大学入学共通テスト(地理歴史) 過去問
令和4年度(2022年度)本試験
問36 (日本史B(第1問) 問2)
問題文
陽菜:日本史を勉強していて気付いたんだけれど、小野妹子は「おのの/いもこ」、北条政子は「ほうじょう/まさこ」と読み、「の」があったり、なかったりするよね。これはなぜなのか知っている?
大輝:僕も同じような疑問を持ったので、先生に質問したことがあったよ。その時、姓(せい)と苗字(名字)の違いに関係する、というアドバイスをもらったんだ。そこで、次のようなメモを作成したことがあるよ。
大輝さんのメモ
姓(せい)
・氏(うじ)は大王やヤマト政権に仕える同族集団をもとに成立。
・姓(かばね)は大王から氏に与えられた称号。
・律令制下では、姓は氏と姓の総称とされた。
・天皇は姓を持たない。
・平安時代に姓が形骸化して、姓は専ら氏を指すようになった。
・平安時代以降、源・平・藤原・橘が代表的な姓となる。
苗字(名字)
・家名として私称されたことに始まる。
・叙位・任官などの際には、苗字ではなく姓が用いられる。
・a 武家の苗字は、所領の地名に由来するものが多い。
・明治時代には、それまでの百姓や町人にも苗字の公称が許された
大輝:姓(せい)は、やがて氏(うじ)と同じものになるけど、苗字とは違うものだったんだね。北条政子の場合、平氏の一族であり、平政子が正式な名前と考えられているみたいだね。
陽菜:ということは、北条政子は( ア )だから、「の」がつかないんだね。
大輝:そう、大正解。だけど、例外があるとすれば、豊臣秀吉かな。本来であれば、「とよとみの/ひでよし」というべきなんだけどなあ。b 秀吉が「木下」や「羽柴」を名乗ったように、同じ人でもいろんな名前があったんだ。それに近世になると、百姓や町人たちも、苗字を持っていたようだよ。苗字帯刀の禁止というように、あくまでも公称が許されなかっただけなんだ。
陽菜:へえそうなんだ。すっかり勘違いしていた……。
大輝:明治時代になると、政府は( イ )ために、平民にも苗字を名乗らせたんだ。
陽菜:明治の民法では、女性は嫁いだ家の苗字を使うように義務付けたんだね。
大輝:そのとおり。その後、第二次世界大戦後に民法が改正され、結婚した夫婦の苗字はどちらかにそろえれば良くなったんだ。夫婦がどのような苗字を名乗るかは、現代でも大きな議論になっているね。
下線部aに関連して、中世のある武士について述べた次の文章X・Yと、その人物の姓や苗字a~dとの組合せとして正しいものを、後のうちから一つ選べ。
X 育った信濃国の地名で通称された。敵対する一族を都から追い落として朝日(旭)将軍とも呼ばれたが、従兄弟との合戦で敗死した。
Y 姓(せい)は源氏だが、所領の地名を苗字として名乗った。室町幕府から東国支配を任されたが、将軍と対立して自害に追い込まれた。
a 平
b 源
c 新田
d 足利
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問題
大学入学共通テスト(地理歴史)試験 令和4年度(2022年度)本試験 問36(日本史B(第1問) 問2) (訂正依頼・報告はこちら)
陽菜:日本史を勉強していて気付いたんだけれど、小野妹子は「おのの/いもこ」、北条政子は「ほうじょう/まさこ」と読み、「の」があったり、なかったりするよね。これはなぜなのか知っている?
大輝:僕も同じような疑問を持ったので、先生に質問したことがあったよ。その時、姓(せい)と苗字(名字)の違いに関係する、というアドバイスをもらったんだ。そこで、次のようなメモを作成したことがあるよ。
大輝さんのメモ
姓(せい)
・氏(うじ)は大王やヤマト政権に仕える同族集団をもとに成立。
・姓(かばね)は大王から氏に与えられた称号。
・律令制下では、姓は氏と姓の総称とされた。
・天皇は姓を持たない。
・平安時代に姓が形骸化して、姓は専ら氏を指すようになった。
・平安時代以降、源・平・藤原・橘が代表的な姓となる。
苗字(名字)
・家名として私称されたことに始まる。
・叙位・任官などの際には、苗字ではなく姓が用いられる。
・a 武家の苗字は、所領の地名に由来するものが多い。
・明治時代には、それまでの百姓や町人にも苗字の公称が許された
大輝:姓(せい)は、やがて氏(うじ)と同じものになるけど、苗字とは違うものだったんだね。北条政子の場合、平氏の一族であり、平政子が正式な名前と考えられているみたいだね。
陽菜:ということは、北条政子は( ア )だから、「の」がつかないんだね。
大輝:そう、大正解。だけど、例外があるとすれば、豊臣秀吉かな。本来であれば、「とよとみの/ひでよし」というべきなんだけどなあ。b 秀吉が「木下」や「羽柴」を名乗ったように、同じ人でもいろんな名前があったんだ。それに近世になると、百姓や町人たちも、苗字を持っていたようだよ。苗字帯刀の禁止というように、あくまでも公称が許されなかっただけなんだ。
陽菜:へえそうなんだ。すっかり勘違いしていた……。
大輝:明治時代になると、政府は( イ )ために、平民にも苗字を名乗らせたんだ。
陽菜:明治の民法では、女性は嫁いだ家の苗字を使うように義務付けたんだね。
大輝:そのとおり。その後、第二次世界大戦後に民法が改正され、結婚した夫婦の苗字はどちらかにそろえれば良くなったんだ。夫婦がどのような苗字を名乗るかは、現代でも大きな議論になっているね。
下線部aに関連して、中世のある武士について述べた次の文章X・Yと、その人物の姓や苗字a~dとの組合せとして正しいものを、後のうちから一つ選べ。
X 育った信濃国の地名で通称された。敵対する一族を都から追い落として朝日(旭)将軍とも呼ばれたが、従兄弟との合戦で敗死した。
Y 姓(せい)は源氏だが、所領の地名を苗字として名乗った。室町幕府から東国支配を任されたが、将軍と対立して自害に追い込まれた。
a 平
b 源
c 新田
d 足利
- X ― a Y ― c
- X ― a Y ― d
- X ― b Y ― c
- X ― b Y ― d
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この過去問の解説 (2件)
01
この問題は、X・Yの文章内で記されている人物や出来事から、それぞれで示されている人物を明らかにして解くものです。
X・Yが示している時代は、選択肢にある苗字から鎌倉時代末期~室町時代初期であると分かります。
X・Yそれぞれの人物を明らかにしていきます。
[Xの人物]
Xで示されている人物は、新田義貞です。新田義貞の姓は源氏です。「新田」という苗字は、上野国(こうずけのくに)の新田荘に由来します。
新田は、当時の得宗北条高時(文章内「敵対する一族」)などを滅ぼし、1333年の鎌倉幕府滅亡に貢献しました。しかし、1336年に従兄弟の足利尊氏と対立し、敗死しました。(湊川の戦い)
Xの選択肢は「a平」と「b源」なので、新田の姓である「b源」が答えです。
[Yの人物]
Yで示されている人物は、足利持氏です。「足利」という苗字は、下野国(しもつけのくに)の足利荘に由来します。
足利尊氏が開いた鎌倉府を管理する鎌倉公方を担い、補佐として関東管領を上杉氏が担いました。
1439年、幕府に反抗的な持氏と関東管領上杉憲実の対立を機に、6代将軍足利義教(文章内「将軍」)は上杉を支援し持氏を自害に追い込みました。(永享の乱)
Yの選択肢は、「c新田」と「d足利」なので、足利持氏の苗字である「d足利」が答えです。
どちらの選択肢も間違っているので、この組み合わせは誤りです。
Xの選択肢が間違っているので、この組み合わせは誤りです。
Yの選択肢が間違っているので、この組み合わせは誤りです。
どちらの選択肢も合っているので、この組み合わせが正しいです。
この問題では、姓と苗字だけでなく、X・Yがそれぞれ示す出来事もおさえる必要がありました。また、文章内に記されていた合戦名や将軍名が大きなヒントとなります。鎌倉時代滅亡から室町時代成立の流れを再度確認しましょう。
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02
この問題は、姓(せい)と苗字(名字)の違いに注目しながら、中世の武士たちがどのように名乗っていたかを理解する内容です。
文章XとYの人物像とその名乗り方を手がかりに、正しい組合せを選びます。
【文章X】
この記述は、新田義貞(にった よしさだ)を指しています。
新田義貞は、源氏の一族であり、姓は「源」です。
苗字は、所領のあった「新田荘(現在の群馬県太田市周辺)」に由来するため、苗字は「新田」です。
鎌倉幕府打倒に貢献し「朝日将軍」とも呼ばれました。
後に足利尊氏と対立し、敗れて戦死しました。
→よって、Xの人物は「姓:源」「苗字:新田」です。
【文章Y】
この記述は、足利義教(あしかが よしのり)や足利持氏(もちうじ)のような、室町時代の関東管領・鎌倉公方を指していますが、特に該当するのは足利持氏です。
足利持氏は、室町幕府将軍家の一族で、姓は「源」です。
苗字は、「足利荘」(現在の栃木県足利市)に由来するため、苗字は「足利」です。
将軍足利義教と対立し、最終的に敗れて自害しました。
→ よって、Yの人物は「姓:源」「苗字:足利」です。
組合せで確認すると、
X:源氏の「新田」 → b(源)+c(新田)
Y:源氏の「足利」 → b(源)+d(足利)
したがって、正しい選択肢は、
「X―b Y―d」 です。
誤りです。
誤りです。
誤りです。
正しいです。
中世の武士たちは、姓として「源」や「平」などの氏族名を持ち、所領地に由来する苗字を名乗ることが一般的でした。
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