大学入学共通テスト(地理歴史) 過去問
令和5年度(2023年度)本試験
問40 (日本史B(第1問) 問6)

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問題

大学入学共通テスト(地理歴史)試験 令和5年度(2023年度)本試験 問40(日本史B(第1問) 問6) (訂正依頼・報告はこちら)

マリさんとケントさんは、高校の授業で「地図から考える日本の歴史」という課題研究に取り組むために、各自で地図を持ち寄り話し合うことになった。次の二人の会話や資料を読み、後の問いに答えよ。(資料は、一部省略したり、書き改めたりしたところもある。)

マリ:私は、鎌倉時代に作られた地図1を持ってきたよ。
ケント:これが日本地図?左に東日本が描かれているよね。
マリ:中国地方の一部と九州地方は残っていないんだけどね。山城国を起点に、畿内・七道を線で結んでいるんだ。
ケント:七道は古代の道路で、a 古代の行政区分でもあるんだよね?諸国の形は大ざっぱだね。
マリ:畿内・七道それぞれに諸国の位置関係が分かれば良かったんじゃない?これと同じくらいの時期に作られた地図で、地図2も持ってきたよ。九州、四国と本州の西側の部分だけが残ってるんだ。
ケント:日本列島の周りを取り囲んでいるのは何だろう?
マリ:龍だという説があるよ。その外側には、b この地図が作製された時点で実在していた国のほかに、すでに存在しない国や、想像上の国も描かれているんだって。
ケント:へえ、面白いね。「羅刹(らせつ)国」や「雁道(かりのみち)」が想像上の国なんだ。
マリ:c 古代や中世の境界に対する意識は、それぞれ異なった特徴がありそうだね。

ケント:次は私の番だね。地図3は、江戸幕府が諸藩などに命じて作らせた国絵図だよ。江戸時代を通じて、幕府はこのような国絵図を何度も作らせたんだ。
マリ:拡大してみると、国内の代表的な山や寺社も描かれているのが分かるね。小判型に描かれているのは村だね。
ケント:地図3は元禄期に作られたもので、幕府は国絵図を提出させて、( ア )を確認していたんだ。
マリ:へえ、そうなんだ。江戸時代の地図と言えば、西洋天文学に基づいて海岸測量で日本全図の作製に取り組んだのは、伊能忠敬だったよね?
ケント:彼は蝦夷地の測量をまず行ったんだけど、それは( イ )に関係していたんだ。幕府は彼の地図の正確さを認めて、それが日本全図の作製につながったんだよ。
マリ:そうか、正確な地図が必要とされたんだね。
ケント:うん。伊能忠敬の地図は、幕末に日本に来航した外国船が日本近海を測量して海図を作製した際にも利用されたんだよ。
マリ:陸地の地図ばかり考えていたけど、海の地図もあったよね。
ケント:海図は、軍事的な目的だけではなく、d 大型商船や客船が座礁しないようにするためにも必要だったんだね
マリ:地図からはいろいろなことが分かるんだね。これでうまく課題をまとめられそうだ。

最後に、マリさんとケントさんは、話し合った内容を整理して、「地図から考える日本の歴史」について考えたことをまとめた。二人がまとめた次の文a~dについて、最も適当なものの組合せを、後の選択肢のうちから一つ選べ。

a  古代の律令制では、七道が行政区画の単位として用いられており、国と国との境は確定されなかったと考えられる。
b  中世では、想像もまじえて、日本列島とそれをとりまく海や地域を描いた地図も作製されたと考えられる。
c  近世、幕府が国絵図を提出させたのは、全国を支配していることを確認する目的があったと考えられる。
d  近代になると、陸の地図より海図が重視され、それ以前の日本の地図は顧みられなくなったと考えられる。
問題文の画像
  • a・c
  • a・d
  • b・c
  • b・d

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この過去問の解説 (1件)

01

最も適当なのは、「b・c」の組合せです。


中世の地図には想像上の地域を含めた世界観が描かれ、近世の国絵図は幕府が全国支配を把握・再確認する狙いで提出を命じました。

 

 

【各文の検討】

a:古代の律令制では、七道が行政区画の単位として用いられており、国と国との境は確定されなかったと考えられる。
律令国家は七道の下に国・郡を置き、国境を中央が定め、必要に応じて改編しました(例:石城国の新設)。

「境が確定されなかった」という記述は誤りです。

 

b:中世では、想像もまじえて、日本列島とそれをとりまく海や地域を描いた地図も作製されたと考えられる。
地図2には「羅刹国」「雁道」など実在しない国名が記され、実在と想像が混在する中世的世界観が示されています。

正しい内容です。

 

c:近世、幕府が国絵図を提出させたのは、全国を支配していることを確認する目的があったと考えられる。
元禄国絵図の作成では、領域・石高・要地を把握し、改めて統治の範囲を確認する意図がありました。

よって妥当です。

 

d:近代になると、陸の地図より海図が重視され、それ以前の日本の地図は顧みられなくなったと考えられる。
近代でも伊能図など従来の精密地図は測量や海図作成の基礎資料として活用されました。

「顧みられなくなった」は誤りです。

選択肢1. a・c

誤りです。

選択肢2. a・d

誤りです。

選択肢3. b・c

正しい組み合わせです。

選択肢4. b・d

誤りです。

まとめ

中世の地図は空想的世界観を盛り込み、近世の国絵図は幕府権力の可視化に役立ちました。

古代には国境が中央主導で設定され、近代でも旧図は引き続き利用されています。

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