公認心理師 過去問
第7回(2024年)
問153 (午後 問76)

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問題

公認心理師試験 第7回(2024年) 問153(午後 問76) (訂正依頼・報告はこちら)

11歳の男児A、小学5年生。Aは、親の経済的困難のため、2歳のときに地域小規模児童養護施設に入所した。両親は、Aの入所後しばらくは面会に来ていたが、最近連絡が途絶えている。ある日、施設の公認心理師Bは、Aの担当ケアワーカーCから相談を受けた。Cによると、Aは元来穏やかな性格であるが、最近、親との記念写真を捨ててしまったり、居間でAが得意とする工作をしているときに、年少児に作品を壊されたと激怒したりと、情緒不安定な様子がみられる。あるとき、CがAに自室で作るよう言うと、「ここは僕の家だ。どこでも好きな所で作る権利が僕にはある」と泣いて主張した。
BとCの対応として、適切なものを2つ選べ。
  • 集団生活のルールをAと一緒に考える。
  • トラウマに焦点づけた認知行動療法を導入する。
  • 児童相談所に対して、一時保護の措置を依頼する。
  • Conners3を実施して、その結果を基に支援計画を作成する。
  • Aの両親の現状と今後の見込みについて、児童相談所に確認し、Aへの伝え方を検討する。

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この過去問の解説 (2件)

01

この問題で覚えておくべきポイントは以下のとおりです。

Aがどのような状態にあると解釈できるのか、また児童養護施設での対応とその根拠の説明が求められています。

では、問題を見てみましょう。

選択肢1. 集団生活のルールをAと一緒に考える。

Aは2歳から入所しているため、施設のルールを理解していないとは考えにくいです。親の写真を捨てるなど、情緒不安定な状態が確認されていることから、自分自身を見失っていることが容易に考えられます。年齢的にも思春期に差し掛かっており、一人で物の通りを考えることが難しい時期です。今までの流れを振り返ること、自分で自分のことを決められる体験を提供することは有益ですので、正解です。

選択肢2. トラウマに焦点づけた認知行動療法を導入する。

親との記念写真を捨ててはいますが、その背景が何らかのトラウマになりえる事象があったかは定かではありません。面会が来なくなったことへのストレスはあるとは思いますが、トラウマに焦点づけることは論外ですので、間違いです。

選択肢3. 児童相談所に対して、一時保護の措置を依頼する。

確かに、集団生活のルールを逸脱した行為と解釈することは可能であり、他の児童への影響は否めません。しかし、まだ何の対処もしていない状態で一時保護の措置を依頼することは、時期が早すぎると考えますので、不適切です。

選択肢4. Conners3を実施して、その結果を基に支援計画を作成する。

この質問紙はADHDや関連性のある問題を評価しています。情緒不安定な状態であれば、衝動性は容易に確認されますし、Aの行動は根拠が明確であることから、ADHDとは判断できません。そのため、検査をすることの価値は低いことから、間違いです。

選択肢5. Aの両親の現状と今後の見込みについて、児童相談所に確認し、Aへの伝え方を検討する。

なぜ、面会が途絶えているのか、それを知る権利がAにはあります。児童相談所は児童の入所、親への引き渡し(退所)を検討する機関ですので、Aの現状を踏まえて情報を得ること、どのように今後の見込みについてAに伝えるか検討することは適切ですので、正解です。

まとめ

子供の発達段階、身体的な側面だけでなく、思春期も含めた精神的成長に関して、整理しておきましょう。子供の反応をどのように解釈するかは、発達心理学も根拠となりえますので、確認しておきましょう。

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02

適切なものを2つ選ぶ問題ですので注意が必要です。

以下に解説します。

選択肢1. 集団生活のルールをAと一緒に考える。

 

元来穏やかな性格であるAの様子に変化が見られ、ケアワーカーに対しても「ここは僕の家だ。どこでも好きな所で作る権利が僕にはある」と泣いて主張するような状況からは、養護施設や職員へのコミットメントや信頼感が不安定な状態にあることが推察されます。

こういった際に、Aの意思を尊重しながら話し合いの場を作ることで、Aの意思を尊重しながら気持ちに向き合うことができます。

そういった対応は、Aにとって施設が居場所であることを再認識できたり、職員に受け止めてもらえた経験ができたりといったポジティブな影響が期待できます。

選択肢2. トラウマに焦点づけた認知行動療法を導入する。

×

 

Aに何らかのトラウマ的経験があることは否定できませんが、Aの行動がトラウマに基づくと断言できるかは問題文からは判断できません。

よって、この段階でトラウマに焦点づけた認知行動療法を導入するというのは尚早な対応になります。

選択肢3. 児童相談所に対して、一時保護の措置を依頼する。

×

 

児童相談所の一時保護は、児童を守るために必要と判断された際に措置されるものですが、本事例においては他害や自傷、虐待などAの心身の安全が担保できない状況にあると判断できません。

そうであるにも関わらず一時保護の措置を依頼するという行いは、Aからの移設への信頼を揺るがすものであり、極めて不適切な対応です。

選択肢4. Conners3を実施して、その結果を基に支援計画を作成する。

×

 

Conners3はADHD症状の評価、診断に用いられるアセスメントツールになります。

Aは2歳のころから入所しているが、行動問題を呈し始めたのは最近だという記述があり、生得的なADHD傾向が見られていたかどうかには疑問が残ります。

また、ADHDに特徴的な多動、不注意問題についての記述もなく、Conners3を用いてアセスメントを行う必要性は低いと考えられます。

選択肢5. Aの両親の現状と今後の見込みについて、児童相談所に確認し、Aへの伝え方を検討する。

 

最近Aの両親とは連絡が途絶えているという記事と、Aが行動問題を呈すようになった記述から、論理的に考えてAの行動問題には両親からの見捨てられ不安や傷つきが影響していると考えることができます。

そのため、両親や児童相談所と連携し、今後の見込みやAへの伝え方を検討するのは、問題の抜本的解決に寄与する対応だと考えられます。

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