大学入学共通テスト(地理歴史) 過去問
令和5年度(2023年度)本試験
問25 (世界史B(第4問) 問5)

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問題

大学入学共通テスト(地理歴史)試験 令和5年度(2023年度)本試験 問25(世界史B(第4問) 問5) (訂正依頼・報告はこちら)

あるクラスで、資料を用いた古代ギリシアについての授業が行われている。(引用文には、省略したり、改めたりしたところがある。)

先生:陸上競技のマラソンという種目名が、マラトンの戦いに由来しているという話を聞いたことがある人もいるかもしれません。その話を伝えている次の資料1・2を読んで、何か気付いたことはありますか。

資料1
ヘラクレイデスは、テルシッポスがマラトンの戦いについて知らせに戻ったと記している。しかし、今の多くの人々は、戦場から走ってきたのはエウクレスだと言っている。エウクレスは到着してすぐ、「喜べ、私たちが勝利した」とだけ言って、息絶えた。

資料2
言われているところでは、長距離走者のフィリッピデスがマラトンから走ってきて、勝敗についての知らせを待っていた役人に、「喜べ、私たちが勝利した」と言った後、息絶えた。

松山:資料1と資料2では、使者の名前が違っています。なぜでしょうか。
先生:明確な理由は分かりませんが、資料が書かれた時代が手掛かりになります。資料1を書いたのは『対比列伝』を著した人物で、資料2は別の文人によるものです。二人とも、五賢帝の時代を中心に活躍しました。
松山:資料1と資料2は、いずれもマラトンの戦いからかなり後になって書かれたので、正確な情報が伝わっていなかったのかもしれませんね。
先生:その可能性はあるでしょう。ただし、資料1で紹介されているヘラクレイデスはアリストテレスの下で学んでいた人物だと言われています。
松山:ということは、( ア )ことになりますね。マラトンの戦いに時代が近い人物が信頼できるとしたら、使者の名前は( イ )というのが、この中では一番あり得そうだと思います。
先生:その考え方は、筋が通っていますね。
竹中:でも、もっと古い資料はないのでしょうか。
先生:同じ内容を伝える資料は資料1・2のほかに知られていません。マラトンの戦いを含む( ウ )を主題とした紀元前5世紀の歴史家の著作には、資料2にあるフィリッピデスという名前が、マラトンの戦いの後ではなく、その前にスパルタに派遣された使者として言及されています。
竹中:もしかしたら、勝利を伝えるために使者が走って戻ってきたという話は史実ではなく、後世に作られた可能性があるんじゃないでしょうか。
先生:鋭い指摘ですね。現存する資料から分かるのは、五賢帝の時代よりも前のある段階でその話が成立していたということです。

前の文章を参考にしつつ、マラトンの戦いの勝利をアテネに伝えた使者について述べた文として最も適当なものを、次の選択肢のうちから一つ選べ。
  • アテネで僭主となったペイシストラトスは、使者の話を知っていた可能性がある。
  • 使者の話は、トゥキディデス(トゥキュディデス)の『歴史』に記されている。
  • プルタルコスは、使者の名前について異なる説を併記している。
  • 使者についての資料2の記述は、ヘロドトスの『歴史』を正確に反映している。

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この過去問の解説 (1件)

01

最も適当な選択肢は、

「プルタルコスは、使者の名前について異なる説を併記している。」 です。


資料1を書いたプルタルコスは、ヘラクレイデスが挙げたテルシッポスと、当時「多くの人々」が語っていたエウクレスの二つを紹介し、どちらか一方に決めていないことが分かります。

選択肢1. アテネで僭主となったペイシストラトスは、使者の話を知っていた可能性がある。

ペイシストラトスは前6世紀の人物で、マラトンの戦い(前490年)の半世紀以上前に死亡しています。

使者の話を知る立場にはありません。

選択肢2. 使者の話は、トゥキディデス(トゥキュディデス)の『歴史』に記されている。

トゥキディデスはペロポネソス戦争を扱っており、マラトンの戦いの使者伝説には触れていません。

選択肢3. プルタルコスは、使者の名前について異なる説を併記している。

資料1は「テルシッポス説」と「エウクレス説」を並べて記述しています。

両説を紹介したうえで結論を保留しているため、この記述に合致します。

選択肢4. 使者についての資料2の記述は、ヘロドトスの『歴史』を正確に反映している。

ヘロドトスが言及するフィディッピデス(フィリッピデス)は、戦前にスパルタへ派遣された伝令で、勝利の知らせを運んだとは書かれていません。

資料2は場面が異なります。

まとめ

使者伝説は後世に諸説が生まれました。

プルタルコスは複数の名前を並列で提示し、どちらとも断定していません

他の選択肢は年代や史料との整合性に欠けるため、最も妥当なのはこの選択肢です。

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