第三種電気主任技術者の過去問
平成29年度(2017年)
機械 問52

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問題

第三種 電気主任技術者試験 平成29年度(2017年) 機械 問52 (訂正依頼・報告はこちら)

電力変換装置では、各種のパワー半導体デバイスが使用されている。パワー半導体デバイスの定常的な動作に関する記述として、誤っているものを次の( 1 )~( 5 )のうちから一つ選べ。
  • ダイオードの導通、非導通は、そのダイオードに印加される電圧の極性で決まり、導通時は回路電圧と負荷などで決まる順電流が流れる。
  • サイリスタは、オンのゲート電流が与えられて順方向の電流が流れている状態であれば、その後にゲート電流を取り去っても、順方向の電流に続く逆方向の電流を流すことができる。
  • オフしているパワーMOSFETは、ボディーダイオードを内蔵しているのでオンのゲート電圧が与えられなくても逆電圧が印加されれば逆方向の電流が流れる。
  • オフしているIGBTは、順電圧が印加されていてオンのゲート電圧を与えると順電流を流すことができ、その状態からゲート電圧を取り去ると非導通となる。
  • IGBTと逆並列ダイオードを組み合わせたパワー半導体デバイスは、IGBTにとって順方向の電流を流すことができる期間をIGBTのオンのゲート電圧を与えることで決めることができる。IGBTにとって逆方向の電圧が印加されると、IGBTのゲート状態にかかわらずIGBTにとって逆方向の電流が逆並列ダイオードに流れる。

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この過去問の解説 (2件)

01

解答
(2)が間違っています。
サイリスタはp形半導体とn形半導体をpnpn交互に並べた4層構造の半導体です。
p形に+、n形に-の電圧をかけた状態でn形の間にあるp形に電流を加えることで順方向の電流が流れます。
この状態でゲート電流を切っても順方向電流は流れ続けますが、逆方向の電圧を加えるとnpnpとなり、ゲート電流を流しても逆方向電流は流れません。

解説
(1)は正しいです。
問題文の通りです。
p形側に+、n側に-の電圧を加えるとpからnに向かって電流が流れます。
これを順方向電流といいます。
n側に+、p側に-の電圧を加えると電流は流れませんが、電圧を上げていくとあるところで急激に電流が流れだします。

(3)は正しいです。
ボディダイオードとはFET内部に形成されるpn接合部のことです。
FETはp形半導体とn形半導体で構成されており、ゲート―ソース間に電圧を印加することでドレインからソースに向かって電流が流れますが、逆電圧を加えるとソースからドレインに向かって電流が流れます。

(4)は正しいです。
IGBTとは絶縁ゲート型バイポーラトランジスタといい、高速でスイッチングでき、大電流にも耐えられるので電力制御を目的に使用されることが多いです。

(5)は正しいです。
問題文は電圧形インバータの説明をしています。

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02

パワー半導体デバイスの問題です。

電圧が数十V以上で、電流が1A以上の半導体デバイスをパワー半導体と呼ばれています。
電力変換装置は、電圧も電流もそれ以上なのでパワー半導体デバイスを使います。

電力変換装置だけでなくノートパソコンやデジカメなどでも、
ACアダプタにはパワー半導体デバイスが使われています。

それでは、問題文にあるそれぞれの半導体デバイスについて説明します。

・ダイオード

ダイオードとは、P型半導体とN型半導体がつながった2端子のデバイスです。
P型半導体側がアノード端子、N型半導体側がカソード端子です。
アノード端子に、カソード端子よりも大きな電圧(0.7V程度)を加えると、
アノード → カソードの方向に電流が流れます。
この向きがダイオードの順方向となっています。
ダイオードは逆方向には流れません。これを整流作用といいます。
+と−に振れる交流波形を、+だけの波形に整流できるので、
交流を直流に変換する時に、ダイオードの整流作用が必要になります。

ダイオードについて書かれてある ”1” の正誤を確認します。

1.ダイオードの導通、非導通は、そのダイオードに印加される電圧の極性で決まり、
導通時は回路電圧と負荷などで決まる順電流が流れる。

導通は電流が流れること、非導通は流れないことです。

ダイオードを流れる電流は、回路電圧と負荷(抵抗など)で決まります。
回路電圧が5Vで、抵抗が500Ωなら、電流は0.01Aです。

順電流とは、順方向に流れる電流のことです。

よって、”1”は 正しいです。

補足ですが、カソード側に数十Vの電圧をかけると、逆向きに電流が流れます。
これはツェナー効果と呼びます。
直流5Vを直流3.3Vに下げたい時、電流が数mAとジュール熱が少ない時に、
ダイオードのツェナ効果を使います。
ツェナ効果の用途で使うダイオードをツェナダイオードと呼びます。


・サイリスタ

サイリスタは、P型とN型がPNPNの4重構造になっています。
中間層にゲート端子があり、3端子になっています。
両端にあるPとNがそれぞれアノード端子,カソード端子となっています。(ダイオードと同じ)
流れる電流は、アノード→カソードになります。(ダイオードと同じ)

ゲート端子に電流(ゲート電流)を与えると、順方向に電流が流れます。
一度、順方向に電流が流れると、ゲート電流を与えなくても順方向の電流は流れ続けますが、逆方向には電流は流れません。(ダイオードと同じ)

サイリスタについて書かれてある ”2” の正誤を確認します。

2 .サイリスタは、オンのゲート電流が与えられて順方向の電流が流れている状態であれば、その後にゲート電流を取り去っても、順方向の電流に続く逆方向の電流を流すことができる。

サイリスタは逆方向の電流を流せないので、”2”は誤りです。


・MOSFET(電界効果トランジスタ)

MOSFETは、ダイオードではなく、トランジスタに分類されます。

MOSFETは、ゲート,ソース,ドレインの3端子があります。

ゲート端子に電圧を加えていると、ソース・ドレイン間に電流が流れます。
ゲート端子の電圧を加えなければ、ソース・ドレイン間に電流は流れません。

ゲート端子の電圧が一定であれば、ソース・ドレイン間に流れる電流は一定ですので、定電流ダイオードとしても使うことができます。

そして、ソース端子およびドレイン端子の間にはボディダイオードがあります。
ボディダイオードは、ソース・ドレイン間のPN接合でできるダイオードなので、寄生ダイオードとも呼ばれています。

モータなどの誘導性負荷(コイルがある負荷)は、負荷をオフした時に、
インダクタンスによる逆起電力が発生します。
ボディダイオードを使って逆起電力を逃がす回路が作れます。
逆起電力を逃すためのダイオードは、フリーホイールダイオードと呼ばれています。

MOSFETについて書かれてある ”3” の正誤を確認します。

3 .オフしているパワーMOSFETは、ボディーダイオードを内蔵しているので
オンのゲート電圧が与えられなくても逆電圧が印加されれば逆方向の電流が流れる。

ボディとソース端子の間には、ボディダイオードがあるので、逆電圧が加えられれば逆方向の電流が流れます。モータの逆起電力を逃がすのに使えます。

よって、”3”は正しいです。


・IGBT

IGBTの端子は、ゲート,エミッタ,コレクタです。

IGBTは、MOSFETとトランジスタの良い所を取ったデバイスになっています。

ゲート端子はMOSFETと同じで電圧を加えると、コレクタ・エミッタ間に電流が流れます。
MOSFETと同じで、ゲート端子に電圧を加えている時間はコレクタ・電流が流れます。
ゲート端子の電圧を加えなければ、電流は流れません。

IGBTはMOSFETよりも大きな電流が必要なモータを動かしたりしますが、
MOSFETのような寄生ダイオードがIGBT(コレクタ・エミッタ間)にはありません。

そのため、フリーホイルダイオードが別で必要になります。
IGBTのコレクタ・エミッタ間に逆並列でダイオードを組み合わせることで、逆起電力を逃がします。


IGBTについて書かれてある ”4”と”5”の正誤を確認します。

4 .オフしているIGBTは、順電圧が印加されていてオンのゲート電圧を与えると順電流を流すことができ、その状態からゲート電圧を取り去ると非導通となる。

IGBTはゲート端子に電圧を与えている間で、コレクタ・エミッタ電流を流します。

よって、”4”は正しいです。


5 .IGBTと逆並列ダイオードを組み合わせたパワー半導体デバイスは、
IGBTにとって順方向の電流を流すことができる期間をIGBTのオンのゲート電圧を与えることで決めることができる。
IGBTにとって逆方向の電圧が印加されると、
IGBTのゲート状態にかかわらずIGBTにとって
逆方向の電流が逆並列ダイオードに流れる。

逆並列ダイオードは、フリーホイルダイオードのことです。
IGBTには寄生ダイオードがないので、フリーホイルダイオードが別で必要になります。
IGBTに逆並列ダイオードを組み合わせることで、逆方向の電流が逆並列ダイオードに流れます。

よって、”5”は正しいです。

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