大学入学共通テスト(地理歴史) 過去問
令和5年度(2023年度)本試験
問23 (世界史B(第4問) 問3)
問題文
先生:陸上競技のマラソンという種目名が、マラトンの戦いに由来しているという話を聞いたことがある人もいるかもしれません。その話を伝えている次の資料1・2を読んで、何か気付いたことはありますか。
資料1
ヘラクレイデスは、テルシッポスがマラトンの戦いについて知らせに戻ったと記している。しかし、今の多くの人々は、戦場から走ってきたのはエウクレスだと言っている。エウクレスは到着してすぐ、「喜べ、私たちが勝利した」とだけ言って、息絶えた。
資料2
言われているところでは、長距離走者のフィリッピデスがマラトンから走ってきて、勝敗についての知らせを待っていた役人に、「喜べ、私たちが勝利した」と言った後、息絶えた。
松山:資料1と資料2では、使者の名前が違っています。なぜでしょうか。
先生:明確な理由は分かりませんが、資料が書かれた時代が手掛かりになります。資料1を書いたのは『対比列伝』を著した人物で、資料2は別の文人によるものです。二人とも、五賢帝の時代を中心に活躍しました。
松山:資料1と資料2は、いずれもマラトンの戦いからかなり後になって書かれたので、正確な情報が伝わっていなかったのかもしれませんね。
先生:その可能性はあるでしょう。ただし、資料1で紹介されているヘラクレイデスはアリストテレスの下で学んでいた人物だと言われています。
松山:ということは、( ア )ことになりますね。マラトンの戦いに時代が近い人物が信頼できるとしたら、使者の名前は( イ )というのが、この中では一番あり得そうだと思います。
先生:その考え方は、筋が通っていますね。
竹中:でも、もっと古い資料はないのでしょうか。
先生:同じ内容を伝える資料は資料1・2のほかに知られていません。マラトンの戦いを含む( ウ )を主題とした紀元前5世紀の歴史家の著作には、資料2にあるフィリッピデスという名前が、マラトンの戦いの後ではなく、その前にスパルタに派遣された使者として言及されています。
竹中:もしかしたら、勝利を伝えるために使者が走って戻ってきたという話は史実ではなく、後世に作られた可能性があるんじゃないでしょうか。
先生:鋭い指摘ですね。現存する資料から分かるのは、五賢帝の時代よりも前のある段階でその話が成立していたということです。
文章中の空欄アに入れる語句あ・いと、空欄イに入れる人物の名X~Zとの組合せとして正しいものを、後の選択肢のうちから一つ選べ。
(ア)に入れる語句
あ 資料1・2の著者は二人とも、ヘラクレイデスよりもマラトンの戦いに近い時代に生きていた
い ヘラクレイデスは、資料1・2の著者たちよりもマラトンの戦いに近い時代に生きていた
(イ)に入れる人物の名
X エウクレス
Y テルシッポス
Z フィリッピデス
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問題
大学入学共通テスト(地理歴史)試験 令和5年度(2023年度)本試験 問23(世界史B(第4問) 問3) (訂正依頼・報告はこちら)
先生:陸上競技のマラソンという種目名が、マラトンの戦いに由来しているという話を聞いたことがある人もいるかもしれません。その話を伝えている次の資料1・2を読んで、何か気付いたことはありますか。
資料1
ヘラクレイデスは、テルシッポスがマラトンの戦いについて知らせに戻ったと記している。しかし、今の多くの人々は、戦場から走ってきたのはエウクレスだと言っている。エウクレスは到着してすぐ、「喜べ、私たちが勝利した」とだけ言って、息絶えた。
資料2
言われているところでは、長距離走者のフィリッピデスがマラトンから走ってきて、勝敗についての知らせを待っていた役人に、「喜べ、私たちが勝利した」と言った後、息絶えた。
松山:資料1と資料2では、使者の名前が違っています。なぜでしょうか。
先生:明確な理由は分かりませんが、資料が書かれた時代が手掛かりになります。資料1を書いたのは『対比列伝』を著した人物で、資料2は別の文人によるものです。二人とも、五賢帝の時代を中心に活躍しました。
松山:資料1と資料2は、いずれもマラトンの戦いからかなり後になって書かれたので、正確な情報が伝わっていなかったのかもしれませんね。
先生:その可能性はあるでしょう。ただし、資料1で紹介されているヘラクレイデスはアリストテレスの下で学んでいた人物だと言われています。
松山:ということは、( ア )ことになりますね。マラトンの戦いに時代が近い人物が信頼できるとしたら、使者の名前は( イ )というのが、この中では一番あり得そうだと思います。
先生:その考え方は、筋が通っていますね。
竹中:でも、もっと古い資料はないのでしょうか。
先生:同じ内容を伝える資料は資料1・2のほかに知られていません。マラトンの戦いを含む( ウ )を主題とした紀元前5世紀の歴史家の著作には、資料2にあるフィリッピデスという名前が、マラトンの戦いの後ではなく、その前にスパルタに派遣された使者として言及されています。
竹中:もしかしたら、勝利を伝えるために使者が走って戻ってきたという話は史実ではなく、後世に作られた可能性があるんじゃないでしょうか。
先生:鋭い指摘ですね。現存する資料から分かるのは、五賢帝の時代よりも前のある段階でその話が成立していたということです。
文章中の空欄アに入れる語句あ・いと、空欄イに入れる人物の名X~Zとの組合せとして正しいものを、後の選択肢のうちから一つ選べ。
(ア)に入れる語句
あ 資料1・2の著者は二人とも、ヘラクレイデスよりもマラトンの戦いに近い時代に生きていた
い ヘラクレイデスは、資料1・2の著者たちよりもマラトンの戦いに近い時代に生きていた
(イ)に入れる人物の名
X エウクレス
Y テルシッポス
Z フィリッピデス
- あ ― X
- あ ― Y
- あ ― Z
- い ― X
- い ― Y
- い ― Z
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この過去問の解説 (1件)
01
「い―Y」 が最も適当です。
ヘラクレイデスはアリストテレスの弟子と伝わり、マラトンの戦い(前490年)からほぼ1世紀後の人物です。
一方、資料1・2の著者はローマの五賢帝期(2世紀頃)に活動したため、ヘラクレイデスのほうが戦いに近い時代を生きています。
したがって、空欄アには「資料1・2の著者たちよりもマラトンの戦いに近い時代に生きていた」を示す い が入ります。
また、ヘラクレイデスは使者の名をテルシッポスと書いたと資料1に記されているので、空欄イには Y(テルシッポス) が最も有力です。
「あ」は『資料1・2の著者がヘラクレイデスより戦いに近い』とするが、年代関係が逆です。
語句「あ」が誤っているため不適当です。
「あ」が不正確なので不適当です。
「い」は正しいが、X(エウクレス)はヘラクレイデスではなく「今の多くの人々」とされる人物で、条件に合いません。
「い」は年代関係を正しく示し、Y(テルシッポス)はヘラクレイデスが記した使者名と一致します。
Z(フィリッピデス)は後世の別資料にのみ登場し、ヘラクレイデスの言及ではないため適当ではありません。
・ヘラクレイデスはアリストテレス門下で、五賢帝期の著者より早い時代の人物
・ヘラクレイデスが挙げた使者名はテルシッポス
この2点を同時に満たすのが 「い―Y」 です。
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