第三種電気主任技術者の過去問
平成29年度(2017年)
機械 問48

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問題

第三種 電気主任技術者試験 平成29年度(2017年) 機械 問48 (訂正依頼・報告はこちら)

次の文章は、一般的な電気機器(変圧器、直流機、誘導機、同期機)の共通点に関する記述である。

a  (ア)と(イ)は、磁束の大きさ一定、電源電圧(交流機では周波数も)一定のとき回転速度の変化でトルクが変化する。
b  一次巻線に負荷電流と励磁電流を重畳して流す(イ)と(ウ)は、特性計算に用いる等価回路がよく似ている。
c  負荷電流が電機子巻線を流れる(ア)と(エ)は、界磁磁束と電機子反作用磁束のベクトル和の磁束に比例する誘導起電力が発生する。

上記の記述中の空白箇所(ア)、(イ)、(ウ)及び(エ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の( 1 )~( 5 )のうちから一つ選べ。
  • (ア)誘導機  (イ)直流機  (ウ)変圧器  (エ)同期機
  • (ア)同期機  (イ)直流機  (ウ)変圧器  (エ)誘導機
  • (ア)直流機  (イ)誘導機  (ウ)変圧器  (エ)同期機
  • (ア)同期機  (イ)直流機  (ウ)誘導機  (エ)変圧器
  • (ア)直流機  (イ)誘導機  (ウ)同期機  (エ)変圧器

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この過去問の解説 (2件)

01

解答・解説
a.
回転機のトルクT[N・m]は出力をP[W]、角速度をω[rad/s]、回転速度をN[min^-1]とすると
T=P/ω=P/(2π×N/60)[N・m]
で表されます。
磁束の大きさと電源電圧一定の条件では回転数に反比例することがわかります。
ここで同期機は同期速度以外ではトルクが発生しないので(ア)、(イ)は直流機と誘導機のどちらかとなります。
b.
一次巻線に負荷電流と励磁電流を流すかつ、等価回路が似ているのは誘導機と変圧器です。問題a.問題b.から(イ)は「誘導機」、(ウ)は問題b.にしかないことから「変圧器」となります。
c.
電機子反作用磁束の影響があるのは直流機と同期機です。
同じ電機子反作用ですが直流機と同期機、それぞれに与える影響は異なります。
問題a.問題c.から(ア)は「直流機」、(エ)は「同期機」となります。
以上から答えは3番の(ア)「直流機」 (イ)「誘導機」 (ウ)「変圧器」 (エ)「同期機」となります。

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02

ア~エが、どの電気機器になるのかを、a~cの文から穴埋めで求める問題です。

a~cの文を順番に読み解いていきます。

まず最初のaです。

a.(ア)と(イ)は、磁束の大きさ一定、電源電圧(交流機では周波数も)一定のとき回転速度の変化でトルクが変化する。

変圧器は回転するものが無いので、「トルク」というキーワードより、
(ア)と(イ)の対象から外れます。


直流機、誘導機、同期機のどれか2つです。

直流機は、直流電圧を加えて電機子に電流を流すことで、
磁束との間に電磁力が働いて電機子は回転します。

直流機のトルクTは、
電磁力Fと電磁力が働く点と回転軸までの距離rで表すと、

T=2F×r ---①

となります。
電磁力が働く導線は2本(行きと返り)があるため、電磁力Fは2倍になっています。

電磁力は、磁束密度Bと電流Iと導体の長さLで表すと、

F=BIL ---②

式②を式①に代入して、

T=2×BIL×r ---③

ここで、導体が磁場を横切る時の誘導起電力E(=ほぼ直流電圧)を
磁束密度Bと導体の速度v、導体の長さLで表すと

E=vBL
L=E/(v×B) ---④

式③と式④より、直流機のトルクは

T=2×E×I×r/(v×B) ---⑤

式⑤より、直流機のトルクは、磁束の大きさ一定、電源電圧一定のとき
導体の速度(回転速度)で変化します。

余談ですが、トルクは別式でも表されます。
電験では、こちらの方が良く使われる式です。

P=ωT
T=P/ω ---⑥

ωは、角速度(1秒間に進む角度)なので、
回転速度N(min^-1:1分間の回転数)で表すと、

ω=2π×(N/60) ---⑦


式⑦を式⑥に代入すると、


T=P/2π×(N/60)

となり、この式からもトルクは出力と
回転数(回転速度)に影響することが分かります。

補足ですが、トルクTと滑りsの関係を表す曲線(トルク-速度曲線)があります。
滑りsは次の式で表されます。
s=(同期速度Ns-回転速度N)÷同期速度Ns

滑りsとトルクの問題では、トルク−速度曲線が
ポイントとなります。

少し脱線してしまいましたが、残りの同期機と誘導機です。

同期機と誘導機の違いですが、
同期機は回転子が磁石で、誘導機は回転子が導体です。

誘導機は、導体が回転するので直流機と同じように電磁力が働きます。
磁束の大きさ一定、電源電圧一定のとき、
トルクは導体の速度(回転速度)で変化します。

同期機は、回転子が磁石なので、
同期速度が変わっても、磁石の吸引力で同期速度に追従します。
そして、同期速度で回転している時だけトルクが発生します。

同期機は、磁石の吸引力で追従できなくなるほどの重たい負荷なると同期がはずれます。

これらより、直流機と誘導機が、(ア)と(イ)になります。

次は、bです。

b.一次巻線に負荷電流と励磁電流を重畳して流す(イ)と(ウ)は、特性計算に用いる等価回路がよく似ている。

変圧器と直流機、誘導機、同期機で等価回路が似ているのは、変圧器と誘導機です。

変圧器と誘導機は、どちらとも等価回路が
一次回路と二次回路に分かれており、それぞれの回路に巻き線コイルがあります。

変圧器と誘導機が、(イ)と(ウ)になりますが、
aより、(イ)は直流機か誘導機でしたので、

(イ)が誘導機、(ウ)が変圧器、となります。

よって、(ア)は直流機になります。


では、最後のcです。

c.負荷電流が電機子巻線を流れる(ア)と(エ)は、
界磁磁束と電機子反作用磁束のベクトル和の磁束に比例する誘導起電力が発生する。

電機子反作用が起こるのは、
磁石(永久磁石や電磁石)を使っている直流機と同期機です。

aとbより、(ア)が直流機と求められたので、(エ)が同期機になります。

直流機では、コイルをブラシで短絡するため、火花が発生します。

直流機を発電機として使うと、減磁作用で電圧が低下します。

電動機で使うと、回転速度が上がります。

そのため、直流機では、補極を配置(補償巻き線)して、
電機子作用の軽減対策をすることがあります。


穴埋めの結果ですが、(ア)~(エ)は、

(ア)直流機
(イ)誘導機
(ウ)変圧器
(エ)同期機

となりましたので、「3」が答えとなります。

なお、aとbだけで「3」が選べる選択肢に
なっています。

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