第三種電気主任技術者の過去問
平成29年度(2017年)
機械 問54

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問題

第三種 電気主任技術者試験 平成29年度(2017年) 機械 問54 (訂正依頼・報告はこちら)

次の文章は、送風機など電動機の負荷の定常特性に関する記述である。

電動機の負荷となる機器では、損失などを無視し、電動機の回転数と機器において制御対象となる速度が比例するとすると、速度に対するトルクの代表的な特性が以下に示すように二つある。
一つは、エレベータなどの鉛直方向の移動体で速度に対して(ア)トルク、もう一つは、空気や水などの流体の搬送で速度に対して(イ)トルクとなる特性である。
後者の流量制御の代表的な例は送風機であり、通常はダンパなどを設けて圧損を変化させて流量を制御するのに対し、ダンパなどを設けずに電動機で速度制御することでも流量制御が可能である。このとき、風量は速度に対して(ウ)して変化し、電動機に必要な電力は速度に対して(エ)して変化する特性が得られる。したがって、必要流量に絞って運転する機会の多いシステムでは、電動機で速度制御することで大きな省エネルギー効果が得られる。

上記の記述中の空白箇所(ア)、(イ)、(ウ)及び(エ)に当てはまる組合せとして、正しいものを次の( 1 )~( 5 )のうちから一つ選べ。
  • (ア)比例する  (イ)2乗に比例する  (ウ)比例     (エ)3乗に比例
  • (ア)比例する  (イ)一定の      (ウ)比例     (エ)2乗に比例
  • (ア)比例する  (イ)一定の      (ウ)2乗に比例  (エ)2乗に比例
  • (ア)一定の   (イ)2乗に比例する  (ウ)比例     (エ)3乗に比例
  • (ア)一定の   (イ)2乗に比例する  (ウ)2乗に比例  (エ)2乗に比例

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この過去問の解説 (2件)

01

この問題は、電動機の力を持ち上げるために使う場合と、回転に使う場合の2パターンで考えます。


まず、エレベータです。

エレベータの場合、電動機の力でエレベータと人や荷物を持ち上げるパターンです。
物を持ち上げる時のトルクを求める式は、

T(N・m)=F(N)・r(m) ---①
となります。

電動機の力Fは、重さm(kg)、加速度g(m/s^2)で表すと
※通常、加速度はa(m/s^2)で表すのですが、エレベータにかかるのは重力加速度なのでg(m/s^2)にしてます。

F(N)=m×g ---②
となります。

距離をエレベータの滑車の半径rとすると、式①に式②を代入して

T=F×r=m×g×r ---③
となります。

速度の変化を時間tで割ったものが重力加速度g(m/s^2)なので、

g(m/s^2)=Δv(m/s)÷ t(s) ---④
となります。

式③に式④を代入して、

T=m×(Δv/t)×r

Δvは速度変化なので、速度に対してトルクは一定となります。

よって、(ア)は「一定」が入ります。


次は、電動機の力を回転に使うパターンです。
空気や水などの流体の搬送は、
ファンやポンプの羽根車を回転させて流体を搬送するので、
電動機の力を回転に使うパターンで考えます。

先ほどのエレベータでは重さm(kg)としていましたが、
流体の場合は、重さm(kg)に速度v(m/s^2)が関係してきます。

例えば、問題文で挙げられている送風機だと、
空気密度ρ(kg/m^3)と搬送面積A(m^2)、空気の速度v(m/s)、時間t(s)より

m(kg)=ρ×A×v×t

1秒間に動かす空気の重さは、

m(kg)=ρ×A×v ---⑤
となります。

回転トルクTは、角速度ω(rad/s)と電動機の電力P(W)で表すと、

T=P/ω ---⑥
となります。

それでは、電動機の電力Pと角速度ωを求めます。

まず、電動機の電力Pです。
電力は、1秒あたりのエネルギー(J/s)です。
電動機が動かしている空気の 運動エネルギーから 電力を求めます。

速度vで流れる空気(送風機なので)の 運動エネルギーE(J)を、
空気の重さmと速度vで表すと、

E(J)=1/2×m×v^2 ---⑦
となります。

1秒間の運動エネルギーで考えると、
P(W)=1/2×m×v^2 ---⑧

式⑧に式⑤を代入すると
P(W)=1/2×(ρ×A×v)×v^2=1/2×ρ×A×v^3

P(W)=1/2×ρ×A×v^3 ---⑨
となります。


次に角速度のωです。
角速度ωを送風機の回転速度v、送風機の半径rで表すと、

ω(rad/s)=v/r ---⑩

式⑥に式⑨と式⑩を代入して、

T=P/ω=1/2×(ρ×A×v^3)/(v/r)
=1/2×(ρ×A×v^2)×r

T=1/2×(ρ×A×v^2)×r
となります。

送風機のトルクは、速度に対して2乗に比例します。

よって、(イ)は、「2乗に比例」が入ります。

送風機で流す空気量Q(m^3/s)は、搬送面積A(m^2)と空気の速度v(m/s)で表すと

Q(m^3/s)=A×v ---⑪
となります。

風量は速度に対して比例して変化します。

よって、(ウ)は「比例」が入ります。


電動機に必要な電力は、式⑨(P=1/2×ρ×A×v^3)より
速度の3乗に比例して変化します。

よって、(エ)は「3乗に比例」が入ります。


それでは、選択肢の中から正解を選びます。

(ア)一定、(イ)2乗に比例、(ウ)比例、(エ)3乗に比例、なので

正解は「4」になります。

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02

解答・解説
質量m[kg]の物体を持ち上げるのに必要な力F[N]は重力加速度をg[m/s^2]とすると
F=mg[N]
となります。
電動機に直結された滑車を用いてこの質量m[kg]の物体を持ち上げるのに必要なトルクT[N・m]は滑車の半径をr[m]として
T=F・r=mgr[N・m]
となります。
これがエレベータに用いられる電動機の必要トルクとなり、速度に関係なく一定のトルク特性を持つことがわかります。
送風機の場合、力の対象が空気ですので空気の密度をρ[kg/m^3]、ダクトの断面積をA[m^2]、速度をv[m/s]とすると空気の質量m[kg]は
m=ρ・A・v[kg]
となります。
ここで、風量をQ[m^3/s]とすると
Q=A・v[m^3/s]
となります。
必要なエネルギーE[J]は
E=(1/2)・m・v^2=(1/2)・ρ・A・v^3[J]
となります。
Eを単位時間当たりのエネルギーとすると消費電力P[W]に等しいので、
P=(1/2)・ρ・A・v^3[W]
トルクT[N・m]は角速度ω[rad/s](=速度v[m/s]/送風機の半径r[m])として
T=P/ω=P・r/v=(1/2)・ρ・A・r・v^3/v=(1/2)・ρ・A・r・v^2[N・m]
となります。
上記より、送風機のトルクは速度の2乗に比例、風量は速度に比例、必要電力は速度の3乗に比例することがわかります。
よって答えは4番の(ア)一定の比例、(イ)2乗に比例する、(ウ)比例、(エ)3乗に、となります。

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