大学入学共通テスト(地理歴史) 過去問
令和4年度(2022年度)本試験
問35 (日本史B(第1問) 問1)

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問題

大学入学共通テスト(地理歴史)試験 令和4年度(2022年度)本試験 問35(日本史B(第1問) 問1) (訂正依頼・報告はこちら)

次の文章は、高校生の陽菜(はるな)さんと大輝(だいき)さんとの会話である。この文章を読み、後の問いに答えよ。(資料は、一部省略したり、書き改めたりしたところもある。)

陽菜:日本史を勉強していて気付いたんだけれど、小野妹子は「おのの/いもこ」、北条政子は「ほうじょう/まさこ」と読み、「の」があったり、なかったりするよね。これはなぜなのか知っている?
大輝:僕も同じような疑問を持ったので、先生に質問したことがあったよ。その時、姓(せい)と苗字(名字)の違いに関係する、というアドバイスをもらったんだ。そこで、次のようなメモを作成したことがあるよ。

大輝さんのメモ
姓(せい)
・氏(うじ)は大王やヤマト政権に仕える同族集団をもとに成立。
・姓(かばね)は大王から氏に与えられた称号。
・律令制下では、姓は氏と姓の総称とされた。
・天皇は姓を持たない。
・平安時代に姓が形骸化して、姓は専ら氏を指すようになった。
・平安時代以降、源・平・藤原・橘が代表的な姓となる。
苗字(名字)
・家名として私称されたことに始まる。
・叙位・任官などの際には、苗字ではなく姓が用いられる。
a 武家の苗字は、所領の地名に由来するものが多い
・明治時代には、それまでの百姓や町人にも苗字の公称が許された

大輝:姓(せい)は、やがて氏(うじ)と同じものになるけど、苗字とは違うものだったんだね。北条政子の場合、平氏の一族であり、平政子が正式な名前と考えられているみたいだね。
陽菜:ということは、北条政子は( ア )だから、「の」がつかないんだね。
大輝:そう、大正解。だけど、例外があるとすれば、豊臣秀吉かな。本来であれば、「とよとみの/ひでよし」というべきなんだけどなあ。b 秀吉が「木下」や「羽柴」を名乗ったように、同じ人でもいろんな名前があったんだ。それに近世になると、百姓や町人たちも、苗字を持っていたようだよ。苗字帯刀の禁止というように、あくまでも公称が許されなかっただけなんだ。
陽菜:へえそうなんだ。すっかり勘違いしていた……。
大輝:明治時代になると、政府は( イ )ために、平民にも苗字を名乗らせたんだ。
陽菜:明治の民法では、女性は嫁いだ家の苗字を使うように義務付けたんだね。
大輝:そのとおり。その後、第二次世界大戦後に民法が改正され、結婚した夫婦の苗字はどちらかにそろえれば良くなったんだ。夫婦がどのような苗字を名乗るかは、現代でも大きな議論になっているね。

空欄(ア)(イ)に入る文の組合せとして正しいものを、次のうちから一つ選べ。
  • ア 苗字(名字)+名(個人名)
    イ 華族・士族・平民の身分を撤廃する
  • ア 苗字(名字)+名(個人名)
    イ 近代国家の国民として把握する
  • ア 姓(せい)+名(個人名)
    イ 華族・士族・平民の身分を撤廃する
  • ア 姓(せい)+名(個人名)
    イ 近代国家の国民として把握する

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この過去問の解説 (2件)

01

この問題では、「姓」と「苗字」の特徴や当時の制度について理解できているかを問う問題です。

 

 

選択肢についてそれぞれ説明します。

ア:答えは「苗字(名字)+名(個人名)」です。

大輝さんのセリフでは、「北条政子は平氏の一族で平政子が正式な名前」と説明されています。

大輝さんのメモでは、平安時代以降、平は代表的な姓の1つとして例に挙げられています。

つまり、「北条」は姓ではなく、苗字(名字)であると分かります。

 

イ:答えは「近代国家の国民として把握する」です。

明治時代は、かつての封建的制度が撤廃され、四民平等の世となりました。

四民平等の世では、版籍奉還によって、藩主と藩士の関係から 藩主・公家→華族、藩士・旧幕臣→士族、百姓→平民 という身分になりました。

平民は、苗字が許されたり華・士族との結婚や職業選択の自由が認められるようになったりしました。

また、新たな籍族に伴い戸籍編成が行われ(壬申戸籍)、華族・士族・平民が同じ義務を持つ国民として認識されるようになりました。

つまり、平民に苗字を名乗らせたのは、「近代国家の国民として把握するため」というのが当てはまります。

 

選択肢1. ア 苗字(名字)+名(個人名)
イ 華族・士族・平民の身分を撤廃する

イの選択肢が間違っているので、誤りです。

 

選択肢2. ア 苗字(名字)+名(個人名)
イ 近代国家の国民として把握する

ア、イどちらの選択肢も合っているので、正しいです。

選択肢3. ア 姓(せい)+名(個人名)
イ 華族・士族・平民の身分を撤廃する

ア、イどちらの選択肢も間違っているので、誤りです。

選択肢4. ア 姓(せい)+名(個人名)
イ 近代国家の国民として把握する

アの選択肢が間違っているので、誤りです。

 

まとめ

この問題は、「姓」と「苗字」の意味から時代ごとの制度を考える必要がありました。各時代の身分制度や国と国民の関係を理解しておきましょう。

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02

この問題は、日本における「姓(せい)」と「苗字(名字)」の歴史的な違いと、その呼び方や制度の変化について理解できているかを問うものです。

 

 

 

文章では、北条政子が「ほうじょう/まさこ」と読まれる理由として、「苗字ではなく姓であるため、『の』がつかない」と説明されています。

これは、「北条」が苗字(名字)+名(個人名)の形に見えるけれど、実は所領名に由来する苗字ではなく、姓(せい)+名(個人名)であるからです。

苗字(名字)+名(個人名)という形は後の時代に定着しました。

 

また、明治時代に平民にも苗字の公称が義務付けられた理由について、「(イ)近代国家の国民として把握するため」と説明されています。

明治政府は、戸籍制度を整備し、徴兵・納税・教育などを国民に義務づける近代国家を目指すため、すべての国民に苗字を持たせて管理しやすくしました。

 

 

選択肢を整理します。

アに入る文

「苗字(名字)+名(個人名)」が正しいです。

北条政子は「平政子」と呼ばれるように、もとは「姓(せい)+名」でしたが、苗字が一般化した後は「苗字+名」が基本形になります。

 

イに入る文

「近代国家の国民として把握する」が正しいです。

明治政府は身分制度の廃止だけでなく、戸籍制度とともに国民全体を把握する仕組みとして苗字を導入しました。

選択肢1. ア 苗字(名字)+名(個人名)
イ 華族・士族・平民の身分を撤廃する

誤りです。

選択肢2. ア 苗字(名字)+名(個人名)
イ 近代国家の国民として把握する

正しいです。

選択肢3. ア 姓(せい)+名(個人名)
イ 華族・士族・平民の身分を撤廃する

誤りです。

選択肢4. ア 姓(せい)+名(個人名)
イ 近代国家の国民として把握する

誤りです。

まとめ

日本では時代によって「姓」と「苗字」が使い分けられており、明治以降は国民管理の目的から苗字の公称が義務化されました。

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