大学入学共通テスト(地理歴史) 過去問
令和5年度(2023年度)本試験
問39 (日本史B(第1問) 問5)

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問題

大学入学共通テスト(地理歴史)試験 令和5年度(2023年度)本試験 問39(日本史B(第1問) 問5) (訂正依頼・報告はこちら)

マリさんとケントさんは、高校の授業で「地図から考える日本の歴史」という課題研究に取り組むために、各自で地図を持ち寄り話し合うことになった。次の二人の会話や資料を読み、後の問いに答えよ。(資料は、一部省略したり、書き改めたりしたところもある。)

マリ:私は、鎌倉時代に作られた地図1を持ってきたよ。
ケント:これが日本地図?左に東日本が描かれているよね。
マリ:中国地方の一部と九州地方は残っていないんだけどね。山城国を起点に、畿内・七道を線で結んでいるんだ。
ケント:七道は古代の道路で、a 古代の行政区分でもあるんだよね?諸国の形は大ざっぱだね。
マリ:畿内・七道それぞれに諸国の位置関係が分かれば良かったんじゃない?これと同じくらいの時期に作られた地図で、地図2も持ってきたよ。九州、四国と本州の西側の部分だけが残ってるんだ。
ケント:日本列島の周りを取り囲んでいるのは何だろう?
マリ:龍だという説があるよ。その外側には、b この地図が作製された時点で実在していた国のほかに、すでに存在しない国や、想像上の国も描かれているんだって。
ケント:へえ、面白いね。「羅刹(らせつ)国」や「雁道(かりのみち)」が想像上の国なんだ。
マリ:c 古代や中世の境界に対する意識は、それぞれ異なった特徴がありそうだね。

ケント:次は私の番だね。地図3は、江戸幕府が諸藩などに命じて作らせた国絵図だよ。江戸時代を通じて、幕府はこのような国絵図を何度も作らせたんだ。
マリ:拡大してみると、国内の代表的な山や寺社も描かれているのが分かるね。小判型に描かれているのは村だね。
ケント:地図3は元禄期に作られたもので、幕府は国絵図を提出させて、( ア )を確認していたんだ。
マリ:へえ、そうなんだ。江戸時代の地図と言えば、西洋天文学に基づいて海岸測量で日本全図の作製に取り組んだのは、伊能忠敬だったよね?
ケント:彼は蝦夷地の測量をまず行ったんだけど、それは( イ )に関係していたんだ。幕府は彼の地図の正確さを認めて、それが日本全図の作製につながったんだよ。
マリ:そうか、正確な地図が必要とされたんだね。
ケント:うん。伊能忠敬の地図は、幕末に日本に来航した外国船が日本近海を測量して海図を作製した際にも利用されたんだよ。
マリ:陸地の地図ばかり考えていたけど、海の地図もあったよね。
ケント:海図は、軍事的な目的だけではなく、d 大型商船や客船が座礁しないようにするためにも必要だったんだね
マリ:地図からはいろいろなことが分かるんだね。これでうまく課題をまとめられそうだ。

下線部dに関連して、近代日本における測量や海図に関する事例について述べた次の文X・Yと、それに関連する事項a~dとの組合せとして正しいものを、後の選択肢のうちから一つ選べ。

X  朝鮮沿岸に派遣された日本の軍艦が、測量しつつ挑発行為を行ったことをきっかけとして、朝鮮との間に軍事衝突が起こった。
Y  戦争に伴う輸出増加によって海運業が活況となり、海図や水路図誌の需要が高まった。

a  江華島事件
b  甲申事変
c  日露戦争
d  第一次世界大戦
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  • X ― a  Y ― c
  • X ― a  Y ― d
  • X ― b  Y ― c
  • X ― b  Y ― d

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この過去問の解説 (1件)

01

正しい組合せは、

「X―a(江華島事件) Y―d(第一次世界大戦)」 です。


Xは1875年、測量名目で朝鮮沿岸を航行した日本軍艦「雲揚」が武力衝突を起こした江華島事件に該当します。
Yは1914~18年の第一次世界大戦中、欧米諸国の工業生産が戦時体制に転じたことで日本の輸出が急増し、海運業・造船業が拡大して海図需要が高まった状況を示します。

選択肢1. X ― a  Y ― c

Xとa(江華島事件)は合致しますが、日露戦争は主に軍需輸送であり輸出景気とは結び付きにくいのでYとcは不適切です。

選択肢2. X ― a  Y ― d

X=江華島事件(1875)で正確です。
Y=第一次世界大戦期の“輸出景気”で海図需要が増した事実とも一致します。

選択肢3. X ― b  Y ― c

甲申事変(1884)は日本の測量艦とは無関係で、Xに当てはまりません。
日露戦争は輸出増ではなく軍事輸送が中心で、Yにもそぐわないため不適切です。

選択肢4. X ― b  Y ― d

Xが誤っているため成り立ちません。

 

まとめ

江華島事件(1875)は、日本が最新式軍艦で朝鮮沿岸を測量・挑発し、砲火を交えて開国を迫った事件で、海図作成と軍事行動が直接結び付いた例です。

第一次世界大戦期(1914-18)、日本は「大戦景気」により綿製品・鉄鋼・船舶などの輸出が激増し、商船隊が拡大しました。

安全航行や新航路開拓のため、水路部が海図・水路図誌を大量に刊行し、測量技術も急速に進歩しました。
これらの事例は、地図・海図が軍事と経済の双方で重要インフラとなった近代日本の特徴をよく表しています。

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