大学入学共通テスト(地理歴史) 過去問
令和5年度(2023年度)本試験
問21 (世界史B(第4問) 問1)

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問題

大学入学共通テスト(地理歴史)試験 令和5年度(2023年度)本試験 問21(世界史B(第4問) 問1) (訂正依頼・報告はこちら)

歴史を考察する上で、資料は不可欠である。世界史上の様々な歴史資料について述べた次の文章を読み、後の問いに答えよ。

あるクラスで、次の貨幣1・2を基に、授業が行われている。

先生:この2枚の歴史的な貨幣は、東地中海沿岸地域において造られたものです。貨幣1と貨幣2はとても似ていますが、図柄の細部が異なっています。皆さんが調べてきたことを報告してください。
広田:貨幣1は7世紀前半に、発行国の首都であるコンスタンティノープルで造られた金貨です。ソリドゥスと呼ばれる形式の貨幣で、品質が高いことで知られていました。表の面には、発行当時の皇帝とその共同統治者が描かれ、裏面には、中央に十字架、周縁に皇帝の礼賛文が書かれています。
鈴木:貨幣1と同様の形式の貨幣は、地中海世界において国や地域を超えて信用され、流通していました。西アジア地域では、以前から貨幣の使用が活発でしたので、ムアーウィヤが開いた王朝にも征服地で使用する貨幣の発行が求められたようです。
佐々木:貨幣2は、その王朝が貨幣1を模倣して、7世紀後半にシリア地域で発行した金貨です。貨幣2の表の面には人物像が残っていますが、裏面にはアラビア語の銘文が刻まれ、預言者ムハンマドの名前も見られます。このことから、この王朝の支配者がイスラーム教を信仰していることを主張していると分かります。また、図柄にも改変が加えられているように見えます。
鈴木:貨幣2の裏面で、十字架が1本の棒の図柄に変えられているところなどを見ると、貨幣2の模倣の仕方が面白いですね。
先生:貨幣2を発行した王朝では、行政において、シリアとエジプトではギリシア語が、イランとイラクではペルシア語が、主に用いられていました。しかし、貨幣2の発行者は、行政で用いる言語をアラビア語に変更させるなど、統治制度の改革を行っています。7世紀末にはさらに、アラビア文字のみが刻まれた独自の貨幣に改めましたが、これも行政で用いる言語の変更と同様の趣旨があると思います。

貨幣1を発行した国、または貨幣2を発行した王朝について述べた文として最も適当なものを、次の選択肢のうちから一つ選べ。
問題文の画像
  • 貨幣1の発行国では、ゾロアスター教が国教とされた。
  • 貨幣2を発行した王朝は、パルティアを征服した。
  • 貨幣1の発行国では、ローマ法の集大成が行われた。
  • 貨幣2を発行した王朝は、バグダードに都を置いた。

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この過去問の解説 (1件)

01

最も適当な選択肢は、

「貨幣1の発行国では、ローマ法の集大成が行われた。」 です。


貨幣1を造ったのは東ローマ(ビザンツ)帝国です。

6世紀に皇帝ユスティニアヌス1世が編さんさせた『ローマ法大全』は、古代ローマ法を整理して後世に伝える大事業でした。

7世紀前半のソリドゥス(金貨)も、その強固な財政と官僚制度を背景に鋳造されています。

選択肢1. 貨幣1の発行国では、ゾロアスター教が国教とされた。

ゾロアスター教を国教にしたのはササン朝ペルシアであり、東ローマ帝国ではキリスト教が主流でした。

選択肢2. 貨幣2を発行した王朝は、パルティアを征服した。

貨幣2を造ったのはウマイヤ朝(661〜750年)で、パルティア(前247〜後224)の時代とは大きく隔たっています。

征服の事実はありません。

選択肢3. 貨幣1の発行国では、ローマ法の集大成が行われた。

ユスティニアヌス1世(在位527〜565年)が命じて『ローマ法大全』を完成させ、帝国法体系を整えました。

貨幣1と同じ国家の実績です。

選択肢4. 貨幣2を発行した王朝は、バグダードに都を置いた。

ウマイヤ朝の都はダマスクスです。

バグダードを建設して首都にしたのは後継のアッバース朝(750年以降)でした。

まとめ

ビザンツ帝国は質の高いソリドゥス金貨を鋳造し、同時に『ローマ法大全』を整えてローマ法伝統をまとめ上げました。

一方、ウマイヤ朝の初期金貨はソリドゥスを模倣しつつ、アラビア語銘文やイスラーム的意匠に改変を加え、のちに完全な独自貨幣へ移行します。

この比較から、貨幣のデザインは政治権力の宗教・文化政策と深く結び付いていることが分かります。

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