大学入学共通テスト(地理歴史) 過去問
令和4年度(2022年度)本試験
問9 (世界史B(第1問) 問9)

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問題

大学入学共通テスト(地理歴史)試験 令和4年度(2022年度)本試験 問9(世界史B(第1問) 問9) (訂正依頼・報告はこちら)

世界史上の学者や知識人について述べた次の文章を読み、後の問いに答えよ。

次の資料は、近代中国の学者である王国維が著した論文の一部である。(引用文には、省略したり、改めたりしたところがある。)

資料
およそ歴史を研究する際、ある民族の歴史を知るためには、別の民族によって書かれた記録に頼らないわけにはいかない。例えば、塞外(さいがい)(注)の民族である匈奴や鮮卑、西域の諸国については、中国の正史に記載があるほかには、信頼できる歴史記録はほとんどない。
その後、契丹と( エ )の文化が発展したが、彼ら独自の文字は既に使われなくなり、それぞれの民族について、漢語で編纂された『遼史』と『金史』があるほかには、やはり信頼できる歴史記録はほとんどない。
モンゴルについて言えば、今日でも広大な土地と独自の文字を有しているが、人々はd 宗教に夢中となり、学問を重視しなかったため、古い時代の史書の原本は元のままでは残っておらず、むしろ漢語やペルシア語の文献によって伝わっている。
(注)塞外一長城の外側。

モンゴルが学問を重視しなかったという説明は乱暴に過ぎるが、史料が様々な理由で失われうることは事実である。一方、残された史料の方も鵜呑(うの)みにしてよいとは限らない。王国維は上の文章に続けて、モンゴルについて記すある漢語史料の信頼性に問題があることを論じている。

前の文章が述べるように、ある民族や集団について研究する際に、別の民族や集団が残した記録を史料とする例は少なくない。次の研究あ・いが、その例に当てはまるか当てはまらないかについて述べた文として最も適当なものを、後のうちから一つ選べ。

研究
あ 『三国志』魏書東夷伝倭人条(魏志倭人伝)を用いた、邪馬台国についての研究
い パスパ文字(パクパ文字)で書かれたフビライの命令文書を用いた、元朝についての研究
  • あのみ当てはまる。
  • いのみ当てはまる。
  • 両方とも当てはまる。
  • 両方とも当てはまらない。

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この過去問の解説 (1件)

01

この問題では、「ある民族を研究する際に、別の民族が残した記録を使っているかどうか」に注目して、それぞれの研究(あ・い)が該当するかを判断します。
王国維の論文では、自分たち自身による記録が少ない民族を、他民族の記録から研究するしかない状況が語られています。

 

 

 

あ:『三国志』魏書東夷伝倭人条(魏志倭人伝)を用いた、邪馬台国についての研究

・魏志倭人伝は、中国の歴史書『三国志』の一部で、中国(魏)の役人が、日本列島にいた倭人(邪馬台国など)について書いたものです。

・邪馬台国自身による記録は存在せず、魏(他国)による記録が主な史料となっています。

 

→これは「別の民族が残した記録を使って自民族を研究している例」に当たります。

 

 

 

い:パスパ文字(パクパ文字)で書かれたフビライの命令文書を用いた、元朝についての研究

・パスパ文字は、元のフビライ(モンゴル皇帝)が、モンゴル語を表すためにチベット文字を基に作らせた文字です。

・つまり、これは元朝の内部で作成されたモンゴル人自身による記録です。

・フビライの命令文書も、モンゴル人によるモンゴル人の記録に当たるため、他民族の記録を利用しているわけではありません。

選択肢1. あのみ当てはまる。

正しいです。

選択肢2. いのみ当てはまる。

誤りです。

選択肢3. 両方とも当てはまる。

誤りです。

選択肢4. 両方とも当てはまらない。

誤りです。

まとめ

「魏志倭人伝」は中国人が倭人について書いた記録なので条件に当てはまりますが、「パスパ文字による元朝の記録」はモンゴル人自身によるもので条件に当てはまりません。
したがって、「あのみ当てはまる。」が適当です。

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