大学入学共通テスト(地理歴史) 過去問
令和4年度(2022年度)追・再試験
問89 (地理B(第4問) 問6)

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問題

大学入学共通テスト(地理歴史)試験 令和4年度(2022年度)追・再試験 問89(地理B(第4問) 問6) (訂正依頼・報告はこちら)

ヨーロッパに関する次の問いに答えよ。

次の図は、旧東ドイツ地域に存在し、1993年に閉山した褐炭(かったん)*の採掘場とその周辺について、1980年と2015年の土地利用を示したものである。図に関連することがらについて述べた文章中の下線部①~④のうちから、適当でないものを一つ選べ。
*石炭の一種で不純物を多く含む。

ドイツでは、褐炭は発電や化学工業に使われてきた。図の褐炭採掘場は、大規模な露天掘りによってできた凹地が閉山後に湖に改変されたほか、自然保護地区が設けられ、かつてのボタ山に展望塔が設置されるなど、観光客も訪れる場所となった。また、褐炭加工場や化学工場の跡地は森林になった
この地域の土地利用変化には、ドイツの1次エネルギー供給に関する政策の変化が反映されている。ドイツでは、他地域の閉山した鉱山においても、自然環境の再生や、産業の歴史を示す遺構を活用・保存する取組みがみられ、産業遺産の有効利用が図られている。
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この過去問の解説 (2件)

01

この問題は、旧東ドイツ地域の褐炭採掘地の土地利用変化(1980年→2015年)を示した図をもとに、そこに関する記述の正誤を判断するものです。褐炭は環境負荷の高い燃料ですが、ドイツでは閉山後の環境再生・観光・再生可能エネルギー導入といった多様な用途への転換が図られてきました。


 

選択肢1. ①

2015年の図には、自然保護地区(破線)と展望塔(▲)が設置されており、環境再生と観光利用の両立が図られている様子が明確です。これは実際の旧鉱山跡地でよく見られる事例です。適切です。

選択肢2. ②

1980年の図では、褐炭加工場(■)や化学工場(●)が褐炭採掘場の南側に存在していましたが、2015年の図にはその位置に森林の記号(斜線)は見られません。むしろその周辺は工業・事業所団地の計画地(斜線入りの格子)やボート乗り場などに変化しています。したがって「森林になった」というのは図から読み取れない誤りです。不適切です。

選択肢3. ③

ドイツでは原子力や化石燃料(褐炭を含む)からの脱却を進める「エネルギー転換政策(Energiewende)」を採用しており、再生可能エネルギー(太陽光など)への転換を促しています。図にも太陽光発電施設(〇)が設置されており、政策の変化が土地利用に反映されていることが読み取れます。適切です。

選択肢4. ④

ドイツでは、産業遺産を保存し観光資源や教育資源として活用する取り組みが盛んです。ルール工業地帯などがその代表例であり、展望塔や案内施設の整備が行われています。2015年の図でも、ボタ山に展望塔が設置されており、この記述は正当です。適切です。

まとめ

覚えておくべきポイント:

褐炭=環境負荷が高い/再生可能エネルギーへの転換対象です。

閉山後の土地=湖化(排水→水面化)、自然保護、観光・再利用が進んでいます。産業遺産=環境・教育・観光の再資源化が図られています。


 


 

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02

が適当ではありません。

 

2015年の図では、褐炭加工場や化学工場の跡地は森林ではなく、湖や計画中の産業・事業所団地に転用されています。

他の下線部①・③・④は図やドイツの実情と一致します。

選択肢1. ①

2015年図に太い破線で示された自然保護地区が旧採掘場内を取り囲み、ボタ山には展望塔が設置されています。
閉山鉱山を観光資源化する事例として妥当です。

選択肢2. ②

1980 年図の■(加工場)と●(化学工場)があった場所は、2015年図で湖(水面)斜線の「計画中の産業・事業所団地」に変わっています。
灰色の森林パターンは別の位置にしか描かれておらず、跡地が森林化したとは読み取れません。
不適切です。

選択肢3. ③

ドイツは1990年代以降、石炭依存から再生可能エネルギー拡大へ政策転換(エネルギーヴェンデ)を進めました。
閉山・湖化・太陽光発電計画など、図の変化はこの政策と整合します。

選択肢4. ④

ルール地方のツォルフェライン炭鉱など、閉山鉱山を博物館・文化施設に転用する動きが盛んです。
展望塔や旧設備の保存は、産業遺産活用の一例で適切です。

まとめ

旧東ドイツの褐炭採掘場は、
・湖化と自然保護で景観再生
・展望塔やボート乗り場で観光振興
・太陽光発電や新産業団地で経済転換
という多面的活用が進んでいます。

跡地の森林化を誤認しないよう、土地利用図は凡例と位置を照合して確認することが大切です。

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