第三種電気主任技術者の過去問
平成28年度(2016年)
法規 問78

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問題

第三種 電気主任技術者試験 平成28年度(2016年) 法規 問78 (訂正依頼・報告はこちら)

「電気設備技術基準の解釈」に基づいて、使用電圧6600V、周波数50Hzの電路に接続する高圧ケーブルの交流絶縁耐力試験を実施する。次の問に答えよ。
ただし、試験回路は図のとおりとする。高圧ケーブルは3線一括で試験電圧を印加するものとし、各試験機器の損失は無視する。また、被試験体の高圧ケーブルと試験用変圧器の仕様は次のとおりとする。

【高圧ケーブルの仕様】
ケーブルの種類:6600Vトリプレックス形架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブル(CVT)
公称断面積:100mm2、ケーブルのこう長:87m
1線の対地静電容量:0.45µF/km

【試験用変圧器の仕様】
定格入力電圧:AC0-120V、定格出力電圧:AC0-12000V
入力電源周波数:50Hz

交流絶縁耐力試験に必要な皮相電力(以下、試験容量という。)の値[kV・A]の計算の結果、試験容量が使用する試験用変圧器の容量よりも大きいことがわかった。そこで、この試験回路に高圧補償リアクトルを接続し、試験容量を試験用変圧器の容量より小さくすることができた。
このとき、同リアクトルの接続位置(図中のA~Dのうちの2点間)と、試験用変圧器の容量の値[kV·A]の組合せとして、正しいものを次の( 1 )~( 5 )のうちから一つ選べ。
ただし、接続する高圧補償リアクトルの仕様は次のとおりとし、接続する台数は1台とする。また、同リアクトルによる損失は無視し、A-B間に同リアクトルを接続する場合は、図中のA-B間の電線を取り除くものとする。

【高圧補償リアクトルの仕様】
定格容量:3.5kvar、定格周波数:50Hz、定格電圧:12000V
電流:292mA(12000V50Hz印加時)
問題文の画像
  • (高圧補償リアクトル接続位置)A-B間、(試験用変圧器の容量[kV·A])1
  • (高圧補償リアクトル接続位置)A-C間、(試験用変圧器の容量[kV·A])1
  • (高圧補償リアクトル接続位置)C-D間、(試験用変圧器の容量[kV·A])2
  • (高圧補償リアクトル接続位置)A-C間、(試験用変圧器の容量[kV·A])2
  • (高圧補償リアクトル接続位置)A-B間、(試験用変圧器の容量[kV·A])3

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この過去問の解説 (3件)

01

正解:【4】

※この問題は第38684問と関連しています。

第38684問から、ここで使用する値は次のようになっています。

 試験電圧 Vt = 10350 [V]

 S = 3952 [V・A]

試験において、負荷の電流を小さくするために A-C間 にインダクタンスを挿入し、電流の位相が負荷の電流と消し合うように調整できます。

リアクタンスXlは問題文にある電圧と電流から計算できます。

 Xl = V / I

  = 12000 / 0.292

  = 41096 [Ω]

よって、試験の時に流れる電流は Il は、

 Il = Vt / Xl

  = 10350 / 41096

  = 0.2518 [A]

変圧器に流れる電流Itは、

 It = I − Il

ここで、Iは試験中に流れる電流なので、I = S / Vt

よって、変圧器にかかる皮相電力Stは、

 St = Vt*It = Vt* ( I − Il )

  = Vt*(S / Vt − Il)

  = S − Vt*Il

  = 3952-10350*0.2518

  = 1345 [V・A]

  ≒ 1.35 [kV・A]

したがって、条件を満たす変圧器の容量は 2 [kV・A]となります。

以上により、選択肢の【4】が正解となります。

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02

地絡事故等により、抵抗に大きな充電電流Iが流れる場合、負荷と並列にリアクトルを接続します。

リアクトルを接続することで充電電流Icに対して位相が反対のILを重ね、充電電流Iを減らす事ができます。
これを補償リアクトルといいます。

以上により、高圧補償リアクトルの接続位置はA-C間となります。

次に試験用変圧器の容量ですが、試験用変圧器にかかる皮相電力Sを計算し、その計算結果より高い容量を選定しなければなりません。

皮相電力の公式は

皮相電力S=VI

試験電圧Vは(a)問題の解答である10,350ですので、Iを求めれば皮相電力Sが計算できます。

充電電流Iは

I=IcーIL

となるので、IcとILを求めます。

Ic=V/Xc

Xc=1/3ωC

Ic=3ωCV=3×2π×50×0.45×10^ー6×87/1000×10,350

Ic≒0.382

IL=V/XL

高圧補償リアクトルの仕様より

XL=12,000/0.292

XL=41,096

Ic=10,350/41,096

Ic≒0.252

充電電流Iは

I=0.382ー0.252

I=0.13

皮相電力Sは

S=10,350×0.13

S≒1.3 [KV・A]

よって、選択肢の中では皮相電力Sの1.3 [KV・A]より高い、2 [KV・A]を選定します。

以上により、正解は【4】となります。

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03

前問(https://kakomonn.com/denken3/questions/38684)からの続きとなります。

試験用変圧器の容量を抑えるには高圧補償リアクトルをA-C間に並列に接続する事が有効となります。

高圧補償リアクトルをA-C間に並列に接続する事で試験用変圧器から高圧ケーブルに流れる進みの充電電流を高圧補償リアクトルから流れる遅れ電流にによって相殺することで抑える事が出来るからです。

 

ここで問題で与えられている条件より高圧補償リアクトルの仕様は定格電圧:12000V時の充電電流は292mAとなっています。

前問より試験電圧は10350Vとなっているので、この時の電圧に換算した充電電流を求める必要があります。

・12000:10350=292×10-3:IL

上記の比の関係性から充電電流IL[A]を求めます。

・IL=(10350×292×10-3)/12000≒0.252[A]

 

試験用変圧器の巻線に流れる充電電流I´はキルヒーホッフの法則により次のような関係が成り立ちます。

・I´=IC+IL‥①

ケーブルの対地静電容量に流れる電流ICは90°進みで高圧補償リアクトルを流れる電流は90°遅れとなるのでベクトル和は次のようになります。

・I´=j0.382-j0.252=0.130[A]‥②

 

最後に改めて試験用変圧器の容量を求めます。

・S=10350×0.13≒1346×103=1.346[kV·A]

容量は1.346[kV·A]なので試験容量としては直近上位を選択しなければなりません

なので2.0[kV·A]が適切となります。

選択肢1. (高圧補償リアクトル接続位置)A-B間、(試験用変圧器の容量[kV·A])1

解説の冒頭の内容と一致しないので不適切です。

選択肢2. (高圧補償リアクトル接続位置)A-C間、(試験用変圧器の容量[kV·A])1

解説の冒頭の内容と一致しないので不適切です。

選択肢3. (高圧補償リアクトル接続位置)C-D間、(試験用変圧器の容量[kV·A])2

解説の冒頭の内容と一致しないので不適切です。

選択肢4. (高圧補償リアクトル接続位置)A-C間、(試験用変圧器の容量[kV·A])2

解説の冒頭の内容と一致するので適切です。

選択肢5. (高圧補償リアクトル接続位置)A-B間、(試験用変圧器の容量[kV·A])3

解説の冒頭の内容と一致しないので不適切です。

まとめ

計算値の最終的な答えが直近上位か四捨五入かは問題によって異なるので気を付けましょう。

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