大学入学共通テスト(地理歴史) 過去問
令和4年度(2022年度)本試験
問49 (日本史B(第3問) 問4)

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問題

大学入学共通テスト(地理歴史)試験 令和4年度(2022年度)本試験 問49(日本史B(第3問) 問4) (訂正依頼・報告はこちら)

次の文章は、中世の海と人々との関わりの歴史について関心を持った高校生のひろみさんが、先生を訪ねたときの会話である。この文章を読み、後の問いに答えよ。(資料は、一部省略したり、書き改めたりしたところもある。)

先生:私たちの暮らす日本は、四方を海に囲まれています。昔の人は、海の向こうに極楽浄土を見たり、龍宮城の物語を想像したりしてきました。
ひろみ:海には様々なイメージが与えられ、海と深い関わりを持つ独特の文化が育まれてきたのですね。
先生:中世になると、a 各地に港町ができて、海上交通がより発達します。海上交通が発達すれば、b 国内外の流通が活発になって技術革新や各地の特産物が生まれ、それらを扱う様々な職能を持つ職人が登場します。例えば、四国で生産された藍が京都へ運ばれ、染め物に使われるようになりました。
ひろみ:c 朝鮮からは、木版印刷の大蔵経ももたらされたのですよね。印刷技術が発達して、情報の伝播は飛躍的に高まったのでしょうね。
先生:よく知っていますね。このような流通を活発化させたのが、倭寇のような海をまたいで活動する人たちです。やがてはヨーロッパ人まで交流に加わることで、地球規模の海のネットワークに広がっていきます。
ひろみ:そうですか。倭寇は、ただの海賊だと思っていました。歴史上重要な役割を担っていたのですね。
先生:そうです。さらに、戦国の争乱は列島各地で人・物・文化の移動を加速させました。鉄砲などの新しい軍事技術を普及させ、アジアやヨーロッパから出版文化がもたらされます。ただ、こうした海をめぐる動きについては、まだまだ謎が多いのです。最近、海底の発掘調査が進んでいるみたいで、今後はd 考古遺跡からもいろんなことが明らかになるかもしれませんね。

下線部cに関連して、次の史料は16世紀の朝鮮王朝内で当時の日本と朝鮮との貿易について述べられた一節である。この史料を踏まえて、当時の貿易に関して述べた後の文a~dについて、正しいものの組合せを、後のうちから一つ選べ。

史料
日本国使、通信を以て名と為(な)し、多く商物を齎(もたら)し、銀両八万に至る。銀は宝物と雖(いえど)も、民、之(これ)を衣食すべからず。実に無用たり。我国、方(まさ)に綿布を以て行用(注1)し、民、皆此(これ)に頼りて生活す。民の頼る所を以て、其(そ)の無用の物に換え、利は彼に帰し、我れ其の弊(へい)を受く。甚(はなは)だ不可たり。況(いわ)んや倭使の銀を齎すこと、在前(注2)になき所なり。今若(も)し貿(あきない)を許さば、則ち其の利の重きを楽(この)み、後来(注3)の齎す所、必ずや此に倍せん。
(『朝鮮王朝実録』)

(注1)行用:行使。用いること。
(注2)在前:以前。事前。
(注3)後来:こののち。将来。

a 銀は日本の輸入品で、その多くは朝鮮からもたらされて、流通量が大幅に増加した。
b 綿布は日本の輸入品で、その多くは朝鮮からもたらされて、衣類などの材料として普及した。
c 朝鮮は、現在の貿易をそのまま続ければ、未来に大きな利益をもたらすと主張している。
d 朝鮮は、現在の貿易をそのまま続ければ、未来に大きな弊害を及ぼすと主張している。
  • a・c
  • a・d
  • b・c
  • b・d

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この過去問の解説 (2件)

01

この問題は、史料を読み取り、日朝の貿易の歴史と関連させながら正誤を考えるものです。

この史料は、朝鮮が日本との貿易に関する心境を記したものです。

 

答えは、「b・d」です。

 

まず、史料を訳していきます。

日本国使は、通信という名目で、多くの商物をもたらし、銀は八万両に及ぶ。銀は、宝物とはいえ、民衆はこれを衣食にすることはできない。実際に役に立たないのである。我が国は、まさに綿布を用いて、民衆はこれに頼って生活している。民衆の生活を支えるものを、その銀という役に立たないものに換えれば、利益は日本に渡り、我が国は弊害を受けることになる。これは甚だよろしくない。ましてや、日本国使が銀をもたらすことは、以前にないことである。今もしこのまま貿易を許せば、利益の大きさに喜び、将来ももたらされることは、必ずこれより倍増するだろう。

 

史料を踏まえてa~dをそれぞれ説明します。

[a 銀は日本の輸入品で、その多くは朝鮮からもたらされて、流通量が大幅に増加した]

→×

 史料を見ると、銀は日本からの輸出品です。朝鮮は、銀を必要としないため、迷惑しています。

 

[b 綿布は日本の輸入品で、その多くは朝鮮からもたらされて、衣類などの材料として普及した]

→〇

 史料から、綿布は朝鮮から日本への輸入品です。朝鮮同様、日本でも綿布を用いて生活していました。

 

[c 朝鮮は、現在の貿易をそのまま続ければ、未来に大きな利益をもたらすと主張している]

→×

 史料最後に「今若し貿を許さば、則ち其の利の重きを楽み、後来の齎す所、必ずや此に倍せん」と書かれていますが、これは朝鮮側から見る日本の将来を指しています。つまり、朝鮮が弊害を受けて今よりも損をするということになります。

 

[d 朝鮮は、現在の貿易をそのまま続ければ、未来に大きな弊害を及ぼすと主張している]

→〇

 史料中盤に、朝鮮で用いられている綿布を輸出し、日本側だけに利益をもたらすことは朝鮮側の弊害を受けるとの内容が書かれています。

 

選択肢1. a・c

どちらの文章も間違っているので、誤っています。

選択肢2. a・d

aの文章が間違っているので、誤りです。

選択肢3. b・c

cの文章が間違っているので、誤りです。

 

選択肢4. b・d

どちらの文章も合っているので、正しいです。

 

まとめ

この問題では、知識を活用するよりも史料を正確に読み取れるかが鍵となっています。

重要な箇所を抜き取り、正しい答えを導き出しましょう。

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02

16世紀の朝鮮と日本の貿易について書かれた史料では、当時の貿易の内容と、それに対する朝鮮側の懸念が示されています。

史料の内容と選択肢を照らし合わせて見ていきます。

 

 

まず史料の要点を整理します。

・日本の使者は「通信」という名目でやってきて、銀を多く持ち込んだ

・朝鮮では銀は価値があるとはいえ、民衆の日常生活に役立たないとされている。

・一方、朝鮮では綿布が生活必需品として使われていた。

・銀と綿布の交換は、朝鮮側にとって損である(弊を受ける)とし、これを許すと今後ますます銀の持ち込みが増えると警告している。

 

 

各選択肢の検討です。

a:銀は日本の輸入品で、その多くは朝鮮からもたらされて、流通量が大幅に増加した。
→ 銀は日本から朝鮮へ持ち込まれたと書かれており、逆方向です。

この文は誤りです。

 

b:綿布は日本の輸入品で、その多くは朝鮮からもたらされて、衣類などの材料として普及した。
→ 史料の通り、綿布は朝鮮国内で用いられていた生活必需品で、日本への輸出品だったと考えられます。

この文は正しいです。

 

c:朝鮮は、現在の貿易をそのまま続ければ、未来に大きな利益をもたらすと主張している。
→ 「甚だ不可たり」「弊を受く」「此に倍せん」などの記述から、むしろ貿易を続けることに否定的です。

この文は誤りです。

 

d:朝鮮は、現在の貿易をそのまま続ければ、未来に大きな弊害を及ぼすと主張している。
→ まさにその趣旨のことが書かれており、この文は正しいです。

 

 

よって、正しいのは
b・d です。

選択肢1. a・c

誤りです。

選択肢2. a・d

誤りです。

選択肢3. b・c

誤りです。

選択肢4. b・d

正しいです。

まとめ

16世紀の朝鮮と日本の貿易では、日本が大量の銀を持ち込む一方、朝鮮では綿布が重要な生活資源となっており、不公平な交換に対する懸念が表明されていました。

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