第三種電気主任技術者の過去問
令和4年度(2022年)下期
機械 問9

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問題

第三種 電気主任技術者試験 令和4年度(2022年)下期 機械 問9 (訂正依頼・報告はこちら)

変圧器に関する記述として、誤っているものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
  • 無負荷の変圧器の一次巻線に正弦波交流電圧を加えると、鉄心には磁気飽和現象やヒステリシス現象が生じるので電流は非正弦波電流となる。この電流を励磁電流といい、第3次をはじめとする多くの次数の高調波を含む。
  • 変圧器の励磁電流のうち、一次電圧と同相成分を鉄損電流、π/2[rad]遅れた成分を磁化電流という。
  • 変圧器の鉄損には主にヒステリシス損と渦電流損がある。電源の周波数をf、鉄心に用いる電磁鋼板の厚さをtとすると、ヒステリシス損はfに比例し、渦電流損は(f×t)の2乗に比例する。ただし、鉄心の磁束密度を同一とする。
  • 変圧器の損失には主に鉄損と銅損があり、両者が等しくなったときに最大効率となる。無負荷損の主なものは鉄損で、電圧と周波数が一定であれば負荷に関係なく一定である。また、負荷損の主なものは銅損で、負荷電流の2乗に比例する。
  • 変圧器の等価回路において、励磁回路は励磁コンダクタンスと励磁サセプタンスで構成される。両者を合わせて励磁アドミタンスという。励磁コンダクタンスに流れる電流は磁化電流に対応し、励磁サセプタンスで発生する損失は鉄損に対応している。

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この過去問の解説 (2件)

01

この問題のポイントは各選択肢の文章を読む込むにあたって、核となるワードを見つけ出し誤りに気づけるかになります。それぞれの選択肢を見ていきます。

選択肢1. 無負荷の変圧器の一次巻線に正弦波交流電圧を加えると、鉄心には磁気飽和現象やヒステリシス現象が生じるので電流は非正弦波電流となる。この電流を励磁電流といい、第3次をはじめとする多くの次数の高調波を含む。

変圧器には巻線に電流を流す事で磁束を発生させる励磁回路があり、磁束を作る磁化電流と鉄損電流の和が励磁電流となります。

無負荷の変圧器の一次巻線に正弦波交流電圧を加えると鉄心には磁気飽和現象やヒステリシス現象が生じるので電流は非正弦波電流(ひずみ波)となります。この非正弦波電流には第3高調波をはじめ多くの高調波を含んでいます。

なのでこの記述は適切です。

選択肢2. 変圧器の励磁電流のうち、一次電圧と同相成分を鉄損電流、π/2[rad]遅れた成分を磁化電流という。

変圧器の励磁電流は主磁束をつくる成分を持つ磁化電流と鉄損を供給する成分の鉄損電流のベクトル和が励磁電流となります。

鉄損電流は一次電圧と同相となり、磁化電流はπ/2[rad](90°)遅れとなっています。

なのでこの記述は適切です。

選択肢3. 変圧器の鉄損には主にヒステリシス損と渦電流損がある。電源の周波数をf、鉄心に用いる電磁鋼板の厚さをtとすると、ヒステリシス損はfに比例し、渦電流損は(f×t)の2乗に比例する。ただし、鉄心の磁束密度を同一とする。

ヒステリシス損は次のように表すことができます。

・PH=KH×f×Bm1.6~2.0[W/m3]  

上記式よりヒステリシス損は周波数に比例しています。

次に渦電流損は次のように表すことができます。

・Pe=Ke×(f×Bmt)2V[W]

上記式より渦電流損は(f×t)の2乗に比例しています。

なのでこの記述は適切です。

選択肢4. 変圧器の損失には主に鉄損と銅損があり、両者が等しくなったときに最大効率となる。無負荷損の主なものは鉄損で、電圧と周波数が一定であれば負荷に関係なく一定である。また、負荷損の主なものは銅損で、負荷電流の2乗に比例する。

鉄損Pi電圧と周波数が一定であれば負荷に関係なく一定です。

銅損Pcの公式は次のようになります。

銅損Pc=電流I2×抵抗R[W]

以上の事から銅損は電流の2乗に比例します。

変圧器は鉄損=銅損の時に効率は最大となります。

なのでこの記述は適切です。

選択肢5. 変圧器の等価回路において、励磁回路は励磁コンダクタンスと励磁サセプタンスで構成される。両者を合わせて励磁アドミタンスという。励磁コンダクタンスに流れる電流は磁化電流に対応し、励磁サセプタンスで発生する損失は鉄損に対応している。

変圧器の励磁アドミタンスY0は次のように表します。

・Y0=g0-jb0[s]

※g0:励磁コンダクタンス b0励磁サセプタンス

実数部は抵抗の励磁コンダクタンスになり流れる電流は鉄損電流となります。

虚数(j)部は漏れリアクタンスで励磁サセプタンスになり流れる電流は磁化電流となります。

なのでこの記述は不適切です。

まとめ

変圧器の等価回路を書いて、それぞれの成分、特性を理解できればこのような問題に対応できます。

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02

変圧器の損失の種類と各損失の特性に関する問題です。

選択肢1. 無負荷の変圧器の一次巻線に正弦波交流電圧を加えると、鉄心には磁気飽和現象やヒステリシス現象が生じるので電流は非正弦波電流となる。この電流を励磁電流といい、第3次をはじめとする多くの次数の高調波を含む。

問題文の通りです。

選択肢2. 変圧器の励磁電流のうち、一次電圧と同相成分を鉄損電流、π/2[rad]遅れた成分を磁化電流という。

励磁電流は、鉄損電流と磁化電流から構成されます。

問題文にある通り、鉄損電流は変圧器が持つコンダクタンス成分で発生する電流のため、一次電圧と同相です。

一方、磁化電流は変圧器が持つインダクタンス成分で発生するため、位相は鉄損にと比較してπ/2 [rad]遅れます。

選択肢3. 変圧器の鉄損には主にヒステリシス損と渦電流損がある。電源の周波数をf、鉄心に用いる電磁鋼板の厚さをtとすると、ヒステリシス損はfに比例し、渦電流損は(f×t)の2乗に比例する。ただし、鉄心の磁束密度を同一とする。

問題文の通り、変圧器の鉄損の主なものはヒステリシス損渦電流損です。

ヒステリシス損とは、磁性体の磁区の向きの変化により発生する損失です。

この損失は、

 Wh = Kh × f × B2

で求めることができます。

  Kh:比例定数

  f:周波数

  B:磁束密度

渦電流損とは、鉄心内の磁界束変化で生じた起電力によって電流が生じ、それを打ち消すために流れる電流による損失です。

この損失は、

 We = Ke × (t × f × Bm)2

で求めることができます。

  Ke:比例定数

  t:鉄心の厚さ

  f:周波数

  Bm:最大磁束密度

選択肢4. 変圧器の損失には主に鉄損と銅損があり、両者が等しくなったときに最大効率となる。無負荷損の主なものは鉄損で、電圧と周波数が一定であれば負荷に関係なく一定である。また、負荷損の主なものは銅損で、負荷電流の2乗に比例する。

問題文の通り、変圧器の主な損失は鉄損と銅損です。

電験3種において、「鉄損 = 銅損となった際に最大効率となる」と覚えておいて問題ありません。

また、鉄損は電圧・周波数が一定の場合は変動はなく、負荷に依存しません。

一方で銅損は負荷の変化に依存し、その損失の大きさは負荷電流の2乗に比例します。

選択肢5. 変圧器の等価回路において、励磁回路は励磁コンダクタンスと励磁サセプタンスで構成される。両者を合わせて励磁アドミタンスという。励磁コンダクタンスに流れる電流は磁化電流に対応し、励磁サセプタンスで発生する損失は鉄損に対応している。

励磁回路は励磁コンダクタンス励磁サセプタンスで構成され、それらを合わせて励磁アドミタンスといいます。

励磁サセプタンスとは変圧器が持つインダクタンス成分のことで、流れる電流は磁化電流に対応します。

また、励磁コンダクタンスで発生する損失は鉄損に対応しています。

よって、この選択肢が誤りとなります。

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