大学入学共通テスト(地理歴史) 過去問
令和5年度(2023年度)本試験
問11 (世界史B(第2問) 問5)

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問題

大学入学共通テスト(地理歴史)試験 令和5年度(2023年度)本試験 問11(世界史B(第2問) 問5) (訂正依頼・報告はこちら)

世界史上において、君主の地位は様々な形で継承された。それについて述べた次の文章を読み、後の問いに答えよ。

次の資料1・2は、ファーティマ朝のカリフについて、後の王朝の二人の歴史家がその正統性を論じた文章の概略である。

資料1
私はファーティマ朝のカリフをこの『カリフたちの歴史』では採り上げなかった。彼らがクライシュ族ではないため、b カリフの資格がないからである。
ある法官によると、彼らの王朝の開祖が北アフリカで王朝を建てた時、アリーの子孫であると自称したが、系譜学者たちは誰一人彼を知らなかったという。また伝えられるところによると、ファーティマ朝の支配者の一人が、( ウ )の支配者に対して侮辱する手紙を送った時、( ウ )の支配者は、「あなたは私たちウマイヤ家の系譜を知っていて、私たちのことを侮辱した。しかし、私たちはあなたたちのことなど知らない」と返答したという。
このようなことから、私は彼らをカリフと認めず、記さなかったのである。

資料2
多くの歴史家に受け取られている愚かな情報の中には、ファーティマ朝カリフがアリーの子孫であることを否定するものがあるが、それは競争相手を非難してアッバース朝カリフに取り入る目的で作られたものである。アッバース朝カリフに仕える人々にとっては、ファーティマ朝にシリアやエジプトを奪われたまま奪還できない無能力を取り繕うのに好都合だったからである。
しかし、アッバース朝カリフがファーティマ朝成立当初に地方総督へ送った手紙の中には、ファーティマ朝カリフの系譜について言及があり、その手紙が、彼らがアリーの子孫であるということをはっきりと証明している。

カリフは、中世のムスリムによって、イスラーム共同体の指導者としてただ一人がその地位に就くとみなされていた。しかし10世紀にファーティマ朝や( ウ )の支配者もカリフを称し、複数のカリフが長期間並立したことで、ムスリムが従うべき正しい指導者は誰かという問題は、さらに複雑なものとなった。
資料1・2の著者を含め、スンナ派の学者たちは、カリフになるための資格に関して、ムスリムであることに加えて、7世紀初頭にメッカに住んでいたクライシュ族の子孫であることも必要な条件であると考えていた。ここで言及されているウマイヤ家もアリー家も、そしてアッバース家も、クライシュ族である。

下線部bの歴史について述べた文として最も適当なものを、次の選択肢のうちから一つ選べ。
  • 預言者ムハンマドが死亡すると、アブー=バクルが初代カリフとなった。
  • アブデュルハミト2世が、カリフ制を廃止した。
  • ブワイフ朝の君主はバグダードに入った後、カリフとして権力を握った。
  • サファヴィー朝が、アッバース朝(アッバース家)のカリフを擁立した。

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この過去問の解説 (1件)

01

「預言者ムハンマドが死亡すると、アブー=バクルが初代カリフとなった」 

という文が最も適当です。

 

カリフの地位はムハンマドの後継者として共同体を導く役割で始まり、アブー=バクルが最初に就任した事実は、カリフの正統性を論じる資料1・2の議論と直接関わります。

選択肢1. 預言者ムハンマドが死亡すると、アブー=バクルが初代カリフとなった。

632年、ムハンマドの死後にメディナで合意が形成され、アブー=バクルが初代カリフに選出されました。

クライシュ族出身であり、後続のカリフ資格論の基準にもなった出来事です。

選択肢2. アブデュルハミト2世が、カリフ制を廃止した。

オスマン帝国のアブデュルハミト2世(在位1876〜1909)はカリフ位を保持しましたが、廃止したのは1924年のトルコ共和国です。

選択肢3. ブワイフ朝の君主はバグダードに入った後、カリフとして権力を握った。

ブワイフ朝(10世紀)はバグダードを支配しましたが、カリフ位は保持せず、アッバース朝カリフを名目的に擁立して実権を握っただけです。

選択肢4. サファヴィー朝が、アッバース朝(アッバース家)のカリフを擁立した。

サファヴィー朝(16世紀以降のイラン)はシーア派王朝で、アッバース家のカリフとは関わりがありません。

まとめ

カリフ制の起点となるアブー=バクルの就任こそが、資料が示す「クライシュ族出身者のみがカリフ資格を持つ」という議論の土台です。

その他の選択肢は人物・時代・事実のいずれかが一致せず、資料の論点を説明する根拠にはなりません。

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