考える理論です。3要素の強弱によって、8つの愛情のタイプに分けられると考えます。

コミットメントとは、相手に対して一途で裏切らない、嘘をつかないような態度を指します。

よって、この事例の説明としては適していません。

選択肢4. とらわれ型のアタッチメント・スタイル

正答です。

「アタッチメント・スタイル(愛着スタイル)」とは、周囲の大切な人とどのような関係を求め、心地良いと感じるのかという他者との関係の持ち方のスタイルをパターンで考えたものです。「自律・安定型」「とらわれ・アンビバレント型」「拒絶・回避型」「怖れ・回避型」の4つに分けられます。

「とらわれ型」とは、自分について消極的に捉えており、他者に依存的になりやすい傾向の場合を指します。見捨てられるのではないかという不安も強い事が特徴です。

よって、この事例の説明として適切と言えます。

選択肢5. 同一性地位〈アイデンティティ・ステータス〉理論における早期完了

誤りです。

まず「自我同一性」とは、自分自身が何者かを認識した上で、自分の役割や使命感を持つことを指します。青年期に獲得すべき大切な発達課題です。「同一性地位理論」では、自我同一性の発達の状態、過程を検討したものです。「同一性拡散」「早期完了」「モラトリアム」「同一性達成」の4つの過程で発達すると考えられていますが、状況によってはいずれかの状態のままになっている場合もあると検討されています。

「早期完了」とは、自分で自分について十分な探求ができておらず、他者の選んだアイデンティティをそのまま受け入れているような状態です。

よって、この事例の説明としては適していません。

まとめ

事例検討では、まず情報を丁寧に整理してから、どのような理論で考えられるか、どのようなアプローチができるかを検討しましょう。

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