公認心理師 過去問
第7回(2024年)
問154 (午後 問77)

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問題

公認心理師試験 第7回(2024年) 問154(午後 問77) (訂正依頼・報告はこちら)

9歳の女児A、小学3年生。Aは、限局性学習症/限局性学習障害と診断され、通級による指導を受けている。通常の学級におけるAの授業中の読み書きの困難さとして、「黒板の字を写すのに時間がかかる」、「教科書を読んでも字や行をとばして読んでしまう」、「語や文章を不自然に区切って読むことがある」、「どこを読んでいるかを追いかけることが難しくなる」、「文字が枠からはみ出す」、「形態的に似ている文字の誤りが多い」などがある。手先の不器用さは目立たないが、書くことを避ける傾向にある。
教室において、Aが授業に参加できるようにする読み書きの支援として、適切なものを2つ選べ。
  • 利き手を確立するように働きかける。
  • メモを用いて発表する練習をさせる。
  • 単語や文のまとまりごとに、スラッシュを入れる。
  • 教室の掲示物を整理して、視覚的に余計な刺激をなくす。
  • 黒板に書く文章と同じものをプリントにし、手元に置いて写し書きをさせる。

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この過去問の解説 (2件)

01

この問題で覚えておくべきポイントは以下のとおりです。

限局性学習症/限局性学習障害に対する学習支援方法について問われています。どのような症状があり、どうすれば、効率的に学習できるか、総合的に判断する必要があります。

では、問題を見てみましょう。

選択肢1. 利き手を確立するように働きかける。

手先の不器用さはないと記載がありますので、書字困難は身体的な能力低下で生じているわけではありませんので、間違いです。

選択肢2. メモを用いて発表する練習をさせる。

文章を読むことに関して、「教科書を読んでも字や行をとばして読んでしまう」、「語や文章を不自然に区切って読むことがある」、「どこを読んでいるかを追いかけることが難しくなる」といった、できないことの記載がありますので、何らかの対応が必要です。メモを作成しても、そのメモを適切に読むことが難しい障害があるため、発表練習をしても改善は見込めないため、間違いです。

選択肢3. 単語や文のまとまりごとに、スラッシュを入れる。

語や文章を不自然に区切って読んでしまうため、スラッシュを入れて、まとまりをわかりやすくすることは、有益ですので正解です。どこを読んでいるか、追いかけるためのヒントにもなりえます。

選択肢4. 教室の掲示物を整理して、視覚的に余計な刺激をなくす。

問題文を見る限り、周囲の環境へ注意散漫になっている状態は確認できませんので、間違いです。

選択肢5. 黒板に書く文章と同じものをプリントにし、手元に置いて写し書きをさせる。

黒板の文字を写すのに時間がかかっている状態であるため、黒板と手元の視点の移動より距離を短くする配慮は有効ですので、正しいです。どこを読んでいるのか、分からなくなることへの配慮もなされていると考えます。

まとめ

限局的学習症は、読むこと、書くこと、計算することが難しくなる障害です。聞く、話すは保たれているため、障害の認知が難しくなります。障害をしっかり理解し、どのように支援すれば、読みやすいか、書きやすいかの視点も持っておきましょう。

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02

適切なものを2つ選ぶ問題ですので注意が必要です。

以下に解説します。

選択肢1. 利き手を確立するように働きかける。

×

 

問題文中に手先の不器用さは目立たない、とあることから、聞き手が確立していないことがAの読み書きの困難さの直接的な原因になっていると推測するのは難しいことから、適切な対応とは言えません。

選択肢2. メモを用いて発表する練習をさせる。

×

 

Aはそもそも読み書きに困難さを抱えており、書くことそのものが嫌悪刺激となっていることで書く行動からの回避が見られることも示唆されています。

こういった状態のAにメモを用いた発表を練習させるのは大きな反応努力を要求する上に、生得的な脳機能に起因すると考えられている限局性学習障害に効果的な支援かどうかには疑問が残ります。

選択肢3. 単語や文のまとまりごとに、スラッシュを入れる。

 

Aの「語や文章を不自然に区切って読むことがある」、「どこを読んでいるかを追いかけることが難しくなる」といった課題は、原因として単語ごとのまとまりが把握できていないという概念理解の不足や、追いかけている個所が分からなくなる視覚処理の問題が想定されます。

単語や文のまとまりごとにスラッシュを入れるというのは、単語の整理や視覚処理をしやすくする刺激プロンプトの役割を果たすため、Aの課題解決のために効果的である可能性が高いです。

選択肢4. 教室の掲示物を整理して、視覚的に余計な刺激をなくす。

×

 

視覚的に余計な刺激を少なくすることもAの課題改善に役立つ可能性はありますが、刺激が多いことによって注意が散漫になったり先行刺激が処理できなかったりといった問題が生じている描写はありません。

そのため刺激を減らす環境設定は、Aが授業に参加できるようにする読み書きの支援として適切と判断できかねます。

選択肢5. 黒板に書く文章と同じものをプリントにし、手元に置いて写し書きをさせる。

 

黒板の写し書きはAにとって技術的にも時間的にも制約を受ける課題になり、そういった状況は「書くことを避ける傾向」等のAのモチベーションにも影響を与えていることが示唆されています。

そういったことを鑑みると、黒板に書く文章と同じものをプリントにして渡しておくというのは板書を行うための反応努力を大きく減少させるため、Aが授業に参加するハードルが低くなります。

このことから、「教室において、Aが授業に参加できるようにする読み書きの支援」としては適切であると考えられます。

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