公認心理師 過去問
第5回 (2022年)
問138 (午後 問61)

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問題

公認心理師試験 第5回 (2022年) 問138(午後 問61) (訂正依頼・報告はこちら)

7歳の女児 A、小学1年生。両親による身体的虐待やネグレクトにより4歳から児童養護施設で生活している。Aは、学業成績に問題はなく、質問への返答も的確である。その一方で、施設入所以来、笑うことがなく、苦痛や不平を一切訴えることがない。また、他人と交流せず孤立しており、Aはそれを苦痛に感じていないようであった。ある日、Aが学校で継続的ないじめを受けていることが発覚した。加害児童は、「Aは話しかけても無視するし、全然笑ってくれない」と話した。施設の担当職員に対しては入所時よりも若干柔らかい表情を示すようになってきている。
DSM−5の診断基準から考えられる Aの病態として、最も適切なものを1つ選べ。
  • 脱抑制型対人交流障害
  • 心的外傷後ストレス障害〈PTSD〉
  • 反応性アタッチメント障害/反応性愛着障害
  • 自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害〈ASD〉
  • 小児期発症流暢症(吃音)/小児期発症流暢障害(吃音)

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この過去問の解説 (3件)

01

この問題の正解は、反応性アタッチメント障害/反応性愛着障害 です。

DSM-5によれば

反応性アタッチメント障害では苦痛な時でも子供はめったに安楽に反応しない。

  1. 他者に対する最小限の対人交流と情動の反応や制限された陽性の感情などの特徴、選択的アタッチメントを形成する機会を極端に制限することになる、普通でない状況における養育のような不十分な養育の極端な様式を経験している、などの基準が示されており、本問の状況はこれと合致するといえます。

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02

この問題では、まず女児Aの特徴を整理しましょう。

女児Aは、知的な問題はない様子です。しかし、対人関係においては、交流を求めない、笑わないなど、年齢相応のコミュニケーションが難しい事が読み取れます。施設の担当職員(大人)に対しては、徐々に心を開いている様子が見られています。

この女児Aについて想定される病態を検討します。

選択肢1. 脱抑制型対人交流障害

誤りです。

「脱抑制型対人交流障害」の児童には、初対面の相手にもためらわずに近づく、初めての場所でも緊張感なく振る舞うなどの行動が見られます。子ども同士の関わりが苦手で、大人を求めやすい特徴もあります。また、認知機能や言語発達の遅れ、常同症(同じことを繰り返す)などの併存が認められる場合があります。

よって、児童Aについては、この病態は想定しにくいと言えます。

選択肢2. 心的外傷後ストレス障害〈PTSD〉

誤りです。

「心的外傷後ストレス障害(PTSD)」とは、災害や事故などの大きなショックを受ける出来事を体験した後、1カ月以上が過ぎても、その体験を不意に思い出して強い不安を感じるなど、生活への支障がある状態を言います。

この女児Aは、身体的虐待やネグレクトを受けていますが、生活への大きな支障はない様子です。よって、児童Aについては、この病態は想定しにくいと言えます。

選択肢3. 反応性アタッチメント障害/反応性愛着障害

正答です。

「反応性アタッチメント障害/反応性愛着障害」の児童では、ポジティブな感情表現が非常に乏しい、大人に素直に甘えられない、他者へ対して過度に警戒するなどの特徴が見られます。また、苛立ちや悲しみ、不安を感じやすく、そのコントロールが難しい様子もあります。

この児童Aの見立てとして、選択肢の中では最も適していると考えられます。

選択肢4. 自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害〈ASD〉

誤りです。

「自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害(ASD)」とは、発達障害の一つとされ、コミュニケーションの難しさ、物事への強いこだわりなどの特徴があるものです。

よって、児童Aについては、この病態は想定しにくいと言えます。

選択肢5. 小児期発症流暢症(吃音)/小児期発症流暢障害(吃音)

誤りです。

「小児期発症流暢症(吃音)/小児期発症流暢障害(吃音)」の児童には、なめらかに会話する事が難しく、会話中にどもってしまう、止まってしまうなどの様子が見られます。

よって、児童Aについては、この病態は想定しにくいと言えます。

まとめ

事例検討では、まずクライエントの状況について整理した上で、どのような障害や疾患で説明できるかを考えましょう。障害や疾患についての基礎知識を持ち、試験に臨む事が必要です。また、実際の臨床現場では、1つの可能性に絞るのでなく、さまざまな可能性を想定しながらアセスメントする態度が重要です。

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03

以下に解説します。

選択肢1. 脱抑制型対人交流障害

これは、通常、虐待やネグレクトを受けた子どもが過度に他者に対して依存的な態度を取る場合に診断されます。Aは他者との交流を避け、孤立しているため、脱抑制型対人交流障害とは一致しません。

選択肢2. 心的外傷後ストレス障害〈PTSD〉

PTSDは、重大な外傷的出来事(例: 戦争、事故など)に直面した後に発症しますが、Aは長期間にわたる虐待の影響で愛着形成が問題となっており、PTSDの特徴(フラッシュバックや過覚醒など)は見られません。

選択肢3. 反応性アタッチメント障害/反応性愛着障害

正解です。反応性アタッチメント障害(RAD) は、早期に身体的虐待やネグレクトなどの極度な養育環境の問題を経験した子どもに見られる障害です。主に、親や養育者との安定した愛着関係の形成が不十分なことに起因し、対人関係の困難や感情の抑制、不安感を示すことがあります。Aは笑うことがなく、他者との交流を避け、苦痛や不平を訴えないなど、愛着障害の特徴を示しています。施設で少しずつ柔らかい表情を見せるようになった点も、Aが愛着関係を少しずつ築きつつあることを示唆しています。

選択肢4. 自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害〈ASD〉

ASDは、社会的相互作用やコミュニケーションに関する特徴的な問題を持つ発達障害ですが、Aの症状は他者との交流を避けるという点が特徴であり、ASDの診断基準には合いません。

選択肢5. 小児期発症流暢症(吃音)/小児期発症流暢障害(吃音)

吃音は、話すことに関する流暢さの問題を指し、Aの症状(感情の抑制や他者との交流の問題)には該当しません。

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