大学入学共通テスト(地理歴史) 過去問
令和4年度(2022年度)追・再試験
問18 (世界史B(第4問) 問3)

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問題

大学入学共通テスト(地理歴史)試験 令和4年度(2022年度)追・再試験 問18(世界史B(第4問) 問3) (訂正依頼・報告はこちら)

歴史を研究する上で重要な行為の一つとして、複数の資料を読み比べ、意味を考察することがある。そうした比較について述べた次の文章Bを読み、後の問いに答えよ。

B 次の資料1は、イギリスのa 国王ヘンリ3世が成人となった年に、彼によって承認された文書の一部である。この文書は、その後の国王たちによって確認されることはあったものの、長らく政治の表舞台で用いられることはなかった。
しかし、17世紀に国王が専制的な政治を行うと、この状況に変化が生じる。
資料2は、この時期、b イギリスの議会が国王に提出した権利の請願の一部である。
資料1と資料2とを読み比べると、( イ )ことが分かる。議会は、国王たちによって認められてきた文書を利用して、専制的な政治を行っていた当時の国王に対抗しようとしたのである。この頃から、資料1は、王の支配から国民の権利を守るための文書として、新たな意義を与えられることになった。(引用文には、省略したり、改めたりしたところがある。)

資料1  ヘンリ3世によって承認された文書の一部
第29条 今後、いかなる自由人も、適法な判決又は国の法によらない限り、逮捕・監禁されてはならず、彼のいかなる自由保有地も諸特権も自由な慣習法上の諸権利も奪われてはならず、法の保護の外に置かれると宣告されたり、追放されたり、又は他の何らかの方法で侵害されたりしてはならない。(後略)

資料2  権利の請願の一部
第3項 また、大憲章と呼ばれる制定法によって、次のことが宣言され、定められた。いかなる自由人も、適法な判決又は国の法によらない限り、逮捕・監禁されてはならず、彼の自由保有地も諸特権も自由な慣習上の諸権利も奪われてはならず、法の保護の外に置かれると宣告されたり、追放されたり、又は何らかの方法で侵害されたりしてはならない。

下線部aの治世に起こった出来事について述べた文あ・いと、Bの文章中の( イ )に入れる文X~Zとの組合せとして正しいものを、後の選択肢のうちから一つ選べ。

下線部aの治世に起こった出来事
あ  イギリス国王が、ローマ教皇によって破門された。
い  シモン=ド=モンフォールが、貴族を率いてイギリス国王に対抗した。

イに入れる文
X  資料1では、法に基づかない逮捕・監禁が認められているが、資料2では、法に基づかない逮捕・監禁が認められていない
Y  ジェームズ2世に提出された資料2では、資料1と同様に、法に基づかない逮捕・監禁が認められていない
Z  資料2では、ヘンリ3世やその後の国王たちによって認められてきた資料1と同様に、法に基づかない逮捕・監禁が認められていない
  • あ ― X
  • あ ― Y
  • あ ― Z
  • い ― X
  • い ― Y
  • い ― Z

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この過去問の解説 (2件)

01

この問題は、イギリスのヘンリ3世の治世で起きた出来事と、資料1・資料2の内容を比較し、議会と国王の関係を理解する力を問うています。特に、法に基づく自由と権利の保障に関わる文書の意味を考察する問題です。

選択肢1. あ ― X

破門された事実は重要ですが、資料1で法に基づかない逮捕・監禁が認められているという記述はありません。誤りです。

選択肢2. あ ― Y

ジェームズ2世時代の資料2は資料1と同じ内容であり、破門の事実は直接関係しません。誤りです。

選択肢3. あ ― Z

破門の事実は資料の文脈と異なり、関連性が薄いです。 誤りです。

選択肢4. い ― X

資料1で法に基づかない逮捕・監禁が認められているとは書かれていません。誤りです。

選択肢5. い ― Y

ジェームズ2世時代の資料2の説明としては正しい部分もありますが、シモン=ド=モンフォールの事実と結びつかず不適切です。 誤りです。

選択肢6. い ― Z

シモン=ド=モンフォールが貴族を率いて王に対抗したことが重要な出来事で、議会の力が強まるきっかけとなりました。
 資料2は資料1と同様に法に基づかない逮捕・監禁を認めていない内容で、議会が国王に対抗するために大憲章を引用したことを表しています。正解です。

まとめ

覚えておきたいポイント

ヘンリ3世の時代にシモン=ド=モンフォールが貴族を率いて国王に対抗し、議会の基礎が形成されました。

「大憲章(マグナ・カルタ)」は、国王の権力を制限し、法の支配と国民の権利保障を定めた重要な文書です。

17世紀の議会は、専制的な国王に対抗するため、この大憲章の原則を用いて抵抗しました。

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02

【ヘンリ3世の時代について】

・ヘンリ3世は13世紀イギリスの国王(在位:1216~1272年)

・この時代の重要な事件は
シモン=ド=モンフォールの乱(貴族たちの反乱) (1258年のオックスフォード条項 → 1265年に初の身分制議会を招集)

※「ローマ教皇による破門」は、ジョン王(ヘンリ3世の父)の時代の話(マグナ=カルタ成立の背景)

 

→つまり、下線部(ヘンリ3世)に関係する出来事は
シモン=ド=モンフォールが、貴族を率いてイギリス国王に対抗した。」となります。

 

【資料1と資料2の比較】

・資料1(ヘンリ3世承認の文書)と
・資料2(権利の請願)は、
どちらも「法に基づかない逮捕・監禁は許さない」と主張しています。

選択肢1. あ ― X

破門はジョン王時代であり、資料1も資料2も逮捕・監禁を否定しているため誤りです。

選択肢2. あ ― Y

破門はジョン王時代であり、権利の請願はチャールズ1世時代の提出なので誤りです。

選択肢3. あ ― Z

破門はジョン王時代であるため誤りです。

選択肢4. い ― X

資料1も資料2も逮捕・監禁を否定しているため誤りです。

選択肢5. い ― Y

権利の請願はチャールズ1世時代の提出なので誤りです。

選択肢6. い ― Z

正しい組み合わせです。【正解】

まとめ

ヘンリ3世の治世では、王権の専制化に反発して、貴族たちがシモン=ド=モンフォールを中心に反乱を起こしました。
また、資料1(マグナ=カルタなどに基づく権利保障)と資料2(権利の請願)は、いずれも「法に基づかない逮捕・監禁」を否定する内容であり、王権に対抗する根拠として用いられました。

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